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型破りな冒険マシン! アリエル・ノマド 2でクリスマスツリーを運ぶ(1) 流暢な没入体験

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型破りな冒険マシン! アリエル・ノマド 2でクリスマスツリーを運ぶ(1) 流暢な没入体験

木が生えていない島へクリスマスツリーを

「マル島より西側、ダッチマンズキャップの西に、木のないティリー島があるんです」。これは、スコットランド・エジンバラの冒険家、イザベル・ワイリー・ハッチソン氏が1924年に出版した、自伝小説「ティリー島の冬」の冒頭にある一節だ。

【画像】型破りな冒険マシン! アリエル・ノマド 2 アトムとハイパーカー 先代のノマド Rも 全114枚

島を訪れたハッチソンは、1つの計画を実行した。「この島には、今まで木が1本も生えていませんでした。サンタクロースは、上陸できなかったはず。自分がしなければならなかったことは、クリスマスツリーをマル島から大急ぎで運ぶことでした」

冬には1か月ほど強風が続くティリー島へ、大きなクリスマスツリーを持ち込むことは、100年前には南の島へ雪だるまを届けることくらい大変だっただろう。しかし、ハッチソンは常識にとらわれない女性だった。

2024年には型破りな冒険マシン、アリエル・ノマド 2がある。海は渡れないが、全くの新開発といえ、乗りやすさが向上している。彼女へ思いを馳せ、ティリー島までクリスマスツリーを運んでみてはどうだろう。

中世の雰囲気が残るスコットランド・エジンバラ郊外で、昆虫のようなノマド 2は完全に浮いている。4点式ハーネスでバケットシートに身体を固定し、燃料ポンプのスイッチを入れてから、フォード由来の2.3L 4気筒デュラテック・ターボを目覚めさせた。

ノマド 2の一部になれるバケットシート

発進時のエンジン音は金属的。図太い排気音も重なる。最初の目的地は、スタート地点から10kmも離れていない。すでに腕は泥まみれ。クロスレシオの6速MTを操るレバーは、キビキビ動く。フロントタイヤは、手を伸ばせば届きそうな位置にある。

壁に蔦が絡んだカーロウリー城には、すぐに到着。ハッチソン家によって1852年に築城され、1889年生まれのイザベルも長く住んでいた。現在は高級なイベント会場として市民に利用されており、その日は結婚式のパーティが開かれていた。

今の管理人は彼女へ敬意を払い、地域に貢献した人へ毎年「イザベル賞」を与え称えている。古城の中には、冒険に関する本の他、写真や工芸品などが展示されている。自ずと、筆者も一層の敬意を抱いた。

次の目的地には、高速道路M9号線で。ヒーター付きのベストに、手袋とゴーグルで完全武装。フロントガラスがあるから、バイクのように風にさらされることはないが、エンジン音が背骨へ響いてくる。

バケットシートは座り心地が驚くほど良い。これのおかげで、ノマド 2の一部になれたような気分になる。晴れていれば、日常利用にも耐えるだろう。

シャシー剛性は、先代のノマドから6割以上強固になった。幅が235mmのオールテレーン・タイヤの感触が、パワーアシストを介さないステアリングホイールへ、煩わしくない程度に伝わる。

サイドミラーは後方を良く映すが、バックミラーの景色は、突き出たエアインテークが半分以上。防寒着を着込んだおかげで暖かく、意外と快適だ。

嗅覚でもドライバーを楽しませるノマド 2

M9号線を降り、一般道へ。左右にスコットランドの自然が広がる。ステアリングの反応はクイック。ダブルウイッシュボーンのサスペンションは、柔軟に路面へ追従する。

雨でぬかるんだ農場の敷地へ。カレドニアン・クリスマスツリー社を営む、アンナ・ブラック氏との約束がある。車重は715kgと軽いため、四輪駆動でなくても困らない。タイヤが目視できるから、カメラ映像で確認する必要もない。

毎年1万本ものクリスマスツリーが、ここから英国全土の園芸店へ出荷されているという。ノルドマン・モミ、ロッジポール・パイン、ノルウェー・スプルース、フレイザー・モミなど、実は多くの樹種がある。

この中で、ハッチソンがティリー島へ持ち込んだのは、ノルウェー・スプルース。一番美しい樹形のものを、広い植林地から時間をかけて選ぶことにした。

ノマド 2は、モミやスプルースが育つ森の中を進む。トラクションに不足はない。目が覚めるような、常緑樹の香りが鼻先へ直接流れてくる。運転へ没入できるマシンだが、嗅覚でもドライバーを楽しませてくれる。

高さ1.8mほどの1本に決め、ブラックから借りたノコギリで伐採。ノマド 2の助手席へくくった。きれいな三角形の先端が、パイプフレームから突き出ている。

鋭く反応するステアリングはリニアで狙い通り

ティリー島へ渡るフェリーは、スコットランドの西、オーバンという町から出ている。徐々に周囲は暗くなり、小雨が振り始める。約2時間、水浸しの道を走ることになった。

フロントガラスにはヒーターの風を当てられ、曇りとは無縁。トラクション・コントロールは7段階から選べるが、足取りは確かで、真ん中の設定でも不安感はない。しかしフロントは軽く、気を抜くと左右に進路が乱れがち。

アーン湖を巡る連続したカーブで、流暢な身のこなしを確かめる。鋭く反応するステアリングは、リニアで狙い通りだ。

今日のノマド 2には、1800ポンド(約35万円)のオプション、3モードECUが実装されている。最高出力は309psまで引き上げられるが、デフォルトの263psでも相当速い。

ブレーキはオプションのAPレーシング社製で、4ポッドキャリパーが組まれる。強力なうえに、制動力を調整しやすい。エンジンブレーキでも、効果的に速度を落とせる。

液晶モニターのメーターパネルと、赤いイグニッションボタンが眩しい。まだプロトタイプ段階で、調光機能は備わらないようだ。22時に、オーバンのホテルへ到着した。

翌朝7時に全長99mのフェリー、MVクランズマン号へ乗船。船内のカフェで朝食を取りつつ、マール海峡に登る朝日を雲の合間から拝む。イルカたちが、船を先導するように泳いでいる。

この続きは、アリエル・ノマド 2でクリスマスツリーを運ぶ(2)にて。

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