アマチュアにもチャンスがあるGT4
text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
【画像】ケイマンGT4と911のGT3 918も 全134枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
欧州を中心に盛んなGT4。10年ほど前は、GT3カテゴリーを補完するアマチュア向けのカテゴリーだったが、競争は激化。現在はGT4のマシンでも、当初のGT3マシン並みの速さを獲得している。
その気になれば、100万ポンド(1億3200万円)を、GT3へ投入することも簡単。例え努力を重ねても、結果は簡単にはついてこない。ラップタイムを0.2秒削ることは難しくても、タイヤバリアにクルマを突っ込ませることは、望まずして起き得る。
最新のGT3マシンの性能は、上がる一方。1980年代のグループCプロトタイプ・マシン並みのタイムで、難関のスパ・フランコルシャンを周回できるほど。
GT4の成長は止まらない。筆者は2019年にマクラーレン750S GT4をドライブし、スパ・フランコルシャンを走った。左コーナーのオー・ルージュを、230km/h以上のスピードですり抜けた。
参戦に必要な費用は、GT3よりはるかに少ない。クルマは空力面への依存割合が小さく、運転技術を高めるマシンとしても好適。GT3マシンと比べて、マシンの可能性を探ることも容易で、優れたドライバーは優れた速さを残せる。
つまり、アマチュアにも勝つチャンスが残されている。GT4は面白い。
今回筆者がステアリングを握るのは、ポルシェ718ケイマンGT4 クラブスポーツ。少しの才能と経験があれば、ミシュラン製のタイヤが温まり次第、高速域の満ち足りた時間を堪能できる。
レース用サスに426psのフラット6
かつてポルシェ968にもクラブスポーツというクルマがあったが、それとはまったくの別物。ロードカーに少し手を加えただけの、当時のクラブスポーツとは違う。
高度に手が加えられたレーシングカーだ。公道用のケイマンGT4とも、圧倒的な違いがある。信じられないようなスピードで周回できる。
エンジンルームに収まるのは、最新ではない、3.8Lのフラット6。最高出力は420psではなく、426psとわずかに高い。トランスミッションはダブルクラッチATのPDKだが、7速目がなく、6速仕様。
フロント・サスペンションはGT3カップカーのもので、レース用スプリングのフル調整式。ダンパーは収縮と伸長で別々に減衰力を変えられる。アンチロールバーもブレーキも、完璧なレース仕様だ。タイヤはレーシングスリックか、天気によってはウェットパターンも選べる。
インテリアは徹底的に剥がされている。ステアリングコラムと少しのスイッチが残され、ダッシュボードはケイマンのものだと形状が分かる程度。鮮明なコスワース製のデータロガー・システムが、メーターパネルに取り付けられている。
ここまで装備が除かれていたら、ケイマンGT4 クラブスポーツはかなり軽量に思える。でも、実際はそうでもない。
内蔵式のエアジャッキに溶接されたロールケージ、通信システムと消火器、レギュレーション上必要なリムーバブル・ルーフ、90Lの大きな燃料タンクなどを装備し、車重は1320kg。標準の公道用ケイマンGT4とほぼ同じ車重がある。
アマチュア・ドライバーの運転が前提
公道用のケイマンGT4と同じくらい、ケイマンGT4クラブスポーツは運転がしやすい。レースという環境でいえば。
コックピットの眺めは見慣れないし、スリックタイヤを履いたレーシングカーに乗っている、ということを理解すると、重圧感もある。でも基本的にGT4マシンは、アマチュア・ドライバーが運転する前提で作られている。
ロードカーに搭載される電子デバイスは、すべて残されている。経験が浅い人へも、間口は開かれている。
ちなみに、ケイマンGT4クラブスポーツと同じ金額で、ポルシェ911カップカーが買える。しかし両車の目指すところは異なる。
カップカーは、ABSやトラクションとスタビリティコントロールが付かない。定期的な管理が必要で、限界領域での操縦性を高めたスプリントレース用タイヤを履く。GT4カテゴリーとは異なる、より上級のアプローチが必要となる。
GT4クラブスポーツは、基本的な特性がロードカーと極めて近い。ドライバーに求められるのは、自身の技術を高め広げること。公道用モデルに求められるものとは、別次元の水準にまで。
乗り心地は意外にも悪くない。足元にも頭上にも充分な空間があり、ステアリングコラムの調整方法は、乗り慣れたクルマと同じ。エンジンが目覚めると、いつものサウンドが聞こえてくる。
コース上へクルマを進める。ドライバーが試されるフィールドだ。
タイヤは温度が上がらない限り、ちゃんと機能しない。コースインした直後から、ハードな運転で温める必要がある。ここで助けてくれるのが、電子デバイスだ。
ブレーキングとコーナリングを融合させる
アウトラップのストレートで、右足でアクセルペダルを踏んだまま、左足でブレーキペダルを踏む。ブレーキの熱で、タイヤを加熱する。
熱が入れば、準備完了。ストレートは爽快なだけではない。ブレーキに慣れる必要のある、奥深い領域でもある。
レースカー基準でいえば、さほどダウンフォースの大きくないケイマンGT4クラブスポーツ。減速と同時に少なくなるダウンフォースに合わせて、ブレーキペダルを踏む力を調整する心配は、さほどいらない。
普段ブレーキを踏むべきだと感じるポイントを過ぎて、3秒ほど我慢してからペダルを蹴飛ばす。その操作は難しい。ABSの介入は少なく、甲高い悲鳴が響く。
減速したら、コーナリングスピード。非現実的な速度に思えるが、息を呑んでぐっと堪える。ブレーキングとコーナリングを身につけ、融合させ、自分のものにするまでは、速くは走れない。それから、アクセルペダルを蹴飛ばすタイミングだ。
ラップタイムを縮める鍵は、コーナー頂点、エイペックスへの侵入。適切なタイミングでブレーキペダルを放し、負荷を解き、コーナリングフォースを構築する。タイヤのグリップ力を、縦方向にも横方向にも、可能な限り限界へ近づける。
シルバーストーンのような高速サーキットでは、リズムの確立が必要。クルマが飛ぶように走り始めたら、のめり込み、ピットへは戻りたくなくなるだろう。
オフスロットル・オーバーステアの修正に時間がかかってしまった。でも、手を焼いたのは1つのコーナーのみ。さらに100psくらい上乗せしても、クルマは許容できそうだ。
内容を考えれば高くはない価格
気になるのは価格。公道用のケイマンGT4は、7万5000ポンド(990万円)ほどなのに対し、GT4クラブスポーツは13万1100ポンド(1730万円)。どちらも税別だが、2倍近い。
それでも、本気でGT4カテゴリーにチャレンジしたい人にとっては、魅力的な提案だと思う。ポルシェというブランドは、ほかのクルマよりスポンサーを集めるのにも有利だし、メカニズムも堅牢で信頼性は高い。
コンクリート・バリアへぶつけなければ、比較的安価にレースへ参加できるだろう。多くの学習が必要だったマクラーレン570S GT4と違って、ケイマンGT4クラブスポーツは比較的シンプル。ペースを速めることも難しくはない。
英国なら、ポルシェ・スプリント・チャレンジGBと呼ばれる、ケイマンGT4クラブスポーツのワンメイクレースが用意されている。自身の才能と技術を、表舞台で試すことも可能だ。
もちろん、趣味のサーキット用マシンとして所有することもできる。謙虚な718ケイマンで、ハイパーカーをブチ抜くことだって、ドライバー次第でできなくはない。そう考えれば、確かに高くはないのだった。
ポルシェ718ケイマンGT4クラブスポーツ(英国仕様)のスペック
価格:13万1100ポンド(1730万円/税別)
全長:4456mm
全幅:1778mm
全高:1238mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:1320kg
パワートレイン:水平対向6気筒3800cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:426ps/7500rpm
最大トルク:43.1kg-m/6600rpm
ギアボックス:6速デュアルクラッチ・オートマティック
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