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【特集「やっぱりドイツ車が好き!」(6)】巧妙なるシナリオ作り。楽しむ世界観の多様性【ポルシェ 911ダカール/911 GT3 RS】

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【特集「やっぱりドイツ車が好き!」(6)】巧妙なるシナリオ作り。楽しむ世界観の多様性【ポルシェ 911ダカール/911 GT3 RS】

ドイツ車でスポーツカーブランドを代表する存在といえば、ポルシェだ。現在では幅広いモデルバリエーションを誇り、そのどれもが高い人気を誇っている。その本流たる2ドアスポーツカーの911も、すでに多くのラインナップが揃う。今回はその最新車種、強烈な個性を備えた栄誉ある2モデルを取り上げる。

抜群のマーケティング力であらゆる路面をこなす
情感溢れるプロポーションや高い躍動感など、まずは見た目が放つ印象こそが「感性に訴える最大のポイント」というライバルは多い。それに比べると、ある面で素っ気なくも受け取れるエクステリアの仕上がりやちょっぴりビジネスライクな香りが漂うインテリアデザインが特徴・・・と受け取れそうなの、もこのPORSCHEというブランドの作品。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

一方で、だからこそ走り始めた瞬間が思いの他に感動的であり、「走ってみなければその本当の良さは理解できない」というのが、自身の経験に基づくポルシェ車像でもある。

そして、今さらながら改めてそうした思いを強くさせられたのが、今や数えきれないほどまでの大ファミリー化を遂げた、最新911バリエーションに加わった「両極端の2台」とも言いたくなる今回のモデルたちだ。

テスト走行を繰り返す姿がスクープされ、当初はそこに「サファリ」というサブネームを冠されることが確実視されながら、商標の問題からという理由で著名な競技にちなむ異なる名称で世に現れたのが「911ダカール」。

かつての遺産を掘り起こして車名へと用いるポルシェのマーケティングの巧みさとそこに使える引き出しの多さには感心するばかりだが、いざ登場するとそんなネーミングはまさに言い得て妙としか思えなくなるのがこのモデルでもある。

低く構えるプロポーションこそがスポーツカーのひとつの要件という常識を覆すかのように、高い耐カット性を持たせるなど本格的なオフロード走行も視野に入れて開発されたピレリ製の専用タイヤを履く足まわりは、通常の911カレラの50mm増しとなる全高を採用。

さらに150km/hまでなら標準装備される前後のリフトシステムが30 mmの高さアップを可能とするので、そのリフトアップ量はトータルで80 mmにもなる計算だ。

そんなスペックからも。このモデルのオフロードスポーツカーとしての本気度が伝わってくる。だが、さらに走行プログラムには、通常の911では見られないモードが設定されている。

砂丘や岩盤路への適合が図られた「オフロード」、そして砂利道や泥濘地、湿った牧草地などへの適合が図られた「ラリー」、さらにローンチコントロールにも砂利道のような路面でも最大加速が得られるモードを特別に用意するなど、抜け目がない。

GTSグレード譲りの、最大で480psと570Nmという3Lフラット6ツインターボエンジンは、8速PDKを介して四輪を駆動。リアアクスルステアリングやアクティブロールスタビライザーも標準装備され、あらゆる路面での最大限のトラクションとダイナミックな走行が標榜される。

圧倒的と言える存在感。単なる異端児ではない
実際に走り始めてみると、数々のヘビーデューティな装備や機能が加えられながら、まずは通常のカレラとさほど変わることのない軽やかな動力性能が印象的だ。

歴代911の中にあっても、今まで目にしたことのないリフトアップされた独特のスタンスが目を奪う。1984年のパリダカールラリー優勝車のルックスを再現した「ラリーデザインパッケージ」のオプションは、911シリーズ中でも圧倒的と言える強い存在感を放つ。

しかし、そうした見た目とは裏腹に、前端部にGT3同様のエアアウトレットが設けられたCFRP製フードや同素材による軽量リアスポイラーなど、その車両重量は同じPDK仕様のカレラ4と比べてわずかに10 kg
増でしかない。

さらにシェル全体がやはりCFRP製のフルバケットシートや軽量バッテリー、軽量ガラス等々が採用されたことで、これが前述した軽やかさの演出に繋がっていたことは間違いないだろう。

荒れた路面に差し掛かった際の乗り味は、カレラシリーズに対して明確に硬め。また、ワインディングロードへと差し掛かれば、横Gに対してより早いタイミングでスキール音が耳に届くことも確認できたが、これらはリフトアップによる影響というよりも装着タイヤの特性に起因する、という印象を受けた。

派手なブロックパターンを持つゆえ、目にした瞬間に覚悟したパターンノイズが、思いのほか穏やかで気に障らないものであったのは嬉しい誤算であった。

走りのペースにかかわらず、ロールやピッチング挙動に一切の違和感をもたらさないフットワークのチューニングレベルの高さを見ても、新たな「ファミリー」に加わるに相応しい。

改めてこのモデルが話題獲得のための“異端児”に留まらず、熟成された完成度の持ち主であることを納得させられることとなった。

▶▶▶次ページ:究極のストリート仕様で最高のパフォーマンスを追求

究極のストリート仕様で最高のパフォーマンスを追求
そんなダカールに対してある意味、正反対の究極に位置する911と言えそうなのが「レーストラックでの最高のパフォーマンス実現のため妥協を許さずに設計された」とポルシェ自らがそのキャラクターを紹介するGT3 RSだ。

言わばストリートも合法的に走行可能な適合を図った上で生み出されたレーシングモデルということは、見た目を憚(はばか)らず随所に採用されたボディの空力デザインに現れている。

アクチュエーターによるウイング部の可動機構も盛り込まれたスワンネック型の巨大なリアスポイラーを象徴に、フロントフェンダー上のルーバー開口部や前後輪後方のサイドブレードなど、まさに規格外と思える大胆な手法でエアロダイナミクスの改善が試みられている。

大型センターシングルラジエーターにいたっては、ふたつのサイドラジエーターと小型のセンターラジエーターを用いる通常方式と比較してダウンフォースとブレーキ冷却の点でメリットがある、という理由から、フロントのトランクスペースを潰してまで採用されたものだ。

さらに、これまでの“RS”を名乗るモデルの方向性と同じく、驚異的とも言えるレベルの軽量化が図られた。ルーフやフロントリッドなどの大型外板をはじめリアウイング、ホイールアーチベント形状に合わせたドア、シートなど広範な部位にCFRPを活用。標準採用のセンターロック式の軽量鍛造ホイールも、それに貢献している。

予想を超える広がりが示す、ドイツ車の新たなる方向性
GT3 RSが秘める走りのポテンシャルを一般公道上ですべて引き出すことなど「到底困難」を承知で走り始めると、まずはそのフットワークのテイストがすこぶる硬派である一方、それがまったく不快感には繋がらないことに驚かされた。

その理由として、路面情報を濃密に伝えつつもそこに無駄な動きは一切伴わず、強固なボディが振動の残留を許さないことが挙げられそうだ。

フロントに6ピストン式、リアに4ピストン式のモノブロックアルミキャリパーを擁するというスペックから予想したよりも、ブレーキが発する立ち上がり減速Gが弱いことに当初は戸惑いを覚える。

だが、きちんと踏力を与えればそれに応えて強烈な効きを示すことに即座に気が付いた。こうした2ペダルモデルで、コンマ何秒を削るサーキットドライビングに、左足ブレーキはマストのテクニックだろう。

それにしても強烈だったのは、走りのペースが高まるにつれて顕著になってくる、ハンドル操作に対してのターンイン挙動のシャープさである。

これが、専用にチューニングされたリアアクスルステアリングやダブルウイッシュボーン式フロントサスペンションの成せる技なのかどうかは定かではないものの、ベース車両である通常のGT3以上の切れ味を感じられた、というのは確かな印象だ。

故郷がサーキット、という事柄をこれまで以上にストレートに演じるGT3 RSの仕上がりは、ある面「予想したとおり」と言える一方、すでにワイドであった911ならではの世界観に、さらなる予想を超える広がりをもたらしたのが、ダカールというモデルだ。

それらは、これまで「質実剛健」という言葉で紹介されることの多かったドイツ車の価値観に、また今後の新たな方向への展開を期待させるに十分なものと、そう紹介できるのではないだろうか。(文:河村康彦/写真:永元秀和)

試乗車 主要諸元
ポルシェ911 GT3 RS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4572×1900×1322mm
●ホイールベース:2457mm
●車両重量:1450kg
●エンジン:水平対向6DOHC
●排気量:3996cc
●最高出力:386kW(525ps)/8500rpm
●最大トルク:465Nm/6300rpm
●燃料・タンク容量:プレミアム・64L
●トランスミッション:7速PDK
●駆動方式:RR
●タイヤサイズ:前 275/30ZR20・後 335/30ZR21
●車両価格:3134万0000円

ポルシェ 911ダカール 主要諸元
●全長×全幅×全高:4530×1864(ミラー含む2033)×1338mm
●ホイールベース:2450mm
●空車重量(DIN):1605kg
●エンジン:対6DOHCツインターボ
●総排気量:2981cc
●最高出力:353kW(480ps)/6500rpm
●最大トルク:570Nm/2300-5000rpm
●燃料・タンク容量:プレミアム・67L
●トランスミッション:8速DCT(PDK)
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:前245/45R19、後295/40R20
●車両価格:3099万円<限定世界2500台>

[ アルバム : やっぱりドイツ車が好き!(6) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • ネイトン
    とんでもない2車だなw

    ポルシェに詳しくない警察官に止められそうだw
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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