多彩なスポーツチーフカスタムで魅せるインディアン・モーターサイクルズ
去る2023年12月3日(日)に開催された31回目の横浜ホットロッド・カスタムショーが2万5000人に上る来場者を数え、大盛況のうちに閉幕。いずれのカスタムも完成度の高さに目をみはるばかりで、アメリカンカルチャーをベースにした出展が多いものの、世界観の多様性には驚きを禁じ得ないだろう。そこで、今回はそんなカスタムの進化が著しい海外バイクブランドの出展にフォーカス。世界の、そして日本のビルダーたちがしのぎを削ったカスタムモデルの数々をお楽しみいただきたい。
アメリカのモーターカルチャーシーンのトップランナーといえば、今やインディアンをおいてほかにない。ストリートモデルからグランドツアラー、果てはバガーレースなど、サーキットでさえも彼らのセンスに席巻されているのが今のアメリカといっても過言ではないだろう。
今回のショーでブースの主役に据えられたのは、スポーツ・チーフのカスタムプロジェクト「FORGED(フォージド)」。これはインディアン・モーターサイクルズがワールドワイドに展開する公式プロジェクトで、本国の一流ビルダーはもとより日本国内からはHUMONGOUS CUSTOM CYCLES(ヒューモンガス・カスタムサイクルス)が選ばれるなど、次世代のモーターカルチャーを描き出すという意欲的なチャレンジにほかならない。
ブースに並んだのは、クールなサイドパニアを搭載したケアリー・ハート×ジェレミー「トゥィッチ」ステンバーグを筆頭に、アメリカ本国からはPOWERPLANT MOTORCYCLEやMOONEYES(ムーンアイズ)によるスペシャルマシンなど総勢5台の競演となった。とりわけ、小松勇仁氏が率いるヒューモンガスがこの日のために製作した漆黒のカスタムマシンの、本国のビルダーも舌を巻く完成度の高さが印象的だった。
また、世界限定29台、日本にはわずか2台のみが上陸したバガーレースのレプリカマシン「チャレンジャーRR」そのものが展示されたことに驚いた観客も少なくなかったようだ。レースで勝つマシンという、カスタムとはひと味違ったオーラが鮮烈な印象を与えていた。
【画像12点】ヨコハマホットロッドカスタムショー、注目のカスタムモデルを見る
■日本のHUMONGOUS CUSTOM CYCLES(ヒューモンガス・カスタムサイクルス)が手掛けたスポーツチーフカスタム「FORGED TOKYO」。
■アメリカ本国の代表として、POWER PLANT Motorcyclesが手掛けたスポーツチーフカスタム(奥)。手前もアメリカのBarnstorm Cyclesによるスポーツチーフカスタム。
■当イベントを主催するムーンアイズも、イメージカラーをまとったスポーツチーフカスタムを出展。
ハーレーダビッドソンは新型Xシリーズのカスタムを早くも披露
インディアンが伝統とその革新をフィーチャーするとしたら、ハーレーダビッドソンはカスタムカルチャーのビッグバンとも言える存在で、拡張性を発揮した。事前に告知されていた新型モデル、X350&X500のコンプリートカスタムをはじめ、レースシーンからダイレクトにフィードバックされたカスタムバイクなど、これまでのハーレーダビッドソンからは考えられないようなモデルが目白押しだ。
売り上げが好調だというXシリーズは、HOT DOG CUSTOM CYCLES(ホットドッグ・カスタムサイクルズ)とWEDGE MOTORCYCLE(ウェッジ・モーターサイクル)の国内ビルダーが、それぞれのオリジンを活かしつつイメージを増幅したモデルを出展。
X350はホットドッグの河北啓二氏によってフラットトラックレーサーのスタイルが与えられ、またウェッジの二平隆司氏によるX500はカフェレーサーのエッセンスを身にまとったストリートレーサーへ変貌。いずれも人だかりが絶えることなく、市場での注目度の高さを物語っていた。
また近年、ハーレーダビッドソンが力を入れているフーリガン(Hooligan)レースからインスパイアされたカスタムマシンもリアルな速さとスタイルを両立したジャンルと言えよう。
今回、アメリカ本国から上陸したSuicide Machine Companyがパンアメリカをベースに製作したフラットトラックレーサーは、実際に年間6位に入賞したレースマシンそのもの。本物だけが持つ迫力、ディテールの緻密な仕上げなど、アメリカンカスタムの底力を感じさせるモデルたちだった。
■日本の老舗ハーレーカスタムビルダーのホットドッグ・カスタムサイクルズから出展のX350knight。フラットトラッカー「XR750」を独自にオマージュした造形が魅力のカスタム。
■同じく日本のウェッジ・モーターサイクルの手によるX500のカスタム「Notch X」。テールを大胆にシェイプし、独自のクールなカフェスタイルストリートレーサーに仕立てた。
■アメリカ本国のSuicide Machine Companyが手掛けたパンアメリカ1250ベースのフーリガンレーサー。#66は、実際に本国レースで年間6位に入賞の本格マシン。
度肝を抜くBMW・R18ベースの大胆なアルミボディカスタム
クラシカルで上質なクルーザー、R18をベースにしたカスタムプロジェクトは、毎年、観客の度肝を抜くモデルが登場することで楽しみにしているファンも多い。2022年のChabo Engineering(チャボ・エンジニアリング)の「Wal(ヴァル)」に続き、今回は滋賀県から発信し、今や世界のカスタムシーンの最先端に躍り出たCustom Works ZON(カスタムワークス・ゾン)の手に委ねられた。
Ground 0(ゼロ)とリヤテールに記されたマシンは、全身がハンドメイドのアルミパネルに覆われ、一見するとソルトレイクのハイスピードチャレンジャーを思わせる雰囲気。だが、ディテールを見ていくうちに、計算され尽くした構造やバランスなど、ストリートからハイスピードツーリングまでを見据えたカスタマイジングだとわかるはず。
ハンドルやシートの造りは思わずため息が漏れるほどの仕上がりの良さで、R18がたたえる世界観をZONがはるか彼方まで増幅した印象。たとえオリジナル原理主義者だとしても、実車が放つ独特の雰囲気に抗うことは難しいはず。これからもR18のカスタムトレンドがどんな進化をとげていくのか、ぜひ注目したい。
■滋賀県を拠点とするCustom Works ZON(カスタムワークスゾン)が手掛けた「Ground 0(ゼロ)」。全身をハンドメイドのアルミパネルに覆われた斬新なフォルムに、ギャラリーの目は釘付けだった。
スーパーメテオ650を格好のカスタム素材にしたロイヤルエンフィールド
ロイヤルエンフィールドというブランドは、カスタムシーンと距離がある印象をお持ちの方もいるだろうが、これまで紹介してきたいずれのブランドにも劣らぬほどのカスタムモデルが出展されていた。
今回は国内ビルダーの作品もあわせて4台のコンプリートモデルを出品。そのうち3台が2023年に日本上陸を果たした新型クルーザー・スーパーメテオ650がベースで、いずれもオリジナルからは想像もつかない世界観を作り上げていた。例えば、日本のカスタムビルダーとして高い創造性と人気を持つCherry’s Company(チェリーズ・カンパニー)は、なんとクラシカルなサイドカーにカスタマイズし、レトロテイストあふれるモデルに仕立て上げた。注目すべきは、そのディテールの緻密さと仕上がりで、ベースの素性を徹底的に煮詰めた腕前には誰もが言葉を失ったはずだ。
あるいは、Deus EX Machina(デウス・エクス・マキナ)のミラノ・ディヴィジョンはおなじみのサーフテイストに加え、ハイバックシートやごくシンプルなコスメティックチューンによって、スーパーメテオ650に全く新しい表情を加えるなど、見るものを飽きさせない。また、AN-BU CUSTOM MOTORS(アンブ・カスタムモータース)によるレーサーカスタムも注目を集めた1台で、ハンドメイド感あふれるカスタムバイクらしい仕上がり。
いずれも、素材の良さを極めたカスタムと呼べるもので、ロイヤルエンフィールドの実力を再確認させられるラインナップ。また、カスタムパートナーを選ぶ見識の高さも脱帽ものである。
■1970年代のチョッパースタイルにインスパイアされたDeus EX Mchina Milan(デウス・エクス・マキナ・ミラノ)のスーパーメテオ650カスタム「THE ROLLING QUEEN」。
■米カリフォルニアのカスタムビルダー、RSD(Roland Sands Design)が出展のスーパーメテオ650チョッパー。大胆にチョップしたフレームで、延長加工されたフロントフォークを幅の狭いトリプルクランクにセット。
モトクロッサーベースのカスタムや、ビンテージハーレーのカスタム
■宮城県のASTERISK(アスタリスク)カスタムワークスの手による、カワサキ KX450Fモトクロッサーベースのフラットトラッカーカスタム「KX450FT」。
■三重県のVIRTUOSO MOTORCYCLES(ヴァーチュオーゾ・モーターサイクルズ)のカスタムハーレー「KINK SNAKE」。1950年代のハーレーモデルK(スポーツスターの前身)エンジンを搭載しつつ大胆な排気系を製作。
■台湾から出展の「2LOUD CUSTOM」のW800カスタムボバー。
report&photo●石橋 寛
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