■「君は何でもできる!」医師からの言葉で再起した元WGPライダー
元WGP(ロードレース世界選手権、現Moto GP)ライダーで、24歳の若さで脊髄を損傷し下半身不随となってしまったクルマいすのレーシングドライバー 青木拓磨(あおき たくま)選手が、24年間の苦難を乗り越えて、2021年8月に開催される「ル・マン24時間レース(以下、「ル・マン」)」に参戦すると発表しました。
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青木選手が合流する「SRT(ソーセ・レーシング・チーム)41チーム」は、代表のフランス人実業家 フレデリック・ソーセ氏はじめ、ドライバーも3人中2人が障がい者で構成。特別枠の「イノベーティブ・カー」クラスから、24時間耐久レースに挑むことになっています。
世界三大レース(※1)の1つ。モータースポーツ発祥の地フランスのル・マン市で行われる四輪耐久レースで、1周13.626kmのサーキットを24時間で走破した距離を競います。例年、夏至に近い6月に開催していますが、第89回(2021年)は新型コロナウイルスの影響により8月21日(土)~22日(日)へと延期となりました。
■ル・マン24時間レースってどんなレース? ル・マンは、F1モナコGP、インディーカーシリーズのインディ500に並ぶ、世界三大レースのひとつで、モータースポーツ発祥の地フランスのル・マン市でおこなわれる四輪耐久レース。1周13.626kmのサーキットを、24時間で走破した距離を競います。
例年、夏至に近い6月に開催されますが、第89回(2021年)は新型コロナウイルスの影響により8月21日から22日へと延期となりました。
また、ル・マン24時間レースは、エントリーすれば参加できるわけではありません。参加条件はとても厳しく、現在は前年のル・マン他各シリーズの大会結果に従って、エントリー可能なチームが選出される流れとなっています。
さらに、それらの大会の参加費は100万ユーロ(約1.3億円)、ル・マンの参加費も100万ユーロです。つまり、ル・マンに参戦するのには200万ユーロ(約2.6億円)もかかるのです。
また、ル・マンで総合優勝を果たすと、賞金は4万ユーロ(約520万円)と高額ではないですが、多くのスポンサーが付くため、年収が40億にもなるドライバーや、欧州では女王からナイトの称号を授かったドライバーも存在する名誉ある大会でもあります。
■青木選手のル・マンまでの険しい道のりとは バイクの最高峰WGP500に参戦し、世界チャンピオン目前で瀕死の大怪我を負い、下半身不随となってしまった青木選手は、レースへの情熱を捨て切れずに四輪レーサーへ転向。今回、ル・マン24時間レースに挑戦するまでには、24年もかかったといいます。
事故による苦渋の日々を過ごしていた青木選手は、レーシングライダーとしての復帰の可能性を求めて、米国マイアミ大学内のマイアミ・プロジェクトを訪ねました。そこで、Dr.Greenから、「君は何でもできる!」といわれたことが、ターニングポイントとなったそうです。
その後、元F1ドライバーのクレイ・レガッツォーニ氏との出会いが青木選手を四輪ドライバーの道へと誘います。レガッツォーニは、レース中の事故で下半身不随となりましたが、クルマいすレーサーとしてサーキットに復帰。青木選手はレガッツォーニ氏が来日していることを知り、ホテルを訪れ、運転免許すら発行されなかったにもかかわらず自ら補助装置を開発してレーサーに復帰したことや、障がい者に冷たい時代に立ち向かい続けたことを聞き、触発されたと話しています。
そして青木選手は2007年に、日本ではなく海外でレースライセンスを取得。同年、クルマいすレーサーとしてFIA(国際自動車連盟)アジアクロスカントリーラリーに出場したことで、レーサーとしても復帰を果たします。さらに、事故から13年後に日本でもレースライセンスを獲得し、2012年には国内レースへの復帰を果たしました。
今回ル・マン24時間レースに参戦するチームオーナーのフレデリック・ソーセ氏は、人食いバクテリアにより四肢切断となってしましたが、2016年のル・マンに参加して完走を果たした経験を持つ人物です。そのソーセが率いるチーム SRT41に、世界中の障がい者レーサーを呼んで、2020年のル・マンに出るプロジェクトが立ち上がり、青木選手が候補にあがったのです。
その後、青木は頻繁にフランスに行き、2018年にSRT41に加入。そして、今年ソーセやチームメンバーと共にル・マンに挑戦することが決定しました。
※ ※ ※
■青木拓磨選手プロフィール・1974年生まれのプロレーサー。・8歳の時に初めてポケバイに乗り、1990年にロードレースデビュー。・1995年・1996年、全日本選手権スーパーバイククラスチャンピオン2連覇を獲得。・1996年は世界選手権スーパーバイククラスでも優勝。・1997年には世界最高峰のロードレース世界選手権500ccに参戦し、世界ランキング5位を獲得するも、翌年の1998年、開幕前のテスト中に転倒。この時に脊髄を損傷し、下半身不随の後遺症を負ってしまい、以来クルマいすでの生活を送っている。その後、HRC(ホンダ・レーシング)チームの助監督に就任し、鈴鹿8時間耐久を3連覇させ、レンタルバイクによる耐久レース「Let’s レン耐!」を主宰するなど、バイク業界に貢献。2007年にレースに復帰し、その後も「ダカール・ラリー」や様々な四輪レースに健常者と同じ舞台の上で参戦するなど、精力的な活動を続けている。
(※1)世界三大レース(WEC/世界耐久選手権のル・マン、F1/フォーミュラ1のモナコGP、インディーカーシリーズのインディ500)
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