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最高32馬力!日本最古の自動車年鑑で昭和初期の東京を走ったクルマを調べてみた

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最高32馬力!日本最古の自動車年鑑で昭和初期の東京を走ったクルマを調べてみた

運営元:旧車王
著者 :加藤 久美子

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■1.戦前から出ている創刊91年!!!「自動車年鑑」って何?▲最古の自動車年鑑。1931年の創刊で戦時中を除き90年以上発行され続けてきた

自動車年鑑という一般向けの自動車関連定期刊行物としては、日本最古(1931年創刊)の書物があるのをご存じだろうか?

創刊から90年以上という、とてつもなく長い歴史を持っている。

▲2022年11月30日に刊行された自動車年鑑2022~2023(日刊自動車新聞社,日本自動車会議所共編)

筆者は日刊自動車新聞社出版局に在籍していた90年代前半の数年間、編集に携わっていた時期があった。

また、2022年11月には最新号となる自動車年鑑2022~2023が刊行されている。

ニューモデル、自動車産業日誌、日本の自動車産業、諸外国の自動車産業をはじめ、各種の統計やデータなど自動車業界のすべてが844ページの中に詰まっているといっていいだろう。

そこで気になったのが、果たして創刊号はどんな内容だったのか?今も残っているのか?ということだ。

調べてみたところ、日本自動車図書館(日本自動車工業会が運営)に、なんと創刊号からすべてそろっているという。

一般利用者向けには閉館しているなか、特別に開けてもらい、創刊号ほか、昭和時代の自動車年鑑を何冊か見せてもらうことができた。

▲歴史を刻む自動車年鑑(日本自動車工業会・自動車図書館収蔵)

創刊号の表紙広告は「ダンロップタイヤ」である。

ダンロップタイヤは1888年、イギリスで創業した企業で1905年から自動車用タイヤを生産している。

▲自動車年鑑創刊号(1931年12月23日創刊)

そして、1932年自動車年鑑が創刊した翌年に国産初のタイヤメーカー「ブリヂストン」が誕生している。

当時の社名は「ブリッヂストン」。

創業者石橋氏の「石」「橋」を英語にした社名であることは有名だが、創業時は英語の発音に近い「ブリッヂ」だった。

▲「純国産」「超舶来」の文字が誇らしい。当時は「タイヤ」ではなく「タイヤ―」と表記していた。

そして1932年は「ダットサン」が誕生した年でもある。

前年に戸畑鋳物の傘下となった「ダット自動車製造」が排気量495ccの小型乗用車生産1号車を完成。

「ダットソン」と名付けられたが、その後「ダットサン」と車名を変えている。

理由は「ソン」は「損」のイメージなので、「サン」(sun英語で太陽)に変更した。

ちなみに、DATSUNのDATとは、創業メンバーである田、青山、竹内氏の頭文字を合わせたものだ。

翌1933年から戸畑鋳物(株)自動車部を設立し、本格的な自動車生産に向けて動き出している。

日産自動車(株)に社名変更したのは1934年である。

日本産業の100%出資となり、社名も日産自動車株式会社と変更された。

▲当時、まだごく少数だった国産車。ダットソン号以降、本格的な国産車生産がはじまる

▲当時、ディーラーを整備して販売をしていたのは米国車が中心だった

■2.当時、『東京府』には2万台強の自動車が保有されていた▲昭和6年の東京には約2万台のクルマが保有されていた。意外と多い?

90年前の日本にはどんなクルマが、どれくらい保有されていたのだろうか?

自動車年鑑には日本国内東京府内に存在する自動車の台数が馬力別ブランド別に紹介されている。

馬力の低さにもびっくり。

最低10馬力から最高でも32馬力だ。

資料によると乗用車+貨物車で21,948台のクルマが東京で保有されている。

大蔵省による調査で昭和6年8月末現在の数字だ。

馬力は警視庁課税馬力(当時、「警視庁馬力」という測定方法があった)に基づいている。

【乗用車】
・10馬力:フィアット 203台
・11馬力:モリス 139台
・12馬力:フィアット、モリス 126台
・14馬力:アームストロング、アサノ 96台
・15馬力:ホイペット多数を占む 893台
・17馬力:エセックス 291台
・18馬力:スター、アースキン 892台
・19馬力:ムーン、オークランド、オールヅモビル 214台
・20馬力:ウイリスナイト 240台
・21馬力:殆ど舊(旧)シボレー 1602台
・22馬力:T型フォード 294台
・23馬力:ビウイク、クライスラー、グラハムベージ 783台
・24馬力:殆ど新フォード 3702台
・25馬力:クライスラー、ダッジブラザース、ナッシュ 559台
・26馬力:殆ど新シボレー 3126台
・27馬力:ポンテアク、ダッジブラザース、スチュードベーカー 432台
・28馬力:ムーン、ナッシュ、ハップモビル
・29馬力:ビウイク、クライスラー、ハドスン、ナッシュ
・31馬力:クライスラー 101台
・32馬力:パッカード 110台
・調査もれ 363台
〇合計:14,717台

【貨物車】
・21馬力:全部舊(旧)シボレー 721台
・22馬力:全部T型フォード 2272台
・24馬力:全部新フォード 2299台
・25馬力:ジーエムシー、フェデラル、レパブリック 311台
・26馬力:全部新シボレー 646台
・27馬力:ダッジブラザース、フェデラル、ガーフォード 374台
・28馬力:マツク 120台
・29馬力:パッカード 71台
・調査もれ 417台
〇合計:7,231台

こうしてみると、フォードやシボレーの台数がとても多いと感じるが、これらは当時、日本国内で製造(KDノックダウン生産)されていたからである。

1925年に日本フォード、1927年に日本GMがそれぞれ設立されたことにはじまる。

日本で製造といっても当時の日本に自動車を製造できる技術はなく、ボディもエンジンも各種部品もすべてアメリカから輸入したものを日本国内で組み立てていた。

GMは大阪鶴町の工場にて組み立て生産をスタートさせており、月産2,000~2,500台で、アジアの生産拠点としてもアジア諸国へも多数輸出されていた。

一方、日本フォードは横浜市新子安の工場にて1日の稼働時間8時間で約80台のT型フォードをはじめとする乗用車や貨物車を組み立てていた。

いずれも太平洋戦争の始まりとともに操業を終了している。

フォードを生産していた新子安の工場は現在のマツダR&Dになっている。

フォードやGM以外、ダッジ、クライスラーなどの米国車に加え、シトロエンも組み立て生産されていた。

90年前の自動車年鑑1932年版をはじめ、これまで世に出た自動車のカタログや自動車雑誌、各種の自動車に関する資料は「自動車図書館」で見ることができる。
※現在はコロナ感染拡大防止の観点から休館中だが資料検索などは可能だ。

●自動車図書館(現在は休館中)
https://www.jama.or.jp/library/car_library/index.html

旧車ファンにとっても聖地のような場所だ。

再開されたらぜひ訪れてみて欲しい。

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  • この記事にある、日刊自動車新聞社による自動車年鑑は、国立国会図書館デジタルコレクションでも、基本的に登録利用者への送信サービスにより、抜けてる年はあるが、昭和22年版まで閲覧可能になっている。その内の昭和14年から18年版までについては、ログイン無しでウェブ上で閲覧可能。それより後のものは、館内閲覧限定になっている。
    その他に、他の出版元による単発の自動車年鑑と銘打つ書物もあって、同様に閲覧できる。
  • 理由は「ソン」は「損」のイメージなので、「サン」(sun英語で太陽)に変更した

    「そんなの全然関係ない!将来、オオゾンにも通じるようなメーカーの掃除機がバカ売れするよ!」・・・と教えてあげたい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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