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【ヒットの法則416】初代ジャガーXFは新しい時代を告げる斬新なプレミアムサルーンだった

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【ヒットの法則416】初代ジャガーXFは新しい時代を告げる斬新なプレミアムサルーンだった

2007年のフランクフルトモーターショーで初代ジャガーXFがデビューした。伝統とモダンを融合させながら、ジャガーが生まれ変わろうとしていることを感じさせるモデルだった。ポジション的にはSタイプの後継といえるXFはどんな個性を持っていたのか。ここでは2008年春、南フランスで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年5月号より)

最新のジャガーテイストを引き継いだ走り
走り出して100mもしないうちに「なんとしなやかなのだろう」と、頭の中で感嘆の声を上げていた。これは現行型XJから始まり、XKへと続く、最新のジャガーテイストを見事に引き継いだ素晴らしいものであると感激した。

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初めに試乗したのは4.2Lスーパーチャージャーエンジンを搭載するSV8で、タイヤはピレリPゼロの255/35ZR20というサイズ。20インチホイールの採用は見た目を優先した結果かとも思ったが、そうではなかった。これが実によくマッチしており、しなやかでコシのある足まわりを実現していた。小さな凹凸はやさしく包み込むようにクリアし、あまりいいとは言えない路面でも不快な振動を感じさせない。かと言ってそれはふんわりとしているということではなく、1本しっかりと芯が通っているようなところがあり、コーナーも気持ちよくスルリと抜けることができる。

SV8には電子制御アダプティブダンパーを持つCATS(コンピューター アクティブ テクノロジー サスペンション)が標準装備されているが、このデバイスの効果が大きいのだろう。また、SV8にのみ、ダイナミックモードというものが用意されているが、これをオンにすると、シフトアップ&ダウンのタイミングとスピード、またDSCの介入時期が、よりスポーティな方向に振られ、さらにドライビングを楽しむことができる。

エンジンはXKに搭載されているものをXF用にチューニングしたものだそうだが、パワースペックは同一だ。明らかに違うのはサウンドで、XKではスーパーチャージャーの作動音がよく聞こえ、スポーツ心を煽り立てられるような印象だが、これはジェントル。作動音はほとんど聞こえず、全体的に抑えめで適度なサウンドを余裕を持って楽しめる。

次に298psの自然吸気エンジンを搭載するモデルに試乗したが、これにはCATSが装備されず、19インチホイールを履くが、乗り心地のしなやかさという点では、やはりSV8には一歩譲る。しかし、運動性能の絶対的なレベルは高く、このモデルでも何ら不満はない。

ボディサイズは全長×全幅×全高が4961×1877×1460mmと、ライバルと目されるメルセデスEクラスやBMW5シリーズより、ひとまわりと言わないまでも若干大きい(全長で10cm前後)。しかし、その走りは大きさを感じさせず、実に軽快でスポーティだ。もっとも昨今、技術の進歩でこのクラスのニューモデルは大きさを感じさせないスポーツフィールを持つものが増えている。そうした世界の流れに沿っているわけだが、それにしても走りについてのXFの出来映えは素晴らしい、というのが印象だ。

斬新なダイヤル式シフトセレクターは操作性よし
さて、コクピットについてだが、最大のトピックは「ジャガードライブセレクター」というダイヤル式シフトセレクターが採用されたことだろう。

BMWのiDriveやメルセデスのコマンドシステムのダイヤルと同じような位置に似た形状で設けられているものだが、与えられた機能はまったく違う。これを回すことで、D、R、N、D、Sのレンジを選ぶ。乗用車としては初採用となるそうだが、使い勝手はなかなかよい。一部の高級モデルに見られるコラム式セレクターレバーよりは格段にいいと感じた。

ドライバーズシートに座ると、すぐに気づくのは、センターコンソールの幅が広く高いこと。これにより包まれ感があり、スポーティに感じられる。

なぜ、こうしたデザインが可能になったかと言えば、ダイヤル式セレクターを採用したためだ。この高さのセンターコンソールに従来のようなセレクターレバーが直立していたら操作性が悪くて仕方がない。

また、ここに(アメリカ人のため)3つのドリンクホルダーを設置できたのも、ダイヤル式セレクターのおかげだ。それからセンターコンソールが大きいため、フロントシートは小ぶりだが、それは何ら問題ではなく、逆に中肉中背の日本人にはぴったりで、メリットになりそうだ。

視線を前方に向けると、ダッシュボード位置が低く、見通しが非常によいことに気づく。それとともにそのすぐ下、左右に伸びるアルミパネルが目に入る。これはかなり斬新だ。インパネまわりは、ごく一部にこれまでのジャガーらしさを残すが、全体的には完全に新しいデザインとなった。よくぞここまで思い切ったと感心させられる。

また、メーターやスイッチ類の照明に薄いブルーの光を使っているのも特徴のひとつ。「フォスファーブルー」というこの色は、人が最も居心地がいいと感じるものだそうで、「そもそもはモトローラのケータイからインスピレーションを得たものである」と、デザインディレクターのイアン・カラムは説明してくれた。

よりよいデザインのため、あえてスチールボディに
このクルマ最大のセールスポイントは、スタイリッシュなエクステリアにある。とくに美しいのは後ろ姿。Cピラーからリアエンドにかけての造形には、うっとりさせられるものがある。かつてアストンマーティンに在籍していたイアン・カラムの本領発揮、といった感じだ。真横から見た姿も美しい。

それに対してフロント部分には、もう少しシャープな感じがあった方がよいのではとも思う。リアとサイドには非の打ちどころがないので、それに比してフロントセクションには物足りなさを感じてしまう。しかし、全体的には新世代ジャガーのあり方を見事に表現していると言っていい。ボディサイズはライバルより若干大きいと書いたが、それはこの伸びやかなスタイリングを実現するためだったのだろう。

ところでジャガーはこのところ、XJ、XKとアルミボディを採用してきたが、今回のXFはなぜスチールボディにしたのだろうか。チーフエンジニアからは「このクラスはスチールボディの方がよいと思います。アルミはスチールよりボディ部分で10%はコスト高になりますから」という模範解答が返ってきたのだが、その後、同じ質問をイアン・カラムにしてみた。すると「できないことはないのですが、このデザインはアルミを使ったのでは難しいんです」とのことだった。

ここにXFというクルマにかけるジャガーの思いを感じることができる。XFに与えられた最大の使命は「その斬新なデザインで新世代のジャガーをアピールする」ということなのだろう。結果的には運動性能も素晴らしい出来映えなのだが、そもそもの使命はデザイン的なインパクトを与えるということなのだ。

さて、チーフエンジニアは模範解答をするだけではなかった。試乗終了後、夕食の席でこんなことを言っていた。「XFはデザイン的には、新世代ジャガーの出発点なんです。これから出てくるものは、もっといいですよ」と。

そのクルマは何なのか。次のXJなのかどうかはわからないが、期待は大いに高まるというものだ。フォードグループから離れ、新たな道を歩んでいくことになるジャガーだが、その未来は明るく、希望に満ちあふれたものになることは間違いないだろう。(文:荒川雅之/Motor Magazine 2008年5月号より)



ジャガー XF 4.2S V8 主要諸元
●全長×全幅×全高:4961×1877×1460mm
●ホイールベース:2909mm
●車両重量:1842kg
●エンジン:V8DOHC+SC
●排気量:4196cc
●最高出力:416ps/6250rpm
●最大トルク:560Nm/4000rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●最高速:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:5.4秒
※欧州仕様

ジャガー XF 4.2 主要諸元
●全長×全幅×全高:4961×1877×1460mm
●ホイールベース:2909mm
●車両重量:1749kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4196cc
●最高出力:298ps/6000rpm
●最大トルク:411Nm/4100rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●最高速:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:6.5秒
※欧州仕様

[ アルバム : ジャガー XF はオリジナルサイトでご覧ください ]

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