現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【これトラック? 電車!??】激変する物流の姿 ドイツ最新電動技術に仰天

ここから本文です

【これトラック? 電車!??】激変する物流の姿 ドイツ最新電動技術に仰天

掲載 更新
【これトラック? 電車!??】激変する物流の姿 ドイツ最新電動技術に仰天

 担当がドイツ・ニュルブルクリンクへ取材に訪れた時に「アウトバーンを電車みたいなトラックが走るんだぜ」と現地のドイツ人に聞いた。

 いったいなんのこっちゃ、と思って調べてみたらトレーラーヘッドの上に電車のようなパンタグラフがあるじゃないですか!! 世界屈指の高速道路「アウトバーン」でいったい何が始まっているのか?

なぜ自動車メーカーは開発車をサーキットで走らせるのか?

 エコだからってトラックを電車にしちゃいました、みたいな話なのだろうか。ドイツの技術が凄いのは知っているけどそれにしては発想が大胆すぎやしないか??

 ヨーロッパの最先端技術を駆使して登場したという架線トラック道路「eハイウェイ」。ドイツ在住のジャーナリスト、池ノ内みどり氏がその全貌をお伝えします。

文:池ノ内みどり(Midori Ikenouchi)/写真:Hessen Mobil

■架線集電&内燃機関で走る次世代ハイブリッドトラック

 ドイツで初の試みとなるeハイウェイシステムのテストドライブが、ヘッセン州フランクフルト近郊のアウトバーンA5線上のランゲン/メルフェルデンとワイターシュタットのジャンクション間の上下線併せて10kmに渡るテスト区間において始動した。

 “eハイウェイ”とは、果たして一体何なのだろうか? CO2削減及び、エネルギー環境保護の観点等から、大型トラックに架線パンタグラフによる電力供給システムを採用した輸送システムの試験モデルを指す。

アウトバーンの1車線を封鎖して「eハイウェイ」のレーンが設けられた。専用車線ではなく混在車線になっている。不思議な光景だ

 簡潔に表すと、トラックの屋根部分にパンタグラフ(編註:電車の屋根上にあるひし形、もしくは“くの字“の集電装置)が装着され、電力が道路上の架線を伝い電気モーターとトラックのバッテリーに通電して走行する。

 運転中にバッテリーの充電もする事ができるといい、いうなれば電車と同じようなシステムなのだ。

 ただ、唯一電車と違う点は、架線がない区間や追い越し等をしたい場合には、自動、または運転手の操作によってパンタグラフが屋根に格納されること。

 そしてバッテリーまたはトラック本来の内燃機関へとスイッチし、電気とディーゼルエンジンの両方を駆動できる。つまりハイブリットエンジンを搭載していることになる。

ヘッセン州のeハイウェイプロジェクトは2022年までを予定しており、それに関する予算は約1500万ユーロ(2019年8月20日現在、約17億7000万円)、更にデータ収集や分析に1500万ユーロが必要とされる。

 パンタグラフを通しての車両走行時は最高速度90km/hを誇り、80%を超えるエネルギー効率化を実現させるという。

 エネルギー消費は従来のディーゼルエンジンのトラックと比較すると半分に、内燃機関に比べて2倍の効率化を見込めるとの予想だ。

 テスト開始すぐの1000kmの走行では、既に約10%のディーゼル燃料の節約が実証されたとの事で、今後3年にわたるテスト期間のデータ収集と分析結果に関心が高まる。

■15kmの架線走行で50km走行分のバッテリーを充電する

 このヘッセン州のテスト区間の一日の平均走行台数は約13万5千台で、その内の約1万4千台をトラックが占める。

 北はスウェーデン、東はロシア、南はスペイン、ポルトガル、ギリシャやトルコまで、広いヨーロッパ大陸の物流の主な輸送手段はトラックでの陸送に頼っているのが現状だ。

 VWグループの調査機関によると、それに伴いトラック輸送から排出されているCO2は年間5600万トンにものぼる。

当然ながら既存のトラックをパンタグラフ仕様に改造する事は非常に難しく、今後このeハイウェイのシステムが採用されるとなった場合は、専用のトラックを購入する必要が出てきそうだ

 2050年には世界中の貨物の輸送量が200%増加すると予想され、それに付随して輩出されるCO2の増加も著しく上るだろう。  

 トラック本体をそのまま鉄道に、もしくは荷台部分のみを載せての列車貨物輸送を行うシステムも定番となっているヨーロッパではあるが、それだけでは問題が全て解決されている訳ではないのが現状だ。

 この非常に高額な架電パンタグラフのeハイウェイのシステムを新規に採用するよりは、鉄道網の拡大や整備に強化し、そちらに投資すべきとの声も上がっているのも実情だ。

コストを考えると手放しに称賛もできないのがこのeハイウェイ。鉄道と同じで架線もすり減ることは間違いなく、今後はコストとメリットを天秤にかけることになる


 いずれにしても3年に渡るeハイウェイのテストプログラムは開始したばかり。様々な意見や見解が寄せられるのは当然の事で、多額の税金が費やされての実走試験となるだけに、国民の関心が高まるのは当然の事だろう。

 スカニアはドイツで行われる3つのテスト区間にそれぞれ5台のパンタグラフ付きのスカニアR450を用意し、実際に地元の運送会社がそれらを実用運用しながらの試験となる。

 ドイツの試験開始以前の2016年からスウェーデン国内の高速道路上で行われたスカニアとシーメンスの2年間のテストでは、50km走行する為の充電に僅か15kmのパンタグラフ走行で可能というデータ結果を出した事もある。

 もしも、将来的にドイツがこのシステムを採用した場合には、全てのドイツのアウトバーンの区間で架電パンタグラフを建設する必要はなく、区間設置である程度の蓄電が可能だとの見解を示している。

 トロリーバスや路面電車に相当するコントロールシステムによって24時間体制で監視されている。

 万が一、電気系統の不具合が起きた場合や事故が起きた場合には、自動・手動で即座に送電のシャットダウン等が行えるように、安全には充分に配慮されている。

 ただ、電気架線の突如の不具合や不慮の追突事故等が起きる場合も想定して、消防や救急隊は特殊技能講習を実際にテストコース上で行った。

パンタグラフのシュー(架線と接する摺動板)は横に長く、パンタグラフの基台も電車用のものを横にふたつ並べた形になっている。架線からパンタグラフが離れてしまう可能性も低くなる

 また地元警察署、高速道路メンテナンス会社、システム復旧に携わる各社は、個別で更に安全・事故不具合の対策講習会を受講するなど、事前準備は十分に整えてのテスト開始のようだ。
 
 ヘッセン州に続き、シュレッスヴィッヒ・ホルシュタイン州のアウトバーンA1号線のテストが6月に始まり、来年にはバーデン・ヴュルテンブルグ州では国道でのテストが開始される予定だ。

【テスト車両:スカニアR450 スペック】
・ハイブリットドライブ:リチウムイオンバッテリー(18.5kWH 使用可能エネルギー7.4kWH)
・電気モーター:130kW(177馬力)、1050Nm
・バッテリーモードでの走行距離:約10~15km
・追加機能:パワーブーストモード(例:始動時にディーゼルエンジンサポート)、回生ブレーキ、
・ディーゼルエンジン:450馬力、13L 直立6気筒エンジン
・スカニアオプティクルーズ(オートマチックトランスミッション)
・eハイウェイの架線を通して670ボルトを車両に取得可能

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

頭文字Dの次なる遠征先は豊田市駅前? ラリージャパン2024はイベント盛りだくさん/WRC写真日記
頭文字Dの次なる遠征先は豊田市駅前? ラリージャパン2024はイベント盛りだくさん/WRC写真日記
AUTOSPORT web
優れたラリードライバーならF1でもきっと戦える! 8度のWRC王者オジェは確信「ファンも見たいと思っているはず」
優れたラリードライバーならF1でもきっと戦える! 8度のWRC王者オジェは確信「ファンも見たいと思っているはず」
motorsport.com 日本版
新車150万円台で「5速MT」あり! イチバン安い「普通乗用車」どんなモデル? 「国産ダントツ安価」でも装備は必要十分! めちゃ“リーズナブル”な「トヨタ車」とは
新車150万円台で「5速MT」あり! イチバン安い「普通乗用車」どんなモデル? 「国産ダントツ安価」でも装備は必要十分! めちゃ“リーズナブル”な「トヨタ車」とは
くるまのニュース
“熊本~東京1300km” 電気自動車でも快適に移動できる「裏ワザ」とは? 新型「タイカン クロスツーリスモ」で体感! ポルシェらしい走りと遊び心に触れる旅
“熊本~東京1300km” 電気自動車でも快適に移動できる「裏ワザ」とは? 新型「タイカン クロスツーリスモ」で体感! ポルシェらしい走りと遊び心に触れる旅
VAGUE
[15秒でニュース]メルセデスAMG、初の電動SUVを市販化へ
[15秒でニュース]メルセデスAMG、初の電動SUVを市販化へ
レスポンス
軽自動車の6MT!! 2020年登場ホンダ[N-ONE RS]の中古ってどうなん
軽自動車の6MT!! 2020年登場ホンダ[N-ONE RS]の中古ってどうなん
ベストカーWeb
車両火災対策で「消火器」を積むなら「種類」に注意! 場合によっては人体に有害なものも存在する!!
車両火災対策で「消火器」を積むなら「種類」に注意! 場合によっては人体に有害なものも存在する!!
WEB CARTOP
エンツォフェラーリへ通じる「DNA」 マセラティMC20 長期テスト(2) 車重を測ったら1710kg
エンツォフェラーリへ通じる「DNA」 マセラティMC20 長期テスト(2) 車重を測ったら1710kg
AUTOCAR JAPAN
アプリリアの新型スポーツバイク『RS 457』、日本上陸 85万8000円
アプリリアの新型スポーツバイク『RS 457』、日本上陸 85万8000円
レスポンス
100kg軽い車重580kgのベーシック軽[新型アルト]が2026年に登場!? 軽量化と48Vスーパーエネチャージで勝負!!! 燃費は30km/L到達か!?
100kg軽い車重580kgのベーシック軽[新型アルト]が2026年に登場!? 軽量化と48Vスーパーエネチャージで勝負!!! 燃費は30km/L到達か!?
ベストカーWeb
レクサス新型「小型スポーツカー」がスゴい! “テンロクターボ”×初の6速MTを搭載! 最小SUV「LBX MORIZO RR」どんなモデル?
レクサス新型「小型スポーツカー」がスゴい! “テンロクターボ”×初の6速MTを搭載! 最小SUV「LBX MORIZO RR」どんなモデル?
くるまのニュース
ルーミーって…なんでこんなに売れてるの? どこがいいの???
ルーミーって…なんでこんなに売れてるの? どこがいいの???
ベストカーWeb
間違えると最悪車両火災の原因に! クルマのヒューズが切れたら「同色=同数値」のものに交換が必須!!
間違えると最悪車両火災の原因に! クルマのヒューズが切れたら「同色=同数値」のものに交換が必須!!
WEB CARTOP
トヨタWRC代表、勝田貴元にいよいよ“攻撃命令”。同点で並ぶヒョンデとのメーカー対決に向けて「攻めに転じる時がやってきた」
トヨタWRC代表、勝田貴元にいよいよ“攻撃命令”。同点で並ぶヒョンデとのメーカー対決に向けて「攻めに転じる時がやってきた」
motorsport.com 日本版
ローソン、ラスベガス予選はQ2敗退15番手「大きくスライドしてしまった。まあそれがなくてもQ3は無理だったけど……」
ローソン、ラスベガス予選はQ2敗退15番手「大きくスライドしてしまった。まあそれがなくてもQ3は無理だったけど……」
motorsport.com 日本版
新東名「最後の区間」どこまでできた? 過去最大規模の「トンネル湧水」発生も…どんどん造ってます!
新東名「最後の区間」どこまでできた? 過去最大規模の「トンネル湧水」発生も…どんどん造ってます!
乗りものニュース
70年代の“GTカー”が令和に復活!? 限定100台のミツオカ「M55ゼロエディション」ついに登場
70年代の“GTカー”が令和に復活!? 限定100台のミツオカ「M55ゼロエディション」ついに登場
VAGUE
オーナーは桐島ローランドさん 葉山町にオープンした新スポット『Felicity Cafe』とは
オーナーは桐島ローランドさん 葉山町にオープンした新スポット『Felicity Cafe』とは
バイクのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村