スポーツクーペ作りに対する経験の豊富さ
三菱スタリオンのG63B型シリウス・エンジンは、圧縮比が7.6:1と低い。ターボのブースト圧が高まるまで、生気に欠けた印象がある。2500rpm以下ではトルクが細く、3500rpmまで回しても目立った変化は得られない。
【画像】2.0Lターボクーペ 日産フェアレディZ 三菱スタリオン S30と最新Z FTOとGTOも 全115枚
1980年代後半らしい、パンチ力のあるドッカンターボ的ではない。しかしそれ以上の回転域に達すると、メカニカルな高音を響かせながら、本領が発揮される。タービンの回転を保つように適切なギアを選択し続ければ、積極的な三菱を堪能できる。
とはいえ、RB20DETエンジンは傑作だと実感する。同時に、日産のスポーツクーペ作りに対する経験の豊富さも、フェアレディZ 200ZRを通じて伝わってくる。
ステアリングラックはラック&ピニオン式で、反応はタイト。手のひらへ充分に情報が届く。今回の例では、モモ社のステアリングホイールへ交換されており、パワーアシストに対して小径過ぎた。実際より、操舵には力が必要だった。
スタリオンはボール・ナット式と旧式で、ギャランΣをベースにする古さの一端が見える。切り始めが軽すぎ、ステアリングホイールは大きすぎ、スポーツカーとしてはレシオがスローだ。
安定しないほどテールが身軽という訳ではないものの、フロントが重く、オーバーステアへ転じやすい。ドライバーが楽しめるともいえるが、狙い通りに操縦するには、もっと応答の素早いステアリングが欲しくなる。
カーブが連続する道で楽しいスタリオン
それでも、片手で一気にカウンターステアを当てることは可能。意欲的で確実に腕を動かせば、スタリオンのウェッジシェイプ・ボディを振り回せる。
ドライビングポジションはやや高めながら、車内は広々としていて視界に優れる点は強み。シフトレバーとブレーキペダルの感触は悪くない。だが、クラッチペダルはストロークが長すぎる。ステアリングホイールは不自然に胸元へ近い。
200ZRへ乗り換えると、すべてが自然ですぐに馴染める。傑作の初代、240Zの後継であることを実感させる。人間工学というレイアウトの基本を重視する姿勢が、3代目でも貫かれている。
ただし、英国のカーブが連続する一般道で、より楽しいのはスタリオン。両車ともサスペンションは適度に引き締まっているが、僅かに軽い印象があり、身のこなしがタイト。ドライバーの遊び心に応えてくれる。
200ZRも、コーナーを機敏に縫っていける身軽さを備える。重心位置が低いのか、横方向のグリップ力では勝る。サーキットでは速いかもしれないが、スタリオンの方がいつもの道では笑顔になれる。
この違いは、正直なところ不思議ではある。車重は1310kgに対し1308kgでスタリオンの方が軽いとはいえ、たった2kgだ。同じ2+2のシートレイアウトだが、200RZの方がホイールベースで約75mm、全長も約130mm長いためかもしれない。
多くの人が認める流麗なスタイリング
もっとも、シャシーチューニングの影響が大きいように思う。Z31型のフェアレディZでは最軽量な200ZRだとはいえ、アメリカンなプラットフォームの姿勢から逃れることはできていない。
ホイールベースが短い2シーター・シャシーに、300ZX用の調整式スポーツ・サスペンションが組み合わされれば、違った味わいになるはず。理想をいえば。
とはいえ、Z31型の魅力を200ZRもしっかり宿している。多くの人が認める流麗なスタイリングで仕立てられた、快適なグランドツーリング・クーペだ。
今回ご登場願ったシルバーの200ZRは、モデル中期のフェイスリフトを受け、前期のやや賑やかなデザインの角が丸められている。面構成がスムーズになり、スッキリとモダンさを増している。
多くの300ZXとは対象的に、この200ZRのインテリアはストライプ柄のクロスでシートが仕立てられ、内装はブラックが基調。スポーティな印象で好ましい。キャビンがコンパクトでルーフが200mm短い、2シーターが筆者の好みではあるけれど。
1980年代の日産車らしく、プラスチック然とした部品は多いものの、うんざりするほどではない。エアコンの操作パネルはブラシ仕上げのクロームメッキで、上級感を漂わせている。
Z31型フェアレディZのベスト
スタリオンのスタイリングは、比較すると少々古びて見える。ポルシェ924やマツダRX-7、シボレー・カマロなどの影響を感じる直線的なボディはハンサムながら、1980年代初頭の雰囲気も漂わせる。その後の、曲線を組み合わせた時代との距離がある。
インテリアはほぼブラック一色。メータークラスターの両脇に、ヘッドライトなどのボタンが並んでいる。シートはレザー張りで快適。サポート性に優れ、角度などの調整域も大きい。
サイドウインドウの位置は高く、包まれ感がある。サスペンション・ストラットの取り付け位置やバルクヘッドなどを、サルーンのギャランΣと共有するためだろう。
40年の時を経て改めて試乗した、2台の日本製2.0Lスポーツクーペ。200ZRの方が装備は充実し、快適で、操縦系のレイアウトも適正。見た目も美しいと思う。
一方で欧州のワインディングを軽快に飛ばすなら、筆者はスタリオンを選びたい。300ZXと比較された、新車当時も同様な結果が導かれていた。とはいえ、200ZRはその差を縮めている。
日産が200ZRを日本以外へ提供しなかったことは、正しい判断だったとは思えない。300ZXのウイークポイントを、完全に克服しているわけではないが、Z31型フェアレディZのベストといっていいだろう。
協力:フェアモント・スポーツ&クラシック
三菱スタリオンと日産フェアレディZのスペック
三菱スタリオン EX(1982~1990年/英国仕様)
英国価格:1万6149ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約402万円)以下(現在)
販売台数:4万9659台(合計)
全長:4400mm
全幅:1685mm
全高:1320mm
最高速度:214km/h
0-97km/h加速:6.9秒
燃費:7.1-10.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1308kg
パワートレイン:直列4気筒1997ccターボチャージャーSOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:179ps/6000rpm
最大トルク:24.9kg-m/3500rpm
ギアボックス:5速マニュアル
日産フェアレディZ 200ZR(1983~1989年)
英国価格:2万875ポンド(300ZX/新車時)/2万5000ポンド(約402万円)以下(現在)
販売台数:4万9659台(Z31型合計)
全長:4535mm
全幅:1690mm
全高:1310mm
最高速度:180km/h
0-97km/h加速:7.6秒
燃費:7.1-10.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1320kg
パワートレイン:直列6気筒1998ccターボチャージャーDOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:180ps/6400rpm
最大トルク:23.0kg-m/3600rpm
ギアボックス:5速マニュアル
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