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降雨順延のレギュラー最終戦は、大波乱の展開をオースティン・ディロンが制す/NASCAR第26戦

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降雨順延のレギュラー最終戦は、大波乱の展開をオースティン・ディロンが制す/NASCAR第26戦

 いよいよ迎えた2022年レギュラーシーズン最終戦、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイでのNASCARカップシリーズ第26戦『コーク・ゼロシュガー400』は、降雨順延で日曜10時決戦となっても引き続きの雨に翻弄され、3時間以上の中断を経る展開に。そんな混沌のなか、オースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が僚友タイラー・レディック(シボレー・カマロ)の“後押し”を得て劇的な今季初勝利を収め、滑り込み16番手でのプレーオフ進出権を奪い取る大金星を挙げる結果に。

 レースでは雨の影響による“マルチカー・パイルアップ”も多発し、ライアン・ブレイニー(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)と進出最後のひと枠を争ったマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)は、最後の希望が打ち砕かれる結果に。また、シーズンを通じて不振に喘いだブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)も、アクシデントの犠牲となり2013年から続けて来たプレーオフ進出を逃すこととなった。

NASCAR元王者チェイス・エリオットが復帰。11月の第5戦にワイルドカード参戦へ/NitroRX

 このレギュラーシーズン最終戦を前に、クラッシュによる脳震盪の影響から過去4戦を代役のタイ・ギブスに託して療養を続けて来たカート・ブッシュ(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が大きな決断を下し、自らが保持していたポストシーズンへの参加資格を「医学的な見地から」撤回し、引き続きリカバーを優先するとアナウンスした。

「45号車のトヨタ・カムリに戻り、チームと一緒にプレーオフを戦うことを望んでいたが、まだ僕にとって適切な時期ではないということだ」と、週末を前に無念の胸中を明かしたカート・ブッシュ。「レース復帰が(医学的に)認められていないことに加え、私自身もマシンに戻る準備ができていないことは分かっている。このNASCARというスポーツ、ドライバー仲間、そしてファンを心からリスペクトしているし、今季のチャンピオンシップを争えないことが分かっている場合、プレーオフ出場権を獲得することはできないと感じた」

「決断は簡単なものではなかったが、それが正しいことだと思っている。マシンに戻る準備をしながら回復と強化に時間をかけ続け、23XIレーシングが今季の成功を継続できるよう、できる限りのことをしていくつもりだ」

 また、このレースウイークを前にいくつかのニュースも飛び込み、現在キャンピイング・ワールド・トラック・シリーズとして開催されているトラックシリーズには、来季よりふたたびクラフツマンが復帰し、タイトルパートナーに就任することが決定。ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)やダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)らも、2023年に向けチームとの契約延長を発表している。

 そのデイトナの金曜は午後から雨が路面を洗い流す状況のなか、ディフェンディングチャンピオンのカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)がポールポジションを確保し、前戦で“因縁の優勝争い”を展開した僚友チェイス・エリオット(シボレー・カマロ)とフロントロウを共有することに。しかし土曜夜の決勝スケジュールを前に、ふたたびの悪天候によりフィナーレの延期が決定され、160周決戦は日曜10時からの幕開けとなった。

■8台が絡むアクシデントが2度発生

 その序盤戦からプレーオフ進出争いに注目が集まると、まず31周目にブレイニーが深刻な恐怖に襲われることに。エリック・ジョーンズ(ペティGMSモータースポーツ/シボレー・カマロ)やデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)と並び、エプロン側の下段を走行していたブレイニーは、ターン2でルーズになったジョーンズの影響で11号車トヨタ・カムリのリヤに追突。

 背後のクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)らも巻き込む格好で、ブレイニー自身もアウト側ウォールの餌食となり、12号車フォード・マスタングの右フロントを大破することに。このアクシデントでは最終的に8台が絡む結果となり、走行不能のダメージを負ったベルに加えて、ケセロウスキーも戦列を去ることとなってしまった。

「誰かが僕の目の前で大破していた。何が起こったのか正確には分からないが、クラッシュしたマシンがたくさんいたんだ」と語ったケセロウスキー。「行き場がなく間に合うよう減速する時間がなかったから、僕たちのチームにとっては最悪の展開だ。僕らはこの週末、ひさしぶりに本当に速いレースカーを持っていた。最前戦に向けて進んでいけるようなね」

 一方で、ロガーノが勝利したステージ1では5位、トヨタ艦隊が隊列を率いてカイル・ブッシュ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が獲ったステージ2では、チームメイトに続く2位通過を果たしたトゥルーエクスJr.がそれぞれ6点、9点を加算。25点あったブレイニーとの差を10点にまで縮めていく。

 しかしファイナルステージ開始直後に、先頭集団のロガーノやレディックが“ビッグワン”の引き金を引くと、ロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)やウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)らを含め、ふたたび8台が絡んだビッグアクシデントが発生。ここでまさかの巻き添えとなったトゥルーエクスJr.のカムリもグラスエリアに放り出され、ブレイニー同様車体右サイドにダメージを負ってしまう。

 タイミングの差こそあれ、これが決定打となり、右フロントのタイヤフェアリングを失いながらも、15位完走のブレイニーが8位フィニッシュのトゥルーエクスJr.を退け、プレーオフ進出争いに終止符を打った。

「それは間違いなく、僕がここに来る以前に望んだかたちよりもはるかにストレスが多かったが、12号車のクルーは執念でここに留まり、修復のためにあらゆる小道具を駆使してくれた。だから僕はやるしかなかった。こんな(延期での)1日の始まりを経て、そこに留まり、ゲームに留まることができた。それは僕らにとって間違いなく有益だったよ」と語ったブレイニー。

 そして126周目にもリードラップで背後から姿勢を乱され続けたチェイス・ブリスコ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)が、その“犯人”でもあるアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を道連れに激しいクラッシュを引き起こすと、今季終盤で好調を維持したダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)らとともに、ディロンのカマロZL1もスピンを喫し、スライドしたままバックからピットレーンに滑り込んでいく。

 幸い軽微なダメージで済んだディロンはリスタートに合流。残り30周時点で速さを見せていたロガーノも、エリック・ジョーンズ(ペティGMSモータースポーツ/シボレー・カマロ)と絡んで後退することに。そして最後のドラマは139周目にやってくる。

■「ターン1の途中で雨に遭遇し、完全にコントロールを失った」とハムリン

 リスタートからターン1に向け、レーシングスピードに復帰して猛然と突進した隊列を突然のレインシャワーが見舞い、先頭のジャスティン・ハーレイやダニエル・ハムリック、そしてハムリンのカムリらが突如グリップを失い、そのままの速度でウォールに激突。後続の車両も速度を殺す方法がないまま、成す術なく白煙を上げて巻き込まれていく。

 結局、この13台が絡んだアクシデント直後に、NASCARのスチュワードは雨が止むのを待つため赤旗中断を決定。ここから実に3時間19分57秒のレースサスペンデットに突入する。

「ターン1の途中で雨に遭遇し、完全にコントロールを失った」と、マシンを降りた直後に語ったハムリン。「隊列の最前線で加速し、ターン1に入る10秒ほど前に降って来たんだ。ファンもそれを感じていたはずさ」

 この混乱をエプロン側への回避で悠然とくぐり抜けたディロンは、残り21周のリスタートに向けデイトナ制覇の最有力候補と見られたものの、再開後からオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)に後れを取る展開に。

 しかし残り3周のターン1で背後に迫ったディロンが、2号車フォード・マスタングのリヤに“タッチ”し、ラップリーダーがバランスを崩す間に前に出ることに成功。最後は僚友レディックを護衛につけ、参戦37台中同一周回わずか10台、完走17台の混戦を制し、大逆転でのプレーオフ進出滑り込みを果たした。

「本当に多くのことが起こり過ぎた。ホワイトフラッグを見たとき、また背後で誰かが『何かを起こす』んじゃないかとハラハラしていたし、その意味でもリードを奪っておきたかった。それを手にして、正直少しホッとしたよ」と、混沌の1戦を振り返った今季初優勝のディロン。

「僕らも最後まで調子が良かったのは分かっていたけど、彼(シンドリック)はあらゆる種類のランをチェックする良い仕事をしていた。それで彼を少しプッシュしすぎて、ルーズにしてしまった。その後はギャップを築けて、背後には8号車(レディック)も来てくれたんだ」

 一方、ボトムまで滑りながら見事なコントロールで体勢を立て直し、最後は護衛のディフェンスを掻い潜って勝者からわずか0.140秒遅れの3位まで戻ったシンドリックは、ウイナーの動きに関して「あのバンプも公正なゲームだ」と応じた。

「それはシーズンのどのレースでも、フェアゲームだと思うよ。彼がこのレースに勝つことは、大きな意味があったからね」と、勝負の醍醐味を語ったシンドリック。「僕が走るのが遅すぎたのか、彼はコーナーへの入り口で僕を直撃した。でもセーブできて良かったよ。まだフィールドを抜けて戻り、最後にショットを決める力があったからね。そのことはうれしく思うけど、負けるのはいつだって嫌いさ!」

 これでシンドリックは14番手、勝者ディロンは最後尾16番手でプレーオフ進出を確定。最後のひと枠を争っていたブレイニーは7番手まで上げて通過。続く第27戦『クックアウト・サザン500』が、プレーオフ第1ラウンド開幕戦として、南カリフォルニアのダーリントン・レースウェイで9月2~4日に争われる。

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