走り味 兄弟車でも方向性は違う
text:Kenichi Suzuki(鈴木ケンイチ)
【画像】乗り味どう変わる?【新世代GR86とBRZを比較】 全99枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
トヨタのGR86とスバルのBRZは兄弟車であり、エンジンも車体も基本部分は同じモノを使っている。
異なるのは、エクステリア・デザインのわずかな部分とサスペンション系のセッティングというのが先代からのやり方だ。
今回もリリースには「クルマのベースを共有しながらも、それぞれの個性を引き延ばした、異なる走りの味を持たせることに注力した」という内容が記載されている。つまり、走り味が異なるのだ。
では、どのように異なっているのか?
まずは、リリースの内容を確認しよう。
トヨタのリリースには「86ファンに喜んでいただける、86らしい味の進化を追求」、「スポーツ性能に特化した、更なる高い次元でのダイレクトで気持ちのいい走り」、「キビキビとした走りをさらに追及」とある。
一方、スバルのリリースでは「誰もが愉しめる究極のFRピュアスポーツカー」、「日常から限界領域までドライバーの意のままに操れる、さらに進化したコントロール性能」、「操る愉しさを極める進化したハンドリング性能」と説明されている。
つまり、リリースを読む限り、「86らしい、キビキビした走り」がトヨタGR86であり、「誰もが操る愉しさを味わえる」のがスバルBRZという違いがみて取れるのだ。
同じ車体でありながらも、はっきりとした方向性の違いがあるというわけだ。
先代で感じた86とBRZの走り味の違い
では、先代モデルでは、86とBRZの走り味は、どう違ったのか。
まず、2012年2月の86発売を知らせるリリースでは「ドライバーの感覚1つでいかようにも取り回せる『手の内感(うちかん)』や操る楽しさを体感できる、『直感ハンドリングFR』」と説明する。
一方、スバルは「四輪をしっかりと接地させることにより、操縦性と走行安定性、乗り心地の高さを高次元でバランスさせました」、「誰もが安心して、気軽にクルマを操る愉しさを体感できるスポーツカー」というのがBRZだという。
86の表現は異なっているが、BRZは新型と同じような内容であったのだ。
そんな初代の86とBRZの2台を試乗してみると、その走りの方向性は「はっきりと」異なっていた。
端的にいえば86は「いとも簡単にドリフトができるクルマ」であったのに対し、BRZは「安定した扱いやすいクルマ」だったのだ。
86は、手順を踏めば簡単にドリフト状態になり、しかも、その状態を維持するのが簡単であった。
一方、スバルは、もう少し後輪の接地感が高くなっており、また、コーナーリング速度を高めていき限界付近の動きも穏やかで扱いやすかったのだ。
聞けば、アライメントなど足まわりのセッティングのわずかな違いしかなかったという。
逆に、そんなわずかな細工で、これほどはっきりとした違いを表現できるのかと驚いたものだ。
86/スバルのファン納得させる走り味
ドリフトしやすい86に対して、安定&安心感のあるBRZ。
こうした違いは、86ファンも、スバルのファンも納得できるものだろう。
ご存知の方も多いだろうが、そもそもトヨタの86(ハチロク)という名は、大ヒットしたマンガ作品「イニシャルD」に強く影響されたものだ。
ドリフトの名手である主人公が、トヨタの古いトレノ(AE86:通称ハチロク)を駆って、峠でバトルするという物語だ。その作品中と同じ「ハチロク」というスポーツカーを発売するのであれば、ドリフトしやすいようにセッティングしたのも、素直にうなずけるというものだ。
一方、スバルの走り味は、また異なる。
スバルはWRCなどに参戦した過去もあり、派手にドリフトしているスバル車の雄姿を見たことのある人も多いだろう。
しかし、実際のスバル車は、逆にドリフトしにくいのだ。4輪がしっかりと路面をつかんで離さないような乗りなのだ。
そのため、ドリフトという不安定な状態になりにくい。これが、スバルのいう安心感であり、思いのままの走り。つまり「安心と楽しさ」を実現する走り味なのだ。
そして、これはBRZに限らず、レヴォーグやWRX、インプレッサなど、スバル車全体の傾向だ。まさに、スバルらしい走り味だ。
新しく発表された新世代のGR86とBRZも、リリースを読む限り、その走りの方向性は先代と変化はないようだ。
ということは、新世代もGR86とBRZの走り味は、先代との違いを踏襲しているに違いない。
ちなみに、2台の走り味の違いは、わずかなセッティングの差から生み出されている。つまりは、セッティングさえ変えれば、どちらの走り味も簡単に変更できるということだ。
そうしたカスタムの楽しみもGR86とBRZの魅力の1つ。
実のところ、どちらを購入しようとも、キビキビした走りも安心の楽しさも選べるのだ。
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