他に例を見ない大胆なスタイリング
レーシングカーを運搬するトレーラーから、アリエルが開発を進める最新モデルが姿を表した。サイズは小さいが、そのデザインは他に例を見ない。
【画像】アリエルの最新BEV 未来は素晴らしい? ハマーやフィアット500、VWバスも電動化 全121枚
往年のグループCカーのように丸いコクピットにはガルウイング・ドアが備わり、その周囲を無数のフィンが取り囲んでいる。後ろ姿はジェット戦闘機のようでもある。
見る角度によっては、少々やりすぎなほど大胆。細部までしっかり作り込まれており、実際に走行も可能だという。筆者が知っているアリエルとは、まったくの別物だ。
このクルマは、新世代となるバッテリーEV(BEV)。「ハイパーカー」とアリエルは呼ぶ。英国編集部は部外者として世界で初めて、光栄にも運転させてもらう機会を得た。
まだ朝霧が残る火曜日の早朝、アリエルの本拠地があるグレートブリテン島の南西部、サマセットからほど近い飛行場に招かれた。第二次大戦以降、使われなくなってから約80年が経過しており、滑走路はだいぶ傷んでいる。
フェラーリやポルシェなどのスポーツカー・メーカーが新モデルを発表する場合、大抵はエアコンの効いたホールに大勢が呼ばれ、巨大スクリーンの前でプレゼンテーションが実施される。実際にステアリングホイールへ触れることはない。
だが、アリエルの方法は違う。今回のゲストは筆者たちのみ。手を伸ばせば触れられる距離に、実車が停まっている。
最高出力1197ps、最大トルク185.1kg-m
何という強烈なスタイリングだろう。マクラーレンSLRを、ギュッと縮小してディフォルメしたようにも見える。アリエルを率いるサイモン・サンダース氏によれば、複数の候補があったものの、大胆さが足りないと却下したらしい。
最終的に選ばれたデザインがコレ。空気力学的にも、しっかり煮詰めているという。
シャシーの構造はアリエル・アトムに近い。ボディに開けられた隙間から、タイヤと美しく加工されたダブルウイッシュボーン・サスペンションのアームがチラ見えする。サイズやプロポーションは、より馴染みのあるクルマ的ではある。
最高出力1197ps、最大トルク185.1kg-mを彼らは主張する。その数字にふさわしい、エイリアン的な存在感だ。
本格的なボディをまとう量産車は、アリエルでは初めて。試乗車はプロトタイプで、ボディパネルには成形の容易な3Dプリンターが用いられたが、量産版ではカーボンファイバーで仕上げられるという。ハイエンド市場へ合致するように。
アリエルなのだから、もっと内部構造が見えた方が良いと筆者は感じた。アトムのように、駆動用モーターやガスタービン・エンジンが動く様子を観察したい。その方が、このメーカーらしい。
ナンバーを取得できるクルマを目指し、問題は多く残っているという。クラッシュテストや風洞実験、排気ガスの測定などが控えている。フレームが露出しないボディだとしても、ここまで複雑な造形は認可を得るのも大変そうだ。
レンジエクステンダー用ガスタービン搭載
キャビン後方のシルエットは、フォルクスワーゲン・ビートルっぽくもある。情報を知らなければ、小さなV8エンジンがフロントに隠れていると聞いても、疑問は感じないかもしれない。
実際のところ、このハイパーカーに積まれているのは1基299psを発揮する駆動用モーター。タイヤそれぞれに、合計4基が搭載されている。駆動用バッテリーは62kWhの容量で、フロアの下に敷き詰められている。
発生する熱を放出するため、冷却システムはかなり複雑なものだという。リア側には電動ファンが並ぶ。その中央には、ロケットブースターのような排気口も。
「これはレンジエクステンダー用のガスタービン・エンジンです。しかし、残念ながら今回は動かせません。サプライヤー側が仕上がりに納得しておらず、機能させないように頼まれています」
「実際に動かすと、サウンドはジェットエンジンのようですよ。このスタイリングが正当化されると考えています」。とサンダースは笑顔で説明するが、今回はその言葉を信じるしかない。
これまでは、パイプフレームむき出しがアリエルの定番だったから、ドアを開くことに不自然さがある。シートはレザー仕立てで快適。シートベルトは一般的な3点式で、フロントやサイドのガラスもちゃんとある。
スポーツカーとして、従来のアトムより完成度は高い。日常的な乗りやすさも引き上げられたと、サンダースは自信を見せる。
この続きは後編にて。
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