「驚いた」新型日産ノートの内容とは
text:Kenichi Suzuki(鈴木ケンイチ)
【画像】新型ノートと旧型ノート 大きく変化!【新旧モデル比較】 全192枚
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)
2020年11月24日、日産はコンパクトカーである「ノート」のフルモデルチェンジを実施し、12月23日より発売をおこなうと発表した。
驚いたのは、その内容だ。
内外装のデザインを変更するのは当然のことながら、パワートレイン、プラットフォーム、先進運転支援システム、グレード編成までを刷新。
コンセプトも、従来の「自在に楽しめるコンパクトカー」から、「常識を超える先進コンパクトカー」としている。
まさに内容一新といったものであったのだ。
エクステリアデザインは、すでに発表済みの新型クロスオーバーEV「アリア」と共通するデザインコンセプト「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」を採用。
新型ノートを真横から見ると、前後を貫くボディサイドのキャラクターラインがアリアと共通性を感じさせるものとなっている。
室内に目をやれば、メーター類はまるでパソコンモニターのよう。最新の自動車業界のトレンドをしっかりと抑えていることがわかる。
パワートレインは、先代モデルの末期では販売の6割を占めるほどになったという、ハイブリッドシステム「eパワー」のみとなり、そのシステム自体はモーターからエンジンまで、すべてを改良し、第2世代に進化。
ユニットは40%の小型化、30%の軽量化を達成。走行能力を担うモーターは、先代の80kW(109ps)・25.9kg-mから、85kW(116ps)・28.6kg-mといったように、出力、トルク共にアップしている。
また、燃費性能も同様にJC08モード比で、先代の34.0km/Lから最高38.2km/Lと向上している。
走りの根幹となるプラットフォームも、次世代型の上級小型車向けを採用。日産初の1470Mpa級の超ハイテン材を使用した高強度・高剛性なボディには、新たなサスペンションとステアリングシステム、高遮音パッケージを組み合わせている。
日産、お得意の先進運転支援システムである「プロパイロット」は、ナビゲーションシステムと連携するナビリンク機能を追加。高速道路での制限速度の変化やカーブの大きさに合わせた減速機能などが追加されている。
新型、変わらなかったところは何か?
新型ノートは、デザイン、パワートレイン、プラットフォーム、先進運転支援システムまで、幅広い項目にわたって進化が見られた。
では、変わらなかったのは、どんなところだろうか。
まず、ボクシーで、やや大柄、広めの室内空間を持つコンパクトカーというノート伝統的のパッケージングは守られている。
デザインが変わっても、そのシルエットを見れば、誰もがノートだと気づくはずだ。
新世代プラットフォームとはいえ、ボディ寸法の変化は少ない。旧型の全長4100×全幅1695×全高1520mm、ホイールベース2600mmに対して、新型は全長4045×全幅1695×全高1505mm、ホイールベース2580mmだ。
また、タイヤサイズは15インチと16インチとなり、先代の14インチ/15インチよりも大きくなった。しかし、185/65R15を基本とするタイヤ直径はそのまま。
ボディ、タイヤが与える見た目のサイズ感は、ほとんど変化なしと言えるだろう。
価格帯は大きな変化はないが、若干のプラスといったところ。旧型の「eパワー」モデル比で言えばプラス10万円ほどだ。
また、燃費性能は確かに高まっているが、グレードによって、その数値は異なる。
新型で最も燃費のよい「F」グレードは、装備が少なく、他グレードより30kgほど軽量であるが、価格は微妙に高い。あまり数多く売れるグレードではないだろう。
そういう意味では通常グレードである「S」と「X」の燃費、JC08モード34.8km/L(WLTCモード28.4km/L)が、新型ノートの真の燃費性能と見るべき。
注目すべき「ハイブリッドだけ」な点
デザインやメカニズムは大きく変わったが、基本的なサイズ感や価格帯という点では、それほどの変化がなかったというのが今回のノートのフルモデルチェンジだ。商品力は確実にアップしていると言える。
そうした中で、筆者が最も注目すべき点がある。
それはハイブリッドの「eパワー」のみとしたパワートレインの編成だ。
つまり、ガソリン・エンジンだけのグレードが存在しないのだ。
先代モデルの時点で、ノートの販売の6割は、「eパワー」が占めるという。逆に言えば、残り4割のエンジン車ユーザーを切り捨てることになる。
旧型では、ハイブリッドではない、普通のガソリン・エンジン車は140~210万円ほどで販売していた。
ところが、新型ノートは、「eパワー」のみとなり、価格は約203万円から上という価格帯になった。
つまり、これまであった140~200万円という価格帯がなくなるのだ。
これはいったいどういうことなのか。
発表会では「電動化に力を入れる日産のメッセージとして、ノートをeパワーのみとした」といった旨の説明があった。
日産はエンジン車から電動車に移行してゆく、その象徴が新型ノートであるというわけだ。
明言はされなかったが、「エンジン車はない」ととれるコメントだ。
ハイブリッドである「eパワー」だけの販売となった新型ノート。
しかし、それでは旧型の140~200万円のガソリン・エンジン車を購入していた約4割のユーザーはどうなるのであろうか。
エンジン車ユーザーはどこに行く?
旧型の140~200万円のガソリン・エンジン車を購入していた約4割のユーザーはどうなる?
考えられるのは3つある。
1つは「ちょっと高くなるけれど、良いものですから、頑張って買ってください」と、エンジン車からeパワーに乗り換えてもらうという選択。
そして、2つ目は「今まで安いエンジン車を買っていた方は、マーチがありますので、そっちを買ってください」というもの。
そして最後は、「最初はメッセージでしたが、やはりニーズがありますから、ほとぼりが冷めたら後でガソリン車を追加します」という方策だ。
まあ、最後はあまり格好良くないけれど、クルマの販売はビジネスだから、当然なんでもあり。可能性がないとは言えないだろう。
どういう結論に至るのかといえば、結局は販売の数字次第ではなかろうか。
「eパワー」のみで、これまで通りに売れてくれるなら、それでよし。新型ノートが旧型ほど売れなくても、「マーチ」が補うのであれば、それでもいいはず。
まったく売れないようであれば、そこで初めて安価なエンジン車を投入するという選択肢が浮かぶ。
また、12月には「前後に備えた2つの強力なモーターで4輪を駆動する、本格電動4WD車」も発売されるという。
カスタムのAUTECHバージョンの発売も12月から。
新型ノートの売れ行きは、2021年に入ってからが本番ということだろう。
先代モデルが2017~2019年で3年連続暦年コンパクトカー販売台数ナンバー1、2018年暦年登録車販売台数ナンバー1という大ヒットしているだけに、新型モデルに対する期待は大きい。
2021年はどのような成績になるのかに注目だ。
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みんなのコメント
ガソリン車を望む顧客に「マーチを買って」は、現状ではさすがにありえないだろう。