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288キロの高速テストが可能な世界でも指折りの巨大風洞施設【ホンダのレース開発最前線/HRC内部公開4】

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288キロの高速テストが可能な世界でも指折りの巨大風洞施設【ホンダのレース開発最前線/HRC内部公開4】

 今年4月にホンダF1を始めとした四輪開発部門がHRC(株式会社ホンダ・レーシング)に今年の4月の意向して2輪モータースポーツ部門と統一されて約5カ月経った8月頭、これまで秘匿とされた研究開発拠点HRC Sakuraがメディアに公開された。F1パワーユニット(PU)の研究開発に製造組立、そして国内四輪モータースポーツの最高峰、スーパーGT500クラスのNSX-GTの開発の一部が明らかになった。HRCの内部を、全4回に渡ってお届けする。

【第1回:F1パワーユニット/エンジン組立】二人三脚で手組で組立。CT検査で事前トラブルを回避

世界トップクラスの設備。新世代ハードと独自改良を重ねたドライブシミュレーション技術【ホンダのレース開発最前線/HRC内部公開3】

【第2回:RVテストベンチ、ミッションルーム】レース現場への最後の砦、現場をつなぐ司令室

【第3回:ドライブシミュレーター室】新世代ハードと独自改良を重ね、NSX-GT、CIVIC TYPE Rの開発で活躍

 最終回の第4回は、近年のマシンパフォーマンスでますます重要なファクターになっているダウンフォース獲得に、ドラッグ低減などマシンの空力開発を担う、風洞について。

 HRC Sakuraの通称『さくら風洞』は自動車用としては世界最大クラスの規模と設備を誇る。100パーセントモデル、いわゆる実車でのテストが可能で、1(シングル)ベルト(ムービングベルト)により通常のOpen Jet形態では最高速200km/h、左右に移動式のウォールを寄せたアダプティブ・ウォール・システムを採用すれば、288km/hまでの高速テストが行うことができる。さらにターンテーブルの可動により、左右10度の角度調節も可能。ヨー角をつけて、コーナリングを想定した空力もテスト行うことができる。

 プレナムと呼ばれる気流室内に設置されたマシンには前方から風を流し、風を受けたマシンのダウンフォース(荷重)はムービングベルト下の計測器、ドラッグ(空気抵抗)はタイヤに連結するポスト(支柱)の計測器で測定される。そして、計測されたデータは圧力分布状況としてモニターで可視化され、コントロールルームの空力エンジニアが分析を行う。

 ホンダとしては、栃木にある四輪事業本部ものづくりセンターにも2基の風洞施設があるが、こちらは風切り音開発や燃費効率を目的とした量産車開発用。HRC Sakuraの『さくら風洞』は2009年から稼働し、量産車からレース車両まで幅広く使用することができる。

 HRC Sakuraの空力開発としては、この『さくら風洞』を使用した風洞テストと、コンピューター上で空力を計算できるCFD(Computational Fluid Dynamics/流体力学)が合わさって開発が進められる。CFDによってデザインや形状を可視化して選定し、それから実際に製作したものをさくら風洞でテスト、そこで測定された数値を再びCFDで確認することによって、空気の流れを理解するというサイクルで、空力性能の向上を開発が進められる。近年ではスーパーGTでの車両開発、今年デビューしたNSX-GT タイプSに加え、その以前には市販車のNSXタイプSの空力開発がこのさくら風洞で行われたという。

 現在は2023年のスーパーGTに向けた空力パーツの開発にさくら風洞は使用されている。現行のGT500クラス規定では、空力開発が認められているのはフロントバンパー左右のカナード近辺の『フリックボックス』と、ドア下部、サイドスカート部にあたる『ラテラルダクト(エレファントフット)』と、『ドアミラー』の3点のみ。

 その3箇所の変更による空力効率の変化が、現在のGT500のパフォーマンスに大きな影響を及ぼしているわけだが、今年の例で言うとCFD上で1000パターン(!)、実際にさくら風洞にかけてテストされた組み合わせは500パターンにも及んだという。つまり、現在のGT500 NSX-GTタイプSの空力は、1000分の1で選ばれた最適なモデルが採用されているというわけだ。

 今回のメディア取材会ではいわゆる風洞の中、プレナムと呼ばれる気流室にも入ることができた。巨大な風洞施設内の気流室だが、壁や天井に多くの吸音材が貼られているようで、驚くほど静かな空間だった。そこで実際にムービングベルトを稼働してテストが行われたが、風洞内の隅にいるだけでも空気の流れと開発の雰囲気を十分に感じることができた。

 レースでの風洞テストではシングルベルトが必要だが、この条件を備えている風洞施設は国内ではわずかで、世界的に見ても数が少ないという。現在はスーパーGTでの使用がメインになっているが、さくら風洞はもともとはF1マシンの空力開発も想定して作られた施設。この風洞施設に加え、RVベンチ、ドライブシミュレーターに、今回のメディア取材会では公開されなかったが、『8ポストリグ』と呼ばれるサスペンションまわりの開発、サスペンションのシミュレーションを行う施設もHRCの主な開発施設となる。

 この世界に誇れる最新設備を持ったHRCの施設をさらに活かせるような新たな車両開発は、今年四輪事業を組み込んだ新生HRCの将来を担う大きな柱となる。HRCブランドでどのような車両が今後生み出されるのか。現在のHRCのレース活動とともに注視したい。









【ホンダのレース開発最前線/HRC内部公開 終わり】

株式会社ホンダ・レーシング(HRC)
1982年9月に設立され、2輪のモータースポーツ活動を中心に数々の実績を重ね、今年2022年の4月に四輪部門HRD Sakuraも移行し、ホンダのモータースポーツ活動が集約された。レッドブル、アルファタウリに供給しているF1パワーユニットはHRCとしてレッドブル・パワートレインズに支援。F1は今季からPU開発が凍結され、製造と供給をHRCが担っている。国内ではスーパーGTのエンジン、車体開発、そしてスーパーフォーミュラのエンジン、そして将来的な車体開発、ドライバー育成を受けもつ。今年で40周年を迎える。


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みんなのコメント

8件
  • 過去にイギリスの施設まるごと、
    1ドルで売りましたね。
    今思えば悔しいですね。
  • デザイナー育てことに金使った方がいい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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