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運命を別けたピットタイミング。3号車CRAFTSPORTS千代勝正に飛んだ『ステイ!』『ステイ!』『ステイ!』

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運命を別けたピットタイミング。3号車CRAFTSPORTS千代勝正に飛んだ『ステイ!』『ステイ!』『ステイ!』

 スーパーGT第6戦SUGO、予選11番手からウエットとなった決勝で見事な逆転優勝を果たした3号車CRAFTSPORTS MOTUL Z。2位には同じニスモの23号車MOTUL AUTECH Zでニスモのワン・ツーとなったが、優勝を争ったニスモの2台の勝負を分けたのが、2回目のピットストップタイミングだった。

 3号車の最初のピットストップは、雨が降り始めた16周目。ドライタイヤから、ダンプ用(雨が降ったり止んだりの少量の雨量用)タイヤとフルウエット用の2種類を持ち込んでいたなかで、ダンプタイヤを装着し10番手。一方の23号車はこの時はステイアウトして3番手まで順位を上げ、2番手に順位を上げた20周目にピットイン。3号車と同じくダンプ用ウエットに交換した。

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 雨の降り始めにダンプ用タイヤを装着した3号車は、タイヤの摩耗も厳しくなる。序々に雨が強くなっていくときにはタイヤのグリップが厳しくなってくる。

 ステアリングを握っていた千代勝正は、「僕はピットに入って違うタイヤに換えたくて『入りたい』『入りたい』って言っていたけど、(島田二朗監督から)『これから雨が止むかもしれないから、とにかく我慢』って、長い周回我慢して走っていました」と、その状況を振り返る。

 同じダンプタイヤだが、タイヤがフレッシュな分、雨量が多くなると23号車のペースが勝ってきた。

「ちょっと雨が増えたときは一番厳しくて、23号車に離されたのは雨が増えたときに23号車にタイヤが合っていて、僕たちは滑ってしまって離されていました」と千代。

 ミシュランのダンプ用タイヤは、他メーカーの追随を許さない速さを見せ、23号車と3号車は徐々に順位を上げ、28周目には23号車がトップ、2番手に3号車とワン・ツー体制を築いた。

 そして迎えた、運命の45周目。

 SPコーナーでGT300マシンがスピンしてストップ。3号車CRAFTSPORTSの島田監督はピットインを決断。ピットインの無線が、バックストレートを走っていた千代に伝わった。

 だが、同じ周の最終コーナーを回ったところで、急に無線が入った。『ステイ!』『ステイ!』『ステイ!』。サインガードの島田がピットタイミングを急きょ変えたのだ。

「ウチもSCだったら入った方が得なので、入れという指示は一度出したのですけど、もともとは引っ張りたいというのは決めていました。だけども、SCが出たら入らないと勝負権がなくなってしまうので、『入れ』にしたのですけど、その直ぐ後に『クリアになった』という無線が入ったので、そこで慌てて変えました」と島田。

 一方の千代も「イエローが出たタイミングでFCYやSCに絡めたピットインができるかなと思って、1回ピットインで呼ばれたのですけど、最終コーナーを回ったギリギリのところで『ステイ!』『ステイ!』と連絡が来て、本当にギリギリの判断でした。紙一重でしたね」と、その瞬間を振り返る。

 結果的に、トップの23号車はピットインして再びダンプタイヤに交換、3号車はステイアウト。その後、雨が上がりはじめたことで23号車は4度目、3号車は3度目のピットインでドライタイヤに換えたが、3号車が1回分のピットストップ時間を節約できたこともあり、悠々と今季2度目のトップチェッカーを受けることになった。

「チームのストラテジーのお陰ですね。島田監督の状況を読む判断が、今回の勝利を決めたと思います」と千代。

 島田監督も「まさに『赤上げないで、白下げない』みたいな状態で(苦笑)、『ステイ!』『ステイ!』『ステイ!』と、その秒単位の判断で、間に合ってよかった」と、肩をなで下ろして笑う。

 そんなとっさの判断も、監督とエンジニア、ドライバーと3号車のコミュニケーションが普段からスムーズに行われているからこその判断だったのだろう。

「(急なステイアウトの指示に)焦りましたけど、もうこればっかりは僕たちドライバーはモニターを見ているわけではないので、指示どおり動くしかない。ただ、路面コンディションとか、今どういう状況かというのはレース中、常に無線で交信して、すごく細かく連絡していました」と千代。

 もちろん、雨やピットタイミングで走行していた場所のタイミングなど、幸運に恵まれたことは確かだが、その運をたぐり寄せたのは間違いなく、3号車のチーム、そしてドライバーの総合力があってこそ。今回の結果でランキングトップに立った3号車CRAFTSPORTS MOTUL Z。今日の一瞬の判断が、今季の3号車の命運を左右することになるかもしれない。


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