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EVとは思えない楽しさが詰まったアバルト「500e スコーピオニッシマ」の完成度

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EVとは思えない楽しさが詰まったアバルト「500e スコーピオニッシマ」の完成度

フィアット初のピュアEV「500e」が日本に初上陸したのが2022年4月。一見、ガソリンエンジンの「500」のボディーにモーターを載せかえただけかと思っていたら、「500」よりも全長と全幅は60mm、全高15mm、ホイールベースも20mm、大きくなっている。メーカーの説明だと「500」とは90%以上のパーツが異なるという別物のモデルであることが判明。電池搭載で低くなった重心、幅広となったトレッド、118PS、220Nmの性能のおかげで、走りがキビキビとした、まるでボーイズレーサーのようなコンパクトEVに仕上がっていた。

「500e」のインプレッションを書こうかな、と思っていたら、今度は「500e」のアバルト版が加わった。アバルトといえば、かつてはフィアットのコンパクトモデルをベースにチューニングカーを発売したり、60年代には独自のスポーツモデルを生産していたブランド。ガソリンエンジンの「500」もチューニングを手がけていた。そのアバルトがEVになった「500e」をチューニングしたというのだ。早速、お手並み拝見ということで、アバルト「500e」のローンチエディションである「スコーピオニッシマ」に試乗した。

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 アバルトのチューニングを施した「500e」は、外観からアバルトらしさを強調している。アバルトとして初めて車体のあちらこちらにアバルトエムブレムのシンボル、サソリをモチーフしたパーツを装着した。アルミホイール、フロントバンパー、ハンドルはサソリの爪をイメージ、リップスポイラーはサソリの足だ。サソリのエムブレムもボディーの両サイドに入った。サイドのリアフェンダーにはアバルトの電気自動車を特徴づけるEV専用ロゴも入っている。

 内装は黒を基調とし、インパネ、ハンドル、ハイバックシートにはアルカンターラ素材を使用、ヘッドレスト部分にはサソリのエムブレムが入り、全体にブルーとイエローのステッチで統一されている。パワーユニットは総容量42.0kWhのリチウム電池。これはノーマルの「500e」と同じだが、出力は155PS(37PSアップ)、トルクは235Nm(15Nmアップ)となった。ただし、車両重量は「500e」より20~30kg重いだけ。



 ハイバックのセミセパレートシートに座り、ポジションを調整する。手動で合わせる。シートはクッションが硬く、セミレーシングカー的。ハンドルは10時10分あたりの部分にアルカンターラを用い、滑りを防止している。センターパネルのシフトボタンを押し、走行モードを選択する。シフトボタンはP/R/N/Dの4モード。シフトレバーなどはない。 

 さらに回生モードも選べる。スコーピオントラック/スコーピオンストリート/ツーリズモの3モードだ。街中ではスコーピオンストリートを選択する。これだとアクセルオフで完全に停止する。スタート時の充電レベルは100%、メーターでの航続可能距離は230km。



 Dレンジでのスタートは軽快。アクセルの動きで加減速は即座に行なえる。しかもその動きは強烈だ0→100km/hを計測すると、7秒台。最近のコンパクトスポーツは、マイルド傾向だが、アバルト「500e」は、かつてのボーイズレーサーを思い出させる走りだ。

 小径、太めのハンドルを操ってコーナーを抜ける。床下に重量のある電池を敷いてあるので、重心が低く、ロールも小さく、コーナーをクリアする。重めの操舵力もスポーツ気分を高めてくれる。メーカーの資料によれば、加速性能はガソリン車のアバルトのハイパフォーマンスバージョン「695」とほぼ同じ。さらに20~40km/h、40~60km/hの中間加速は「695」よりも1秒も速いタイムだそうだ。いかにEV+モーターの立ち上がりが早いかがわかるデータだ。

 もうひとつ、アバルト「500e」には、隠し玉というか、ギミックな装備が搭載されている。それは「サウンドジェネレーター」スイッチ操作で、エキゾースト音を発する装置だ。これをONにして、スターターを押すと、ボボーッと低く、重いサウンドがクルマから流れてくる。

創業当時のアバルトはマフラーメーカーだったこだわりから、EVでの音を熱心に造り出したのだ。これは個人的には必要のない音。アイドリング中は迫力を感じたが、走り出してからのこの音は、ノイズ以外の何者でもなかった。スイッチで音をオフにすることができるので、試乗中はサウンドオフにしておいた。
 
試乗を終えて、充電。自宅の200V3kWでは12%の減りを約3時間で満充電にした。急速充電の場合は、車載のCHdeMOコードを使用するが、本体が大きく、クーペもカブリオレもサブトランクはないので、ラゲージスペースに、収納バッグに入れて、置かれているので狭くなってしまう。ラゲージスペースが小さいだけに、このあたりの収納は、工夫してほしいところだ。



 しかし、コンパクトEVはタウンユースの実用車と思っていたが、アバルトは見事にそのイメージを覆してくれた。このクルマの登場を見て、プジョー/シトロエンのコンパクトEVが、どのようなモデルを出すか、それも楽しみになってきた。

■関連情報
https://www.abarth.jp/500e/

文/石川真禧照 撮影/萩原文博

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