メーカーも力を入れるホットハッチ
性能、コスト、日常的な使い勝手のバランスを考えると、「ホットハッチ」ほど優れた回答は他にない。
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一般的なファミリーハッチバックをパフォーマンスカーに仕立て上げるというアイデアは、今では定番のものとなり、特に欧州のエンスージアストには人気がある。
フォルクスワーゲンがこのコンセプトを採用したのは、1976年の初代ゴルフGTIからだが、熱心なファンによれば、ホットハッチバックというニッチな分野はシムカかアウトビアンキのどちらかが先に確立したものだという。
しかし、どちらが先であっても、今やほとんどのメーカーがこうした楽しいクルマをラインナップしている。欧州では、ドイツ製のビッグパワーを持つ高級車から、ヒュンダイの新型車まで、多くの選択肢が用意されている。羨ましい限りである。
今回は、その中からトップ10を選び抜き、1位から順に紹介していく。よだれを垂らしてもいいように、ハンカチのご準備を。
1. トヨタGRヤリス
このランキングの上位に位置するモデルには、ホットハッチの定義を拡大するものも存在するが、いずれにしてもトヨタが生み出した驚異的なGRヤリスは、今回のトップにふさわしい。
他のモデルに比べれば、広さや使い勝手は劣るかもしれないが、実戦でのペースやドライバーの得る喜びにおいては右に出るものはない。
GRヤリスは、当初はラリーのホモロゲーションモデルとして計画されていたが、WRCのルール変更を受けてプロジェクトが中断されてしまった。しかし、トヨタはブランドのイメージを変えるために、豊田章男社長のもとエキサイティングなドライバーズカーをさまざまなモデルレンジに導入することを決定した。その1つがこのクルマだ。
最高出力260psの1.6L 3気筒ターボエンジンと4輪駆動システムを搭載して、0-100km/h加速をわずか5.5秒で走破する。また、トヨタ・ガズー・レーシングのWRCチームの意見を取り入れて開発されたシャシーとサスペンションは、どんな天候でも高速走行が可能なように完璧なチューニングが施されている。
コミュニケーションを重視した操作性、確かなコーナリングバランス、そしていつでもどこでもより速く、より楽しく走れる不思議な動的安定性を備えたGRヤリスは、非常に希少で特別なパフォーマンスカーだ。
2. フォード・フォーカスST & STエディション
フォードには過去数十年、販売チャートを賑わせ、記憶に残るような素晴らしいホットハッチがいくつもあった。現行のフォーカスSTは、ランキングトップにわずかに及ばなかったが、それは、実に鋭敏で魅力的なドライバーズカーではないからでも、パワーや装備が不足しているからでもない。
STは従来、ホットハッチの中ではやや下位に位置するが、フォードは現行モデルのメイクアップには手を抜かなかった。フォーカスSTとしては初めてアダプティブ・ダンパーを搭載し、フロントアクスルに電子制御式LSDを採用している。この価格帯のクルマとしてはまだかなり珍しいもので、ハンドリングの魅力向上に貢献している。
さらに特別でハードコアな仕様をお望みの方には、手動調整式コイルオーバー・サスペンションと軽量アルミホイールを装備したSTエディションがある。STのダイナミックなレシピをさらに硬派にして、シャープなボディコントロールとハンドリングを実現している。
フォーカスSTは、ダイレクトで俊敏なハンドリング、しっかりとしたボディコントロール、そして豊かなサウンドとパフォーマンスカーとしてのキャラクターを確かに持っている。平凡な道のりも楽しく走れるように作られているのだ。
しかし、かつてのフォード車のような明快なグリップとパフォーマンスには欠けている。STモデルのバランスとしては、サーキットで大暴れするよりも、日常的なロードパフォーマンスを重視した方がいいのだろう。
このクルマを現時点での究極のホットハッチバックとするには不十分だが、非常に強力な候補であることは間違いない。
3. メルセデスAMG A 45 S
メルセデスAMG A 45 Sは、5万ポンド(約760万円)以上する4輪駆動のホットハッチであり、422psと50kg-mを発揮する2.0L 4気筒エンジンを搭載している。地球上で最も強力な量産型4気筒エンジンを積み、フェラーリ488ピスタよりも高い比出力を持つという、ある意味まったくもって馬鹿げたクルマなのだ。
とはいえ、そのスポイラーやフィン、フェンダーの下には、驚異的なドライバーズカーが眠っている。直進性が非常に高いことは言うまでもないが、それ以上に驚かされるのは、その複雑なステロイド系ドライブドレインが、単にツーリングをしているときにはとても大人しく、制御しやすいということだ。
高速走行時のボディコントロールはしっかりしているが、シャシーには偽りのない快適性を残している。一方でグリップは傑出しており、電動アシスト・ステアリングラックからの正確さ、重み、質感のフィードバックは、クラス最高レベルに達している。
マルチな才能を持つホットハッチバックとして、A 45 Sは間違いなく成功を収めている。しかし、5万ポンドを超える価格設定は、ホットハッチが本来目指すべき「比較的手頃な価格」の領域から大きく逸脱しており、これをチャンピオンにするのは少々問題があるだろう。だが、このマシンは素晴らしいものだ。
4. フォルクスワーゲン・ゴルフR
フォルクスワーゲンのスーパーゴルフとして高い評価を得ている4輪駆動のゴルフRが、最新モデルで大きな進化を遂げた。
20年前、V6エンジンを搭載したR32がアルファ・ロメオ147 GTAと競い合っていたように、フォルクスワーゲン正規ディーラーで買えるハッチバックの中で最も刺激的なモデルであったが、最新モデルは少しテイストが異なる。最高出力320psの2.0Lターボはラインナップでは圧倒的だが、他のドイツ製ライバルには及ばない。
しかし、エンジン以外にも武器はある。従来よりも高剛性で、車幅が広く、ブレーキの効きも良くなっている。アダプティブ・ダンパーを装着し、完全トルクベクタリング方式の4輪駆動システムを採用している。このシステムは、前輪と後輪だけでなく、後輪の左右いずれかにトルクを割り振ることができる。さらに、オプションで「ドリフトモード」も用意されている。
8代目ゴルフは、7代目とは少し違ったキャラクターになった。先代で人気を博した、しなやかさ、安定性、速さのちょうどいいバランスが失われた一方で、そのバランスを補うために優れたボディコントロールとグリップが与えられた。
先代の「すべての移動に持ち出せる速いクルマ」という魅力を気に入っていた人にとっては、8代目は少し刺激が強すぎるように感じられるかもしれないし、低速域ではやや扱いづらい印象を受けるかもしれない。しかし、このクルマのダイナミクスが大幅に向上していることは否定できない。
5. ルノー・スポール・メガーヌRS 300トロフィー
第4世代のメガーヌRSは、単なる気取り屋のためのホットハッチではない。カップ仕様のこのクルマは、ハードな走りと鋭いエッジを持つ戦闘機であり、その性能を最大限に引き出すためには、真剣なドライビングと少々の妥協が必要となる。
4輪操舵により、タイトなカーブではホイールベースの長さが事実上打ち消され、非常にシャープなハンドリングを実現している。また、油圧式のバンパーにより、どんな衝撃も”耐えられる”ものとなっている。一方、1.8L 4気筒エンジンは十分なパフォーマンスを発揮するが、加速や高回転域での柔軟性は少し不足がある。
キャビン全体も人間工学的に優れているとは言えない。しかし、適切な道路と適切な環境、あるいは適切なサーキットでは、多くの魅力を感じられる。もし、硬めのセットアップを好む市場の声を無視して、柔らかいサスペンションの仕様を選択すれば、日常的な使い勝手とスリルを両立したホットハッチを手に入れることができる。
6. BMW M135i & 128ti
エンジンのシリンダー数を50%減らし、後輪駆動をやめたことで、新型BMW 1シリーズのパフォーマンスモデルであるM135i xドライブは、より優れたホットハッチになった。奇妙なことだと思うかもしれないが、実際にそうなったのである。
優れているというのは、よりパワフルになったとか、最高にエキサイティングになったという意味ではないことは明白である。先代のM140iのパワートレインとシャシーには確かにその片鱗があったが、2019年に登場したM135i xドライブは、より落ち着きのあるパフォーマンスカーとなり、運転しやすく、コミュニケーションも取りやすくなった。
BMWはこのM135i xドライブのハンドリングと仕様を改良し、4輪駆動システムを半分に削ぎ落として、2020年に128tiを誕生させた。トランスミッションはATのみで、他のモデルほどダイレクトな興奮は味わえないが、高速走行の素質は十分に持っている。
使い勝手が良く、普通のクルマよりも少しだけダイナミックに洗練されたクルマが好きなら、128tiは検討する価値がある。
7. フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
フォルクスワーゲンの長寿モデルであるゴルフGTIは、手頃な価格のパフォーマンスカーとして重要な位置を占めてきたが、最新モデルでは毛色が少し違ったものになっている。
フォルクスワーゲンは新型ゴルフGTIで、より優れたハンドリング・レスポンスとドライバーズカーとしての魅力を追求したが、その成果は微妙なものだった。それどころか、GTIが長年培ってきたスイートな乗り心地に悪影響を与え、歓迎されない硬さを持ったクルマになってしまった。
とはいえ、ゴルフGTIが日常的に楽しく運転できる優れたドライバーズカーであることは間違いない。最高出力245psの2.0Lエンジンは、ライバルに比べてややパワー不足で、少し回転が遅いと感じることもあるが、力強くてレスポンスのよい推進力を発揮し、シャシーもこれに十分応えてくれる。
新しい硬めのスプリングを採用したことで、凹凸の激しい田舎道よりも滑らかな路面での走行性が向上しているが、アダプティブ・ダンパーを使用することで、ある程度の乗り心地の調整が可能だ。ステアリングも改められたが、まだ少し軽くて、麻痺しているような感覚がある。日常的な使用で気になるほどではないが、ドライバーを夢中にさせる魅力は多くない。
上位モデルのGTIクラブスポーツでは、エンジンスペックが300psと40kg-mに向上し、最終駆動比が減少、サスペンションも強化される。しかし、このリストの中で最もバランスが良く、最もエキサイティングで、最もドライバーを楽しませてくれるクルマではない。
8. ヒュンダイi30 N
韓国の自動車メーカーであるヒュンダイは、パフォーマンスラインナップである「N」シリーズ初のモデル、i30 Nに対し、中途半端な妥協を許さなかった。このクルマは、元BMW M部門のエンジニアリング最高責任者であるアルバート・ビアマンを採用し、膨大な研究開発資源を注ぎ込んで作られたものだ。
そして、1つや2つの留意すべき点はあるものの、その苦労は決して無駄ではなかったと言えるだろう。i30 Nは、このセグメントでの経験が浅いメーカーとは思えないほど、驚くべき硬派な気質と真のパフォーマンスを備えている。ステアリングの重さ、パワーデリバリー、ダンピングの硬さなど、実に古風な味わいがある。
どちらかといえば、ハードコアなチューニングをやりすぎたようで、硬くてアグレッシブなサスペンション、ステアリング、ドライブトレインのモードにはスキがなく、少々難儀なクルマになっている。
しかし、徹底したグリップ力よりも現実的な操作性を重視して設定されたこのi30 Nは、複雑でバランスのとれた、純粋なドライバーズカーである。
9. ミニ・クラブマンJCW
BMW M135iとまったく同じプラットフォームを採用し、同じエンジン、トランスミッション、4輪駆動システムを搭載したミニ・クラブマン・ジョン・クーパー・ワークスは、同ブランドにとって画期的なパフォーマンスカーだ。それまでに300ps以上のパワーを有するミニはなかったし、このクルマの速さ、ハンドリングのスマートさ、日常的な使い勝手に匹敵するものもなかった。
他のミニと同様に、クラブマンJCWは車高が低く道路に近いため、魅力的でスポーティなドライビングポジションを実現しており、他のミニに対してアドバンテージを持っている。また、コーナリングはフラットで安定しており、乗り心地もしっかりとしているが、長年にわたってミニが誇ってきた「ゴーカート」のような感覚はない。
後部座席には大人が座るのに十分なスペースがあり、トランクも広いため、他のハッチバックと同等の実用性を備えているが、ブランドの真価を感じさせる魅力的なハンドリングも持ち合わせている。最上位モデルのJCWは、ミニがこれまでに作ってきたパフォーマンスカーの中でも完成度の高いモデルとなっている。
10. スコダ・オクタヴィアvRS
スコダ・オクタヴィアのパフォーマンスモデルであるvRSは、日常の運転に実用性を求めながら刺激的な走りも捨てがたいと考える、一定の年齢層のドライバーたちの要求に応えてきた。
このクルマは、手頃な価格のドライバーズカーとして、その多様性を発揮している。最高出力245psの2.0Lターボガソリンエンジンと最高出力200psの2.0Lディーゼルエンジンの2種類があり、前者には3ペダルとマニュアル・トランスミッションが、後者には4輪駆動が用意されている。
また、ボディタイプは5ドアのハッチバックとワゴンの2種類を設定。さらに、1.4Lのプラグイン・ハイブリッド車も選択可能で、短距離走行が多く税金を節約したいユーザーにはおすすめだ。
ハイブリッド車は、ドライバーにとってはちょっと疎外感のあるモデルだが、マニュアル装備のターボガソリン車は、家族にふさわしいしなやかな乗り心地と広さ、そして興奮が冷めないだけのパフォーマンスとハンドリングを兼ね備えている。一方、4輪駆動のディーゼル車は、トラクションや日常の使い勝手がよく、経済性や航続距離の向上も期待できる。
通勤でも、家族でのドライブでも、気軽に使えるホットなハッチバックを探しているなら、オクタヴィアvRSは最適なモデルといえるかもしれない。
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