雪がバンバン降るというワケでもない地域、特に東京を中心とした都心のユーザーはスタッドレスタイヤを選択すべきか、オールシーズンタイヤを選択するべきなのか、大いに迷うところ。そこで、プロドライバー視点からホントにオールシーズンタイヤで都心のユーザーはいいのかを検証してもらった。
文/ハル中田、写真/AdobeStock(トビラ写真:Paylessimages@AdobeStoc)
タイヤの選択は悩みどころ……首都圏ユーザーの冬は「オールシーズンタイヤ」で本当に充分なのか?
■果たして首都圏ユーザーはどうすべきか?
都心のユーザーはたまに降雪があるとクルマに乗るべきなのかどうかも悩みどころ。その足元にはどのタイヤを選ぶべきなのだろうか?(健太 上田@AdobeStoc)
ふむふむ、そうですか。「都心ユーザーはオールシーズンで充分」との説が広がってきていると。いやぁ時代は変わりましたね、ちょっと前までは「オールシーズンなんて中途半端で使い物にならん」という声が大きかった気がしますが、タイヤメーカー各社のたゆまぬ技術開発と積極展開に伴って市民権を得てきたのでしょうか。
私は仕事柄、国内海外さまざまな主要タイヤメーカーの試乗の機会がありますし、自身でタイヤテストをすることもあります。冬の北海道や全国各地の雪道でさまざまなスタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤを乗ってきた経験から言うと、
「首都圏のみでならまったく問題なし。しかし、厳しい雪国や山間部の雪道を走る可能性があるなら注意が必要。スノーフレークマーク付きを絶対に選ぶこと!!」
…です。では、その詳細を見ていきましょう。
■オールシーズンタイヤ市場の今
最近は3PMSFマークをつけたオールシーズンタイヤが欧州などでも広まっている。冬道性能を大幅に引き上げたタイヤだ(promolink@AdobeStoc)
オールシーズンタイヤというと、もともとはアメリカで「めんどくさいから1年中タイヤを交換する必要がないように」という理由で広く使われてきました。しかし、これの実際はほぼ夏タイヤで、「雪が降ったら除雪されている大通りに出るまでにちょっと走れればいい」という代物で氷はまったくダメ。
雪道を積極的に走れるような性能ではまったくありません。YouTubeなどで寒波のアメリカでたくさんのクルマがツルンツルン滑って事故を起こす動画は五万と出てきます。
それに対して近年ヨーロッパで急激に広がってきたのが、冬道でも普通に走れるように冬性能を大きく引き上げ、認証テストを踏まえて3PMSFマーク(スリーピークマウンテン・スノーフレークマーク、以下スノーフレークマーク)が付けられたもの。冬タイヤ装着を義務付けられている地域でもOKなタイヤです(以下、特に断りがないかぎりオールシーズンタイヤ=スノーフレークマーク付きオールシーズンタイヤを指す)
このスノーフレークマークが付いたオールシーズンタイヤは雪道でもかなり走れます。溶けかけの高温アイスはやや苦手ですが、冷え込んだ氷や雪なら普通に走れるし、ザクザク雪やバシャバシャシャーベットでは最近のスタッドレスよりもいいケースもあります。
これはスタッドレスを選ぶ際にも知って損はない知識ですが、最近のスタッドレスは基本的に氷に特化してきています。確かに毎年着実に進化していますが、それは主として氷にフォーカスを当てたもの。溝面積を減らして接地面積を増やし、アイスや圧雪アイスでのグリップを上げています。
溝面積を減らした背反として、新深雪やシャーベット、さらには雨のウェットではタイヤが浮いてしまい、充分なグリップが得られないケースが出てきます。トレッドゴム自体も進化してはいますが、「氷のブレーキで○○%向上!」と高らかに謳う裏にはそうした不都合な真実があるのも知っておいて損はありません。
■オールシーズンタイヤが活きるシーン
都心ではここまで積もることはめったにないが、それだけに夏タイヤで走って結局スタックしてしまうユーザーを見かけるのも事実だ(Paylessimages@AdobeStoc)
で、都心ではオールシーズンタイヤで充分なのか?
まずは下の表を見てください。私がさまざまな車種や状況、タイヤで試乗テストしてきたなかでの性能イメージです。
筆者がこれまでのタイヤ試乗テストで知見を重ねてきたなかでの各タイヤの性能表(表:ハル中田作成)
各々のカテゴリーでも銘柄により性能に幅がありますが、オールシーズンタイヤはより多くの状況に対応できることがわかります。どこにもバツがない。
確かに、雪国ユーザーや雪氷路を日常的に走る機会があるならば迷うことなくスタッドレスタイヤを買うべきです。毎週末に雪国へスキーに行くような人もスタッドレスでいいでしょう。
しかし、都心在住で雪道へ積極的に行かないユーザーはどうでしょう?
「それでもいざという時に安心のスタッドレスにするべき」という声も聞かれますが、それは夏性能、特にウェット性能をリスクにかけていることを忘れてはなりません。降るかすらわからない雪に備えて、より多く遭遇する雨での安全性を犠牲にするのが正解でしょうか?
私はやはり、首都圏の一般ユーザーならばオールシーズンタイヤが適していると強く感じます。私なら夏はサマータイヤ、冬はオールシーズンタイヤにします。もちろんオールシーズンのみで1年中でももちろんOK!
■では実際にオールシーズンタイヤで雪道を走ると?
こちらはスタッドレスタイヤ。オールシーズンタイヤに比べるとウェット性能に差があると筆者は指摘する(naka@AdobeStoc)
これがもう、普通に走れます。例として軽い寒波が来ている時の首都圏近郊のアクセスのいいスキー場へ行くようなシーンで考えてみましょう。
まずは高速道路。夏性能が高いので乗り心地は快適で、首都高のカーブが続く区間も腰砕けでフワフワになりがちなスタッドレスとは違い、スイスイ快適に走っていけます。
山に近づき雨になったとしても、ウェット性能が高いのでガンガン走れます。最近のスタッドレスにありがちな水でちょっと浮いてしまうようなこともなく、安心安全に走れます。
山の麓から上り始めでシャーベットになってきたら、オールシーズンタイヤは排水性、排シャーベット性も高いので浮いてしまうことも少なく普通に走れます。
スキー場に近づき路面が雪になってきても、最新のスタッドレスに比べるとちょっと弱いですが普通に走る分には問題ありません。上り坂や下り坂はいつもより少し慎重に運転すればOK。
ゲレンデに着いて一日滑った帰り道。夕方になると路面に溶け残った雪や水が凍ってくることがあります。しかし、今のオールシーズンタイヤは氷性能もかなり上げてきているので、慎重に運転すればそのまま下れます。
ただし、「夏タイヤがベース」という旨を明記しているオールシーズンタイヤの場合はやはり氷は苦手です。そうしたタイヤはあくまで冬性能は緊急避難程度に考えておいたほうがいいです。
総じた印象として、国産メーカーは冬寄り、欧米メーカーは中道から夏寄りの印象です。個別銘柄はここでは明記できないのでゴメンナサイ。より詳しい見分け方を知りたい方は「果たして夏と冬のどっち寄りなのか? オールシーズンタイヤの今を現役プロドライバーが指南する!!」で検索!
このように、首都圏から日帰りで行けるような範囲のスキー場に行くならばオールシーズンタイヤでまったく問題ありません。特に近年は除雪技術も進み、ゲレンデまでの路面に雪がなくてガックリすることすらも有ります。
さらにオールシーズンタイヤはシャーベットにも強いですから、雪国でも例えば日本海側の北陸地方で標高が高くないところ、雪は多いけどすぐに溶けてシャーベットになってしまうような地域でもオールシーズンタイヤはいい選択になります。
■首都圏から遠方で山岳リゾートへ行く場合はスタッドレスタイヤが望ましい
除雪車が出動するような豪雪地帯や首都圏から泊りがけで行くような遠方ではやはりスタッドレスタイヤを選択することが望ましいようだ(kelly marken@AdobeStoc)
しかし、その一方、「首都圏から泊まりで行くような遠方の、根雪や根圧雪アイスが必ずあるような山岳リゾート地帯」へ行くにはスタッドレスを選んで欲しいですね。
例えば、長野県だったら菅平や志賀高原。ゲレンデ周辺も宿周辺も圧雪が常にあり、トンネルのなかはカチカチアイスだったりするような場所はさすがにスタッドレスでないと厳しいです。特に寒さが緩んでくる春先の水が浮いてきた氷は滑ります。平坦路ならゆっくり運転すれば大丈夫ですが、坂道はどうしようもありません。
このように、「首都圏から日帰りで行ける範囲での雪のシーン」ならば基本的にオールシーズンタイヤで問題ありません。しかし、「凍結する本気の雪国」へ行くことがあるならば、スタッドレスタイヤを選んで欲しい。
これがオールシーズンタイヤにするかスタッドレスタイヤにするかの分かれ道でしょうか。ぜひ皆さんのカーライフにベストマッチなタイヤを選んでください!
そうそう、首都圏でたまに降る大雪でも基本的にオールシーズンタイヤでまったく問題ありません。凍結しやすい急坂があると厳しいケースもありますが、その際は回り道をすればいい話。1年に1度あるかないかの日のためにスタッドレスタイヤにする必要はありません。
しかし、自分は走れても周りがそうでないのが実情。「都心の大雪は結局走らないのが一番の防衛策」になってしまっている現状が、オールシーズンタイヤの普及で変わって欲しいなと心の底から願っています。
それでは皆さま、いいカーライフを!!
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みんなのコメント
こんな全くもって意味不明な発想初めて見た。
オールシーズンタイヤなんて信用してなかったでしょw