メルセデス・ベンツ日本は2022年9月30日、ラグジュアリー電気自動車ブランド「メルセデスEQ」初のEセグメントのセダン「EQE」とFセグメントのフラッグシップ「EQS」を発表し、予約注文の受付を開始した。なおデリバリーは11月頃が予定されている。
メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+EQS 450+発表会に登壇したメルセデス・ベンツ日本株式会社 上野金太郎 代表取締役社長 兼 CEOEQE
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EQE(V295 )は、メルセデスEQモデルとして初となる3ボックス・タイプのラグジュアリー・セダンで、従来のEクラスに相当する。メルセデスEQの既存ラインアップは内燃エンジン用のプラットフォームをベースにしていたが、このEQE、より上級のEQSは共通のBEV専用プラットフォーム(MAE)を新たに設計・開発し、メルセデス・ベンツとしては初めて電気自動車ならではのパッケージの有用性を活かしたエクステリアデザインとし、空力性能の追求と先進的な美を追求している。
なおEQEはグローバル市場向けにドイツのブレーメン工場で、大市場の中国向けは北京工場で生産されている。
ボディサイズは、全長4970~4955mm、全幅1906mm、全高1495mm、ホイールベース3120mm。車両重量は2360~2390kg。
EQEの空力に優れたエクステリア・デザインや高効率な電気駆動パワートレインによる環境性能、大容量のトランクを備えるなど優れた実用性を兼ね備えている。また、EQSと比較してホイールベースがやや短いことと、電気自動車ならではの低重心により、EQEは操縦性も高められている。
エクステリア・デザインは、「ワン・ボウ」(弓)のラインのフォルムを持ち、フロントにエンジンやトランスミッションを縦置きする必要がないことから、従来のメルセデス・ベンツの典型的なシルエットとは異なる、Aピラーを前進させたキャビンフォワードとすることでビッグ・キャビンになっており、同時にスポーティーさを加えていることが特長だ。
EQSの3210mmという長いホイールベースに比べ、EQEは3120mmで90mm短く、上面から見てボディサイドがより絞り込まれてたフォルムになっている。
ゆったりとした面の構成、継ぎ目の少なさによるシームレス・デザインなど、近年のメルセデス・ベンツのデザイン言語「Sensual Purity(官能的純粋)」をベースにEQブランドらしいデザイン表現になっている。
フロントマスクは「ブラックパネル」ユニットとして統合されている。このパネル部には、超音波センサー、カメラ、レーダーなど運転支援システムのさまざまなセンサーが組み込まれているが、それらが表から見えることはなく、クリーンで独特の存在感を持つマスクとなっている。
ボンネットは左右フェンダーまで回り込んでおり、シームレスなデザインとしているだけでなく、高速巡航時にボンネットが浮く現象を抑え、空力的にも有効な機能性も備えている。左フェンダー側面のサービス口はウォッシャー液補充のためのもので、ボンネットは、室内用エアフィルター交換などのメンテナンス目的の場合にサービス工場でのみ開閉可能となっている。
ベルトラインに配置されたドアミラーは、空力と低騒音が最適化されたデザインとし、格納式のシームレス・ドアハンドルは全車に標準装備となっている。
クーぺ風のルーフラインとなっているが、リヤはEQSのようなリヤゲートではなく、独立したトランクリッドを備えた3ボックス・デザインである。
インテリア
インテリアは、電気自動車専用プラットフォームを採用した結果、大幅にデジタルな要素を盛り込んでいる。EQE 53 にオプション設定のMBUX ハイパースクリーンは、EQEの象徴的な装備のひとつで、3枚の高精細パネル(コックピットディスプレイ、有機ELメディアディスプレイ、有機ELフロントディスプレイ[助手席])とダッシュボード全体を1 枚のガラスで覆うワイドスクリーンで構成され、かつてないインスツルメントパネルの構成となり、ディスプレイまわりを、細いシルバーのフレーム、エアアウトレットを組み込んだルーバー状のトリムなどが囲むデザインとなっている。
センターコンソールの前部はダッシュボードにつながり、下側は宙に浮いたフローティング構造となっている。これも電気自動車専用プラットフォームの採用により、従来のようなセンタートンネルが存在しないことで実現している。
またインテリア全体は、周囲が暗くなると自動的に点灯するアンビエントライトが、ドアトリムなどを含めて宙に浮くような前衛的なデザインをさらに美しく演出する。
EQE 350+は、デザインはシンプルながら造形美にこだわったシートを採用。サイドサポートのラップアラウンド形状は、乗員の身体を支えるとともに、シートの中央部とのコントラストによる立体感を生み出している。
オプションのAMGラインはスポーツシートが標準となる。スリムな一体型のシート形状が特長で、シート表面は本革のカバーを上から掛けたように見えるデザインとなっている。そしてシートは輪郭に沿って照明付きパイピングが装備され、夜間走行の際には独特な雰囲気のある室内空間を演出。
インテリアトリムには、ブラックファインストラクチャールックセンタートリム、レーザーカットバックリットトリム(メルセデス・ベンツパターン)、AMGカーボンインテリアトリムなどがラインアップされている。
コックピットの機能と操作は基本的にSクラスと同様だが、電気自動車ならではの特徴もある。グラフィックはすべてブルーのカラーテーマでデザインし、2つの円形メーターを映し出すクラシックなスタイルを採用。ディスプレイの表示は複数のテーマから自分好みのカスタマイズすることが可能になっている。
パワートレイン
パワートレインは、EQE 350+はリヤアクスルに電動パワートレーン(eATS)を搭載し、最高出力292psを発生。航続可能距離は624km。ヴァレオ・シーメンス製の電気モーターは永久磁石同期式の水冷モーター(PSM)が採用されている。
メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+はフロントとリヤにeATSを備えており、合計最高出力は625psを発生(RACE STARTモード使用時は最大687ps)。航続可能距離は526km。この4MATICはトルクシフト機能によってフロントとリヤの電気モーター間で走行状態に合わせて駆動トルクの連続可変配分が行なわれる。
動力性能では、0-100km/h加速はEQE 350+は6.4秒、AMG EQE 53 4MATIC+は3.5秒と強烈だ。最高速度はEQE 350+が210km/h、AMG EQE 53 4MATIC+の最高速度は220km/hとなっている。
回生ブレーキによる運動エネルギー回収をさまざまな方法で行なうようになっている。ステアリングホイールのシフトパドルを使って、回生ブレーキによる減速度を3 段階(D+、D、D−)で設定できるほか、コースティング機能を選択することも可能。このほか、前走車との車間距離、登坂・降坂などの道路状況などを加味し、最適な強度の回生ブレーキを行うD Autoモードも選択できる。また、ECOアシストでは、状況に応じて回生ブレーキの最適化を実行し、最も効率的な運転となるように減速の強弱を自動調整し、例えば先行車を検知すると、先行車との車間距離を調整しつつ先行車が停車に至るまで可能な限り追従することができる。
EQE 350+のリチウムイオン・バッテリーは容量90.6kWh で、これにより航続距離624kmを達成。メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+のバッテリー容量は90.6kWhで、航続距離526kmとなっている。
充電は、6.0kWまでの200V交流普通充電と、最高150kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応している。またバッテリー保証は、10年もしくは25万km の性能(残容量70%)となっている。
日本仕様はV2H対応
なお、日本仕様の特別な機能として、EQEから車外へ電力を供給できる双方向充電が可能だ。EQEは家庭の太陽光発電システムで発電した電気の貯蔵装置となるほか、停電した場合などに、電気を家庭に送る予備電源としても利用できるV2Hを実現。なお、給電はMBUX 設定画面よりバッテリー残容量10%から50%まで10%単位で設定可能だ。
EQEのサスペンションはフロントに4リンク式、リヤにマルチリンク式を採用。また、連続可変ダンピングシステムADS+とエアサスペンションを組み合わせたAIRMATICを標準装備している。
AIRMATIC によるセルフレベリング機構は、乗員や荷物の重さに関係なく地上高を一定に保ち、必要に応じて変化させることもできる。例えば、コンフォートモードでは120km/h 以上の高速走行時には10mm、また160km/hを超えるとさらに10mm車高を下げることで空気抵抗を低減し、操縦安定性を向上。車速が落ちて80km/hを下回ると、もとの車高に戻り、40km/h以下ではボタン操作により車高を25mm上げることがでる。ただし、50km/h 以上になると、自動で下がり通常の車高に戻るようになっている。
EQEは小回り性能をさらに良くするためリヤ・アクスルステアリング(EQE 350+は最大10度、EQE 53は最大3.6度)を採用。これはステアリング操作だけではなく、ブレーキやサスペンションなどの車両ダイナミクスコントロールに統合制御されている。
価格
新たなフラッグシップ「EQS」
EQS(V297 )の革新的なデザインは、メルセデスEQ初のプレミアム・ラグジュアリー電気自動車としての新しいプラットフォームをもとに生まれ、内燃エンジン搭載車とは大きく異なるスタイリングであることが一目でわかる。ゆったりとした面の構成、継ぎ目の少なさ、そしてシームレスな面構成のデザインが訴求点だ。
ボディサイズは、全長5225mm、全幅1925mm、全高1520mm、ホイールベース3210mm。車両重量は2530~2560kgと、フルサイズのラグジュアリーカーにふさわしいビッグサイズとなっている。
グリーンハウスを跨いで連続する「ワン・ボウ」(弓)のルーフラインとサッシュレスドアにより、クーペのようなシルエットを形成しており、新たなフラッグシップ・セダンのデザインを生み出している。キャビンフォワード・デザインを採用し、通常よりも前方に位置するAピラーと前後のショートオーバーハングにより、見るからに大きなキャビンスペースを確保することができ、まさに電気自動車プラットフォームを基盤とした機能性を強調したデザインとなっている。
フロントフェイスはEQEと同様に「ブラックパネル」ユニットを採用。一方で、リヤはEQEとは違ってテールゲートを備えており、隙間を精密にデザインすることで ボディとの段差を最小とし周囲と一体感のあるデザインとなっている。
なお、エアロダイナミクスは、細部まで突き詰めた作業により空気の流れを最適化することにでCd値0.20という量産自動車での驚異的な最高値を達成することに成功している。
電気自動車はパワートレインのノイズが従来のクルマより小さいことから、風切り音が乗員の耳につきやすくなるため、空気音響特性が重要になる。低周波ノイズを防ぐために、ボディの構造部の空洞部分の多くに防音発泡材が充填され、高周波の風切り音に対しては、ドアやウインドウのシールに特殊な防音対策を施している。6枚のサイドウインドウの間に施したシール、ボディ面に格納されるドアハンドルやウインドウ支持部、取り付け位置が高いドアミラーについても、ノイズの最適化を図っている。
Aピラーには、フロントウインドウとの境目に特殊な形状のゴム製トリムを取り付けることで大幅なノイズの低減を実現。この開発においては、先進的な気流シミュレーションに加え、風洞内で特殊なマイクロフォン配列を使った外部ノイズ測定を支援ツールとして活用している。
インテリアもEQEと類似しているが、3枚の高精細ディスプレイを統合したMBUXハイパースクリーン(EQS 450+にオプション装備、EQS 53に標準装備)を設定している。またシートもEQEと同様になっている。
ナビゲーションはMBUX ARナビゲーションを装備し、車両の前面に広がる現実の景色がナビゲーション画面の一部に映し出され、その進むべき道路に矢印が表示される。さらに、EQS 450+にオプション設定、EQS 53に標準装備されているARヘッドアップディスプレイでは、進むべき道路がフロントウインドウの約10m先の景色に重ねて矢印で表示され、車両の進行方向が変わると、それに従って矢印も動き、常にどの方向に進むべきかを分かりやすく表示することができる。これにより、目線を逸らさず、より直感的にどの道路に進むべきかを判断することができるのだ。
EQSは乗員の好みに応じて音を楽しむこともできる。メルセデスの音響開発部門では、総合的な音響設計を行なうことで、内燃機関モデルから電気自動車へのパラダイムシフトを「耳に聞こえる」ものとして表現している。
具体的には、複数のドライビングサウンドの中から好みのサウンドメニューを選択でき、これがドライビング・スタイルや選択中のドライブモードに応じて変化するようになっている。
ドライビングサウンドはインタラクティブ(相互作用的)なもので、アクセルペダルの踏み込み量や車速、回生ブレーキ量など十数種類ものパラメーターに反応して変化。ドライビングサウンドは選択しているドライブモードによっても変化するようになっており、例えばスポーツモードでは、よりダイナミックなサウンドとなるほか、さまざまな効果音が今後さらに追加される予定だ。
これらのサウンドは、高度な音響設計アルゴリズムによりブレーメスター3Dサラウンドサウンドシステムのアンプ内部でリアルタイム計算により生み出され、スピーカーで再生される。
また、EQSはきわめてインテリジェントなクルマとして、多くの感知能力を備え、最大350個のさまざまな種類のセンサーがクルマの随所に配置され、人間の感覚器官のような役割を果たし、距離や速度、加速度、照明の状態、降水量、気温、シート着座の有無、ドライバーの瞬きや乗員の発話などを検知している。
この大量の情報をアルゴリズム制御のコントロールユニットで処理することで、瞬時に判断を行ない、しかも高度な学習能力を備えているため、新たな経験をするほど能力を高めていくことができる。そのためMBUXは、ユーザーに先回りして適切な機能を適切なタイミングで表示し、周囲の状況の変化やユーザーの行動に応じて絶えず最適化される。走行に合わせて変化するコンテンツをユーザーのために取り出し、それに関連するサービスとともにMBUX情報アーキテクチャーに表示する最先進のアシスタントシステムとなっているのだ。
国内最長の航続可能距離
パワートレインは、EQS 450+はリヤアクスルに電動パワートレイン(eATS)を搭載し、最高出力333psを発生。航続可能距離は日本で販売されている電気自動車の中で最長となる700kmだ。電気モーターには永久磁石同期モーター(PSM)を採用。
メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+はフロントとリヤにeATSを備えており、合計最高出力は658psを発生する(RACE START使用時は最大761ps)。 航続可能距離は601kmだ。トルクシフト機能によってフロントとリアの電気モーター間で駆動トルクの連続可変配分が行なわれる。
動力性能は、0-100km/h加速は、EQS 450+が6.2秒、AMG EQS 53 4MATIC+が3.8秒、最高速度はEQS 450+が210km/h、AMG EQS 53 4MATIC+が220km/hとなっている。
回生ブレーキは、ステアリングホイールのシフトパドルを使って、減速度を3段階(D+、D、D−)で設定でき、このほか、D Autoモードでは、最大5m/s2の減速度が得られる。このうち回生ブレーキによるものが最大3m/s2で、残りの2m/s2は摩擦ブレーキが加わっている。また、ECOアシストでは、状況に応じて回生ブレーキの最適化を実行し、最も効率的な運転スタイルとなるように減速の強弱を自動調整。例えば先行車を 検知すると、先行車との車間距離を調整しつつ先行車が停車に至るまで可能な限り追従して行く。
EQS 450+のリチウムイオン・バッテリーの容量は107.8kWhで、これにより航続距離700kmを達成。メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+のバッテリ容量107.8kWhで、航続距離601kmとなっている。充電はEQEと同様で、6.0kWまでの200V交流普通充電と、150kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応している。
またEQEと同様に、EQSも日本仕様の特別な機能として、家庭電源と双方向接続できるV2H機能を備えている。
シャシーの仕様はEQEと同様で、ADS+とエアサスペンションを組み合わせたAIRMATIC、リヤアクスル・ステアリングを標準装備している。なおリヤ操舵は、EQS 450+は最大4.5度、EQS 53は最大9度操舵される。
ドライブモードは、パワートレインやESP、サスペンション、ステアリングの特性を個々のドライバーが好みに合わせて変更できる。EQS 450+のドライブモードの標準設定はComfortのほか、Sports、Eco、Individual、EQS 53には、Comfort,、Sports、Sports+、Individual、Slipperyが用意されている。
このEQSは、ドイツのジンデルフィンゲン工場、タイ工場、インド工場で生産されている。また近日中にクロスオーバーSUVのEQS SUVも追加される予定になっている。
なお、今回発表されたEQE、EQSのバリエーションとしてそれぞれにクロスオーバーSUVが準備されており、数ヶ月以内にラインアップに加わることになるが、モデルとしてはこのSUVの方が主流になると考えられる。
また、ドイツ本国で2021年5月からSクラスと、このEQSに現状の高度運転支援システムを拡張させたレベル3の自動運転システムがオプションとして設定されている。レベル3の自動運転システムは日本が世界に先駆けて保安規準など法規が制定されているが、2番目となるドイツでもいよいよレベル3の自動運転システムの搭載が可能になっている。作動条件は、国際基準に従い、高速道路で60km/h以下、つまり渋滞走行時にドライバーは、ハンズオフ、ペダル操作なし、ステアリング操作なし、交通監視義務解除となる。
このメルセデス・ベンツのレベル3自動運転システム「ドライブ・パイロット」は、LiDAR、ミリ波レーダー、ステレオカメラ、単眼カメラ、超音波センサー、水分センサー、音響センサーなど30個以上のセンサー、バックアップ電源など冗長システムを搭載している。
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