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かつて「音圧」でバトった時代があった! 音質よりも迫力勝負のクルマの「外向きオーディオ」という謎文化

掲載 更新 19
かつて「音圧」でバトった時代があった! 音質よりも迫力勝負のクルマの「外向きオーディオ」という謎文化

「外向き」オーディオは音質よりも音圧をとことん追求

 昨今のカーオーディオはスマホに保存した曲をナビなどにブルートゥースで接続して楽しんだり、インターネット経由のサブスクで音楽を楽しむなど、ライトなリスニングスタイルが主流だ。一方ではコクピットのスピーカーを純正から上質なモデルに交換したり、音の調整機能を備えたDSP(デジタルシグナルプロセッサー)を導入して、良い音を楽しむオーディオマニアも数多く存在する。いずれも快適なドライブミュージックを楽しむためのハイファイサウンドが基本だ。

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 しかし今では少なくなってしまったカーオーディオのジャンルに「音圧」や「外向き」といったクルマ独自のオーディオ文化があったのをご存じだろうか? ’90年代中期から盛り上がりを見せたのがとにかくデカイ音を再生することを目的とした、ド派手で迫力満点のオーディオカスタムのカテゴリーがそれだ。

迫力の低音サウンドを放つ音圧マシンがそこかしこで唸りを上げていた

 元々は北米をはじめ欧州などでも人気のあったジャンルで、大口径のサブウファーをインストールして、大出力のパワーアンプでドライブするという力勝負のオーディオカスタムだ。この文化が日本に上陸すると、瞬く間に全国のカスタムファンやオーディオファンに受け入れられ、多くの音圧仕様のオーディオカーが作られることになる。

 そもそも低音は周波数的に遠くまで音波が届く特性を持っており、デカイ音を遠くまで響かせる目的の音圧マシン(音圧に特化したオーディオカーをそう呼んでいた)は、12インチや15インチ口径のサブウーファーを複数発組み、クルマのオーディオとは思えないド迫力の低音サウンドを再生。ブーンブーンとうなり上げるベースサウンドが特徴であり、ブームだった当時を知るユーザーなら音の出所がわからないほど遠くから、重低音が響いてくる感覚を味わったことがあるのではないだろうか? これこそが音圧マシンの証だ。

重低音を彩る外向きサブウーファーが必須のアイテム

 そんな音圧自慢のカーオーディオのなかでも「外向きオーディオ」と呼ばれるジャンルは、ひとつのカテゴリーとして確立していった。文字通り車内で音楽を聴くのではなく外に向けて音を発する仕様。2BOXのラゲッジやセダンでもリヤハッチやトランクルームを開けたところにスピーカーを組み、外に向けてスピーカーを設置するスタイルが確立していく。

 そしてミニバンや1BOXカーのラゲッジに壁(ウォールと呼ばれる)を組んで、ここにサブウーファーを外向き設置(ウォールに複数発を並べている)した車両が外向き車両の主流となっていく。リヤゲートを開けると車外に向けてズラリと並んだサブウーファーの数々は、音圧以上に圧巻であった。

 サウンド面では文字通り外側に向けて音楽を響かせるのが目的。イベントやカスタムカーが集まる各地のナイトスポットなどで、自分のクルマをアピールする&イベントを盛り上げるといった目的でもてはやされた。

プロの音響機器レベルのサウンドを奏でる強者も現る

 しかし、この外向き仕様は単なるこけおどしの仕様ではなく、計算された音響的な知識を駆使して作られているのも事実。サブウーファーを設置するエンクロージャー(ボックス)の容量や構造(ボックスのチューニングによって再生周波数のコントロールもしている)を、もっとも効率良く音圧を引き出すことができる設計を施している。またスピーカーを駆動するパワーアンプも十分なパワーをかけられる大出力モデルが用いられた(音圧専用のパワーアンプもある)。加えて大型のパワーアンプが消費する大量の電力を十分にまかなうため、大量のサブバッテリーも積み込まれていた。

 そんな外向きマシンはどんどん進化を遂げ、低音のみならず中高音も遠くまで音を飛ばす仕様が求められれると、サブウーファーに加えてミッドレンジ(中音域を担当)、ツイーター(高音域を担当)などの中高域再生用のスピーカー群も強化。低音から高音までをバランスよく鳴らす外向き仕様も登場した。ここまで来ると外向きマシンは野外コンサートの音響機器に匹敵する性能を持つに至った。実際にPA(コンサートなどで用いるプロの音響機器)のスピーカーユニットを組み込むクルマも現れるなど、外向きオーディオは2000年以降に仕様としても性能としてもピークを迎える。

パーキングなどでの騒音問題が叫ばれるようになり音圧ブームが終焉

 しかし、一方では急激に進化した音圧マシンは、あまりの音量ゆえに一般ユーザーから眉をひそめられることも多くなり、パーキングなどで大音量を鳴らして社会問題を引き起こしてしまうケースも多くなっていく。次第に音出しできるエリアに規制がかかるなど音圧マシンの締め出しも各地で始まった。そんなトラブルがあって徐々にブームも下火になり、メジャーな場所で外向きマシンを見ることも少なくなり今に至っている。

 ただし、オーディオの楽しみ方は人それぞれ、大きな音を出すことを楽しむといったシンプルなオーディオスタイルは、ルールを守ってまわりに迷惑を掛けないレベルであれば許容されてもいいだろう。また音圧の競技(マイクで音圧を測定して勝敗を決めるdB競技など)もあり、単純でわかりやすく、オーディオのもうひとつの楽しみ方でもあるのだ。

 地方の農村部は別にして人口密度の高い住環境の日本では、外向きオーディオを思う存分楽しめないのは確か。だが、音の大きさで一発勝負する、そんな遊び心満点のカスタムオーディオの世界も魅力的なジャンルであったと言えるのではないだろうか。

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みんなのコメント

19件
  • 自己マンの世界だろうけど、
    ナンデ外に向けてこんな大きなスピーカー設置するのか、全く理解できない。
    音楽好きだけど車内で聴くには程々に聴こえる方がいい。
  • 街宣車と変わらない。逮捕して欲しい
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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