11代目は、大きいのか?
text:Masayuki Moriguchi(森口将之)
1972年のデビューから数えて11代目となる新型シビック。実車を見て資料を読んだ感想から、力の入ったクルマではないかと感じている。
まずはコンセプトワード。爽快シビック。ひさしぶりに「○○シビック」というフレーズが帰ってきた。なにが爽快かはこれから説明していくとして、ワンダーシビックやスポーツシビックを思い出すキャッチコピーは、若い頃にこれらに接した世代として嬉しい。
先代は日本製セダンと英国製ハッチバックが用意されていたが、今回は日本製ハッチバックのみとなった。セダンは近い車格でインサイトがあるし、路上で目にするのは圧倒的にハッチバックが多かったので納得している。
そもそもシビックは、1990年代まではホンダを代表するスポーティなハッチバックとして多くの人に親しまれてきた。ところが21世紀に入って4ドアセダンを主役に据えたあたりから国内での販売が伸び悩み、9代目ではタイプR以外は日本では売られなかった。
復活した先代で2つのボディを用意し、ハッチバックのほうが人気だったのでこちらに絞り込んだのかもしれない。
ボディサイズは全長4550mm、全幅1800mm、全高1415mm、ホイールベース2735mmで、先代と比較すると、全長は30mm、ホイールベースは35mm長くなり、幅は同じで、背は5mm低くなった。この大きさを見て「もはやシビックではない」という声も聞かれる。
新型が手に入れた“らしさ”
たしかにトヨタ・カローラスポーツやマツダ3ファストバック、フォルクスワーゲン・ゴルフに比べれば長い。
その代わり背は低い。シビックらしいスポーティさとキャビンの広さを両立させるための外寸と考えている。
新型ホンダ・シビック:全長4550×全幅1800×全高1415mm
トヨタ・カローラスポーツ:4375×1790×1460mm
マツダ3ファストバック:4460×1795×1440mm
フォルクスワーゲン・ゴルフ:4295×1790×1475mm
それにロングホイールベースのおかげで、身長170cmの筆者がドライビングポジションを取った後ろで、楽に足を組んで座れる。
ひとクラス下のフィットやヴェゼルでもやはり足を組んで座れるので、ホンダでは珍しいことではないけれど、マンマキシマム・メカミニマムという思想が受け継がれていると感じる。
スタイリングは、ファストバックスタイルは同じであるものの、かなりスッキリした。たしかに爽快だ。
しかもフロントフードやサイドのキャラクターラインが水平に近く、Aピラーを後方に引いたという処理は、アコードやヴェゼルなど最近のホンダ車に共通する。
目的の1つは視界の良さで、ここも爽快ポイントだとホンダでは説明しているが、少し前までのロボットアニメ風造形に辟易していた筆者としては、姿そのものがクリーンになったことに好感を抱いた。
インテリアもすっきりした。
日本市場に向けた決意表明
インパネは低めの水平基調で、上にメーターとディスプレイ、下にスイッチやコンソールを配したわかりやすいレイアウトだ。
それでいて全幅にわたるメッシュのパネルは、オーディオブームとともに成長していったシビックにふさわしいし、エアコンのコントローラーはダイヤル式とするなど、なんでもタッチスイッチにしない姿勢も評価できる。
メーターが10.2インチ、センターが9インチのデジタルディスプレイになったことも新型の特徴。
特に目立つのはセンターで、先代は社外品のナビを埋め込んでいたが、今回は見やすく扱いやすいアイコンを含め最新のホンダスペックになった。日本でも本気でシビックを売っていこうという決意表明と受け取った。
走りについては、先代もCセグメントで輸入車を含めてもトップレベルにあると思ったので、そのままでもいけそうだと思っていたが、資料を見ると各所に手を入れてきたことがわかる。
1.5Lのターボエンジンは、182psの最高出力、24.5kg-mの最大トルクは変わらないものの、クランクシャフトとオイルパンの高剛性化、VTECやターボ、排気系の改良などを実施している。このあと2022年にはハイブリッドとタイプRの投入も明言されている。
CVTはトルクコンバーターを大容量化したうえで、さらなる高精度制御を採用。
日本でも約3割のユーザーが選んだという6速MTは、シフトレバーの支持剛性強化とともにシフトストローク5mm短縮などを行っている。
300万円オーバーへの賛否
ボディは構造用接着剤の適用を先代の9.5倍に拡大するなどして、ねじり剛性を先代比で19%向上。フロントフードをアルミ製、リアゲートを樹脂製とすることで軽量化にも配慮している。
マクファーソンストラット式フロントサスペンションはサブフレームのリアメンバーにアルミを採用。マルチリンクのリアサスペンションはロアアーム支持点に新ブッシュを用いるとともにバネ特性を適正化するなどしており、 ステアリングはアシストモーターの制御を高精度化している。
ホンダセンシングと呼ばれる先進運転支援システムは、自動運転レベル3の機能を搭載したレジェンドの経験を活かし、標識認識機能の地図との連携、ホンダ初のアダプティブドライビングビーム、シビック初の渋滞運転支援機能を採用した。
このようにデザインやエンジニアリングのみならず、日本仕様の仕立てにも力が入っている新型シビック。気になるのは価格もレベルアップしたことで、319万円スタートとなった。
カローラスポーツやマツダ3は200万円台前半からあり、大幅値上げした新型ゴルフでさえ300万円以下のベースグレードを用意してきたのとは対照的だし、300万円というのは個人的な経験に照らし合わせても、クルマを買うときのボーダーラインの1つだと思っている。
ただ広さはこのクラスのハッチバックでは最大級だし、デザインは洗練され、走りは期待を裏切らないはず。SUVでは味わえないスポーツマインドを備えたファミリカーになっていそうな気がする。
それにガソリンエンジンをMTで操るシビックはこれが最後になるかもしれないことは、頭に入れておいたほうがいい。
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みんなのコメント
最近のホンダ車のこの部分って納車後数カ月レベルで劣化して変色しますよ。