ニュルのタイムはフェラーリ360を凌駕
歴史に残る名作ホットハッチを、幾つも生み出してきたルノー。3代目となるメガーヌ IIIに設定された、2世代目のメガーヌ R.S.も間違いなくその1台に数えられる。
【画像】名作ホットハッチ ルノー・メガーヌ R.S. 2世代目と3世代目を比較 BEV版メガーヌも 全118枚
すこぶる速く楽しいメガーヌが、グレートブリテン島や日本列島に上陸したのは2010年。人気を博した英国では、混乱するほど多くのバリエーションが次々に投入された。
最初にリリースされたのが、R.S.250。2.0L 4気筒ターボが250psを発揮し、2世代目の口火を切った。軽量・高性能なカップ・シャシーにリミテッドスリップ・デフが組み合わされた、R.S.250 カップも用意されている。日本市場にもカップが導入されている。
翌2011年にはR.S.265 トロフィーが登場。数字の通り最高出力は265psに上昇し、ブリヂストン・ポテンザ・タイヤを履き、サーキットとの距離を一層近づけた仕様といえた。
このメガーヌは、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェでFF量産モデルのラップレコードを更新。8分7秒97という記録は、V8エンジンを搭載した当時のフェラーリ360モデナやアウディRS4を凌駕している。英国では、限定50台が販売された。
2012年にメガーヌはフェイスリフト。それに伴いR.S.も最高出力が高められ、さらに速いカップも登場した。グレードや限定モデルは多彩で、すべてを数え出すときりがない。
カップシャシーの乗り心地はハード
細かなアップデートや数字はおいておいて、2世代目のメガーヌ R.S.は運転が楽しい。オリジナルのR.S.250でも0-100km/h加速を6.1秒でこなす瞬発力を備え、回転の上昇とともに高まる勢いがドライバーの気持ちを刺激する。
本域に到達すれば、圧倒的なパワーだけでなく、聞き惚れるようなサウンドにも包まれる。グリップ力に不足はなく、ステアリングホイールの重み付けも妥当。手のひらには充分なフィードバックも伝わってくる。
特にカップシャシーを備えたメガーヌ R.S.の場合、乗り心地はハード。能力に長けたホットハッチとして、支払うべき代償とはいえるだろう。
2世代目で最もハードコアなグレードをお探しなら、2014年のR.S.275 トロフィーRが好適だ。オーリンズ・サスペンションが組まれた足まわりは完全にサーキット前提で、一般道では容赦ない。舗装の継ぎ接ぎを超えただけで、ドライバーは揺さぶられる。
リアシートが省かれた2シーターでもあり、少々やりすぎだと評する人もいる。だが、歴代で1番エキサイティングなホットハッチだといってもいい。
このR.S.275 トロフィーRも、ニュルブルクリンクでラップレコードを更新している。8分切りの7分54秒36で周回し、当時の量産FFモデルとして最速に躍り出た。ちなみに英国へは30台だけが導入されており、現在でも高価で取引されている。
ドライバーを魅了する走りのホットハッチ
2016年にルノー・メガーヌは4代目へモデルチェンジし、2世代目のR.S.も終了。後世へフレンチ・スポーツマインドのバトンをつないだ。
ドイツ・ニュルブルクリンクで2度もラップレコードを記録し、サーキットだけでなく公道でもドライバーを魅了する走りを提供したメガーヌ R.S.。2世代目の仕上がりは素晴らしかった。
より実用性に優れるホットハッチも、乗り心地が快適なライバルも存在する。だが中古車価格を踏まえると、メガーヌ R.S.の速さには唸らざるを得ない。運転で得られる充足感も、大きな魅力だろう。
新車時代のAUTOCARの評価は
カップ・シャシー仕様でも、先代のR26以上に熟成が進んでいる。シャープなエッジが丸められたホットハッチといえる。煮詰められた仕上がりに、熱い魂が鳴りを潜めたと勘違いするかもしれないが、それは間違い。
カーブの連続する理想的な道へ足を伸ばせば、ドライバーとの一体感に長け、操る自信が湧き出る素晴らしい実像が現れる。サーキットなら、なお一層。才能溢れるモデルだ。(2010年1月13日)
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
タイミングベルト交換は、6年毎か12万km毎の指定。一緒にウオーターポンプの交換も済ませたい。ルノーは、R.S.に全合成で5W-40のエンジンオイルを指定している。ロッカーカバーやサンプカバーから、オイル漏れがないか確かめる。
トランスミッション
内部のベアリングからの異音に注意。修理は高く付く。走行距離が12万kmを超えるような例では、デュアルマス・フライホイールからカチカチと音が出る場合がある。徐々に悪化していくので、放置しない方が良いだろう。
サスペンション
アンチロールバーのドロップリンクや、ラバー製トップマウント・ブッシュの劣化状態を確認する。ドロップリンクがヘタると、コツコツと振動音が出るのでわかりやすい。
ロワー・スイベルジョイント部分のブッシュも劣化する。ステアリングホイールを切ると、ノック音が出るようになる。サスペンションの下側が加速時に広がり、ブレーキング時に狭まるため、走りが見違えて悪くなる。
インテリア
乗員空間と荷室のフロアが湿っていないか調べる。スポーツシートはサイドボルスターが避けやすい。エンジンの始動時に、警告灯が1度灯って消えることを確かめる。
ブレーキとタイヤ
ブレーキディスクのエッジが過度に飛び出ていないか確かめる。ステアリングホイールを切り、タイヤの内側が偏摩耗していないか観察する。タイヤは有名ブランドのものが好ましい。
ボディ
フロントガラス付け根のドレイン部分が詰まっていないか確かめる。リアタイヤ側のフェンダーは、小石の飛び傷が付きやすい。腐食が始まる前にタッチアップしておきたい。
専門家の意見を聞いてみる
マシュー・アシュモア氏:セレクト・モータースポーツ社代表
「ルノーのR.S.魂を宿した素晴らしい仕上りです。生々しいドライビング体験を残しつつ、普段使いにも困らない快適性と低回転域でのトルクを備えています。ホットハッチとして、日常的な乗りやすさは魅力といえますよね」
「軽いモディファイを加えれば、サーキットでも見事な走りを披露します。殆どノーマルの状態から、本気のレース仕様まで多くの例を手掛けてきたので、自信を持っていえます」
「タイミングベルト交換には手間が掛かるので、経験のあるガレージへ持ち込んだ方が良いでしょう。タイミングは、パワー不足や燃費の悪化などにも影響を与えます」
知っておくべきこと
2012年のフェイスリフトで、標準のメガーヌR.S.は265psへパワーアップしている。ただし、この馬力はESPボタンを押した時のみ有効。通常は250psへ制限されている。
ESPボタンを長押しすると、スタビリティ・コントロールを切れる。フェイスリフト後の2世代目を検討している場合は、予め機能するか確かめたい。
F1ファンのために、ルノー・エンジンのレッドブル・マシンがシーズンタイトルを獲得した2012年にちなみ、レッドブルRB8リミテッドエディションというメガーヌ R.S.が投入されている。数は少ないが、探してみる価値はある。
英国ではいくら払うべき?
6000ポンド(約96万円)~7999ポンド(約127万円)
初期の250psのメガーヌ R.S.を英国では探せる価格帯。走行距離は16万kmと長く、個人売買が中心。状態は疑わしい。
8000ポンド(約128万円)~1万999ポンド(約175万円)
状態の良いメガーヌ R.S.250が含まれれてくる。公道用のカップシャシーだけでなく、本気のカップカーも英国では売買されている。走行距離は8万km前後へ短くなる。
1万1000ポンド(約176万円)~1万5999ポンド(約255万円)
R.S.265が中心になるが、走行距離が短いR.S.250も狙える価格帯。ルノーを得意とするガレージが販売する例が増える。
1万6000ポンド(約256万円)~1万9999ポンド(約319万円)
R.S.265 トロフィーやR.S.275 カップSなど、特に速いメガーヌが含まれてくる。
2万ポンド(約320万円)以上
状態の良いR.S.275 トロフィーRならこの価格帯から。
英国で掘り出し物を発見
ルノー・メガーヌ R.S.275 カップS 登録:2015年 走行距離:2万7300km 価格:1万8995ポンド(約304万円)
R.S.275 トロフィーRより公道寄りにチューニングされたグレードが、R.S.275 カップS。オプション扱いだった、オーリンズのサスペンションとアクラポビッチのマフラーが装備されている。英国での販売数は30台程度で、珍しい存在といえる。
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