アウディが、ザウバーF1チームの株式を一部カタール資本に売却しようとしているようだ。その発表は、12月のカタールGP前に発表される可能性もある。
カタールへの株式売却は、ベテランF1ジャーナリストであるジョー・サワードによって最初に取引の可能性に関する憶測が明らかにされたが、アウディはこれを繰り返し否定してきた。しかしmotorsport.comの調べでは早ければ来週にも契約が成立する可能性があると示唆されている。また、当初の予想よりもはるかに大きな投資が行なわれる可能性もあるという。
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アウディが前オーナーのフィン・ラウシングからザウバーチームを100%買収すると発表したのは今年3月のことだった。その買収額は約6億5,000万ユーロ(約1064億円)と見積もられていた。
しかし、アウディのブランドを所有するフォルクスワーゲン・グループが経済危機に瀕していることもあり、このドイツメーカーを取り巻く状況はここ数週間で変化したようだ。
ドイツでは、フォルクスワーゲンの工場閉鎖や最大3万人の雇用喪失が取り沙汰されている。この危機は、世界市場で同様の困難に直面しているアウディ・ブランドにも影響を及ぼしている。
アウディと業界関係者は、2026年から中長期的に競争力を維持するために必要な、グループによる大規模なF1開発プログラムへの支出を正当化することは現在のところ非常に困難だと内々に語っている。
アウディはこれまで、カタールのF1プロジェクトへの介入のうわさについては静観してきた。公式見解は非常に明確で「原則として、憶測にはコメントしない」というものだ。
イタリアGPでは、アウディのゲルノット・ドルナーCEOは、アウディがF1に参戦するのは今が「適切な時期」だと述べた。
「この決断は2年半前から準備していたもので、昨年再評価したものだ。F1とアウディは完璧にマッチすると確信している。我々の戦略に沿ったものであり、野心的で時間がかかるだろうが、企業側の改革方法とも完全に合致している」
しかし、ひとつだけはっきりしていることがある。フォルクスワーゲンを取り巻く危機を考えると、アウディが投資できる資金は少ないかもしれないということだ。
そのため、カタールからの新たな資本は歓迎すべきものであり、アウディは本社を置くドイツ・インゴルシュタットを離れることなくF1チームの開発計画を推し進めるのに役立つだろう。カタール側は条件が整えば、プロジェクトに最大10億ユーロ(約1640億円)を投じる意向を示しているという。
カタールは何年も前から世界的なプラットフォームとしてのF1に関心を示しており、国営航空会社のカタール航空はすでにF1の主要スポンサーである。また、カタールはすでにフォルクスワーゲンにも出資しており、17%の株式を保有している。カタールは、ポルシェ(53.3%)、ニーダーザクセン州(20%)に次ぐフォルクスワーゲン・グループ第3位の株主である。
フォルクスワーゲンが最終的にカタールによるアウディF1チームへの投資で利益を得る場合、カタールも株主のひとりとして間接的にF1に参加することになる。
また、カタールはフォルクスワーゲンの監査役会の20席のうち2席を占めており、前情報通信技術大臣のヘッサ・スルタン・アル・ジャベール博士と、カタール投資庁のマンスール・ビン・エブラヒム・アル=マームードCEOが監査役を務めている。
話し合いはすでに進んでいるとはいえ、カタールがどのようにアウディのF1プログラムに参加するつもりなのか、現在のところ明確な情報はない。チームのパブリックイメージを大きく変えることのないレベルの出資にとどまる可能性も指摘されている。
しかし出資額が大きくなり、カタールもしくはカタールの企業がアウディのチーム名に加わる可能性もある。カタールがザウバーの株式の50%以上を取得し、ノイブルクのエンジンファクトリーも買い取ることになれば、おそらくそうなるだろう。
いずれにせよ、カタールから新たな投資家を迎え入れるというアイデアは、当初からアウディF1プログラムの構想にあったわけではなく、経済危機から生まれたものだ。
また、F1参入の立ち上げに大きな責任を負っていたふたりの重要人物が、もはやアウディにいないという事実も影響しているのかもしれない。
ひとりはF1プロジェクトの熱烈な支援者とされていたマルクス・ドゥスマンで、2023年夏にアウディCEOを解任された。もうひとりは、もともとアウディの研究開発担当取締役としてF1参入を監督していたオリバー・ホフマンだが、こちらも2024年7月に退社している。
ドゥスマンの後任であるドルナーCEOはその後、数ヵ月にわたる評価段階を経て、原則的にF1にコミットした。しかし、F1での成功のために他部門を従属させ、大規模な投資を行なうつもりはなく、その点で妥協する気はないと言われている。
なおF1において、チームの株式を分割して所持するのは新しいモデルではない。メルセデスのF1チームについては、メルセデス・グループが3分の1しか株式を所持しておらず、残りの3分の2はトト・ウルフ代表とイギリスの多国籍化学企業であるINEOSが所有している。
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