Aston Martin Vantage AMR
アストンマーティン ヴァンテージ AMR
アストンマーティン ヴァンテージ AMR 初試乗! 510psを7速MTで操る快感とは【動画レポート】
ヴァンテージをMTで操る意義とは
アストンマーティンの新作、ヴァンテージ AMR (7速MT)の国際試乗会に参加するためドイツ・ニュルブルクリンクへ飛んだ。到着したのはニュルの向かい側にあるAMR(アストンマーティン・レーシング)パフォーマンスセンター。
新型車両開発のテストからレース参戦(カスタマーサポート含む)の基地として、またあるときは新型モデル発表の場や今回のように試乗会場としても使われている。
2008年からアストンマーティン・ワークスドライバーの一員としてニュルブルクリンク24時間レースに参戦している身からすると久しぶりに前線基地に帰った感覚で、今回も懐かしいスタッフから歓迎を受ける。
ヴァンテージはすでにトルコン8速ATが標準でデビューしている。が、何故今更あえて7速MTを追加したのか? DB11以降では初となるMTは、現アンディ・パーマーCEOがユーザーに対して「約束」したことの具現化である。考えてみると本国イギリスは、スポーツカーをMTで乗る固定層がいる。同様にオープンモデルもそうで、雨の日にトレンチコートに身を包みオープンのままMTを駆使しして颯爽と走り去るシーンを多く目にする。
そう考えるとAMRの誕生は何も不思議ではないし、肝心のパフォーマンスでも標準のヴァンテージとは異なる特性を見せるAMRに大注目である。
ヴァンテージ AMRはEデフではなくLSDを採用
エンジンをフロントに、トランスミッションをリヤに分離するトランスアクスル方式に変わりはないが、8速AT(ZF製)から7速MT(グラツィアーノ製)に変更すると同時に、ヴァンテージの特徴のひとつである電子制御デファレンシャル(通称Eデフ)を降ろして、メカニカルLSDへと交換している。
このメカニカルLSDは加速38%、減速40%のロッキングファクターをもつが、Eデフとの作動制御の違いに興味が募る。また、重量差も含めて前後荷重は標準モデルの49:51から50:50へと変更。カーボンディスクブレーキとカーボンボディを含めた軽量パーツの集合で、実にマイナス95kgの軽量化を達成しているという。その軽量化が走行性能に大きく結びつくことは間違いない。
4.0リッターV8の最大トルクは僅かにデチューン
搭載されるAMGベースの4.0リッターV8ツインターボは、キャリブレーションによってエンジン特性もサウンドもアストンマーティン流になる。510psのパワーは標準モデルと変わらないが、最大トルクは8速ATモデルの685Nmに対して7速MTモデルでは625Nmへとデチューンされていた。これは軽量化したトランスミッションへの耐久面での対応だという。
それでも0-100km/h加速は変速ロスがない8速ATに遅れることわずか0.4秒の4.0秒を記録。6500rpmで自動シフトアップする8速ATに対して、7速MTは7000rpmまでの引っ張りが可能だ。高回転まで粘れることと、軽量化が手動変速である7速MTのタイムロス分(1~2速だが)を補うカタチである。
AMRの最高速度は314km/hで8速ATと変わらない俊速ぶり。その一端を垣間見たのはアウトバーンを走ったときで、軽く250km/hをオーバーしてみせた。そこから先へもまだまだ余裕で伸びていくのだが、今やドイツと言えど速度無制限区間でフラ~ッと意味なく追い越しレーンに出てくる輩が目立ち、極めて危険で迷惑な状況は日本の交通状況と重なる。よって、それ以上は試さなかった。
LSDがパワーをトラクションに変える安定志向
テストコースは、ニュルの向かい側、AMRパフォーマンスセンターをベースに、ということで、ニュルGPコースでの走行時間があればコーナリングなどでEデフとLSDの違いを安全に試すことが可能かも?と期待したものの、コースの設定は市街地とカントリーロードとアウトバーンの一般公道のみ。ならば公道においてLSD効果を感じるしかない。
そんなワケで確かめられた最適な試乗シーンは、アウトバーンへの流入路。360度ターンしながら合流するそのコーナリングでパワーをガバッと加えると、LSD効果でリヤが外にスライドしようと腰に伝わるグリップ変化を感じるが、大きくスライドするわけではない。
グリップの限界をそう易々とは超えない。つまり安定指向で、公道ではパワースライドさせることすら難しく、加えたパワーはトラクションとして背中を蹴り出し、加速Gに変わる。
ステアリングの応答性がミッドシップカー並みに鋭くクイックなヴァンテージの特性をいかんなく発揮し、コーナー進入で与えた舵角に合わせてアクセルを強めに踏み込むことをひとつのキッカケにパワープレイに転じる!というシーンは、僚友ダレン・ターナーがシルバーストーン・サーキットを舞台に繰り広げていたが(アストンマーティンのオフィシャル動画で見られる!)、まさにその挙動変化の一端、始まる瞬間までは一般公道でも感じられた。
W-Hパターンのドッグレッグで操る7速
肝心のMTは7速だから、シフトは左下が1速のレーシングパターン・・・と呼ぶのは古いらしくて現在はドッグレッグ、2~3速/4~5速/6~7速が縦列で並ぶシフトパターンをW-Hパターンと呼ぶそうだ。そのフィールは短いストローク量と確かなゲート感、適度な反力のクラッチペダルがミートする感触を伝えてくる。
7000rpmまで引っ張りクラッチを踏む。エンジン回転はストンとは落ちないで次のギヤに繋ぎやすいよう回転制御されてアップシフトはスムーズに。逆にダウンシフトはクラッチを切り、下げるギヤにシフトレバーを導くと同時に自動ブリッピングからジャストミート! ドライバースキル要らずである。
とはいえ、久々に操るマニュアルシフト操作の下手さ加減に我ながら唖然とする。クラッチミートの荒さやそのタイミングを計れない自分が情けない。以前ならATと変わらないスムーズな変速ができたものだが・・・。
余裕のあるサンデーレーサーにオススメしたい
クラッチを切り変速して繋ぐ。この行為にステア操作とブレーキ操作、クルマを制御するすべてがひとつにまとめられたMTを操る。4.0リッターV8の有り余る出力をMTで正確に操ることは正直難しい。その難しくも楽しい行為を我々は忘れ去ろうとしている。
原点回帰ではないが、ヒトは超高性能を安楽に味わい過ぎている・・・ということを改めて感じさせてくれたヴァンテージ AMR。「週末はサーキットで羽を広げる」という余裕のある方にこそお薦めしたい。
REPORT/桂 伸一(Shinichi KATSURA)
https://www.youtube.com/watch?v=hEIhzUIGu9Y
【SPECIFICATIONS】
アストンマーティン ヴァンテージ AMR
ボディサイズ:全長4465×全幅1942×全高1274mm
ホイールベース:2704mm
車両重量:1499kg(軽量オプション装着車)
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:375kW(510ps)/6000rpm
最大トルク:625Nm/2000~5000rpm
トランスミッション:7速MT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン(電動式)
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/40R20 後295/35R20
最高速度:314km/h
0→100km/h加速:4.0秒
【問い合わせ先】
アストンマーティン・ジャパン
TEL 03-5797-7281
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