選択肢が増えてきたPHEV
text:AUTOCAR UK編集部
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translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
欧州の社用車市場は、大規模な変革の真っ只中にある。
英国市場では現在、最新のWLTP排出ガス試験基準の採用と、CO2をベースとした社有車税規制のさらなる強化が相まって、従来のガソリン車やディーゼル車が法人利用に適さなくなってきた。企業のスポットライトは最新のプラグイン・ハイブリッド(PHEV)に移っている。
多くの社用車ドライバーは、すでにそのコストの高さに気づいているだろうが、維持費を抑えたいのであればガソリン車やディーゼル車からPHEVに乗り換えるしか方法はない。
そこで、検討すべきクルマを以下にご紹介する。いずれもPHEVで、CO2排出量や燃費の基準を満たすものだだ。あくまでAUTOCAR本拠地の英国で販売されているモデルのため、仕様や価格など一部異なる点はあるが、日本でもPHEV購入の際の参考になれば幸いだ。
1. BMW 330e
過去数十年にわたり、英国の社用車市場をリードしてきたのはBMWだ。BMWが初めて商品力の高いプラグイン・ハイブリッドを市場に提供したのは先代の330eであり、現行の330eでも引き続きこの市場をリードしていくだろう。
最新の330eのパワートレインは、2.0Lのガソリンターボエンジンとトランスミッションの上流に配置された電気モーターを組み合わせたもので、他のG20世代の3シリーズと同様の扱いやすさと挙動を実現している。
従来の3シリーズと比較するとトランク容量は減っているものの、一般的な法人ユーザーがその不足に気づくことはほとんどないだろうし、室内の広さも問題ない。
最大291psを発揮する330eはレスポンスが良く、シフトチェンジもスムーズで、ペースを自在に操ることができる。
ハイブリッド・パワートレインの重さを感じる瞬間はほんのわずかで、高速道路でボディが垂直方向に動いた時だけだ。330eは俊敏で、エンターテイメント性の高い、一流の3シリーズと言えるだろう。
WLTPサイクルの電気のみの航続距離は60kmで、英国における税区分では中位に位置している。
2. スコダ・スパーブiV
日本ではなじみの薄いスコダ。欧州では安価な量産車ブランドとして認識されているが、スコダは最近、こうした認識を変えようと躍起になっている。
スコダが法人ユースも視野に入れて発売したのがスパーブiVだ。フォルクスワーゲン・パサートGTEのエンジンとハイブリッド・ドライブトレインを、ファミリーカーであるスパーブに移植し、低価格で展開しているモデルだ。
単純なのか巧妙なのかはわからないが、いずれにせよ、スパーブiVは注目を集めた
スコダ初のPHEVは、驚くほど普通のクルマだ。特にエキサイティングなドライビング体験を提供するわけでもなく、電動化をアピールするための派手な車載技術を搭載したり、斬新なスタイリングを施したりしているわけでもない。
走り、乗り心地、ハンドリングは標準のスパーブとよく似ている。かなりソフトなスプリングと快適性を重視していて、ペダルの反応もエネルギッシュというよりは気楽な感じだ。
スパーブの最大のアピールポイントはサイズであり、iVもそれには変わりはない。バッテリーが足元の広さに若干の影響を与えてはいるものの、ハッチバックモデルでは485L、ワゴンモデルではそれ以上のトランク容量を確保している。
WLTPサイクルの電気のみの航続距離は56kmで、英国では330eと同じ税区分にあたる。
広々としていて費用対効果に優れたPHEVを探しているなら、これ以上のものはないだろう。
3. ボルボV90リチャージT6
ボルボが自社モデルにプラグイン・ハイブリッド・パワートレインを搭載してきた歴史は他社よりも長い。最近のV90リチャージT6は、その中で最も成功したモデルであり、傑出したオールラウンダーである。
このクルマのバッテリーは11.6kWhと控えめだが、58kmの電気距離と340psの出力は、ゼロエミッション走行と必要に応じて十分以上のパフォーマンスを発揮することを意味する。
上記のスコダは、より安価で室内も広々としているが、快適性ではV90 T6に水をあけられている。四輪駆動で購入できることも特徴の1つだ。
また、アウディ、BMW、メルセデスのいずれも、フルサイズかつガソリンエンジン搭載のPHEVをワゴンスタイルでは設定していない(メルセデスはディーゼルハイブリッドのEクラスエステートを販売しているが)。
4. ヒュンダイ・アイオニックPHEV
ヒュンダイ・アイオニックPHEVは、英国市場で定着している選択肢の1つだ。
2018年10月に英国政府が、かつてプラグイン・ハイブリッドに適用されていた1500ポンド(20万円)の税制優遇措置を撤廃したことで、使い勝手、経済性、質感を最もよく組み合わせたものに注目が集まった。アイオニックPHEVがそれだ。
3万ポンド(405万円)未満のPHEVを探している人は多くいるだろうし、この記事を書いている時点でヒュンダイは2000ポンド(27万円)相当の奨励金を提供している。
アイオニックPHEVは、大人4人が乗れる室内空間、たっぷりのトランクスペース、そして特に洗練されていないし刺激的でもないが、不快にさせない無害なドライブ体験を実現している。エンジンと電気モーターの組み合わせには違和感がなくシームレスだ。
電気のみの航続距離はWLTPサイクルで51kmで、十分に経済的に走る。トヨタ・プリウスのような倹約家でもないし、ミニ・カントリーマン・クーパーS Eのようなパフォーマンスもないが、十分な乗り心地とハンドリングを持っている。
5. メルセデス・ベンツE300de
メルセデスは、ディーゼルエンジンと電気を組み合わせたPHEVを販売する唯一のメーカーだ。また、E300deでは、セダンとワゴンのボディスタイルを選択できるのもメリットの1つだ。
電気の航続距離はWLTPサイクルで48kmしかないため、英国では選択するオプションによっては税金面で不利になる可能性もある。
AUTOCARのテストでは、実際に4気筒ディーゼルを動かさずに走れる距離は35~40km程度だった。しかし、たった4気筒しかないにもかかわらず、そのパフォーマンスは驚くべきものだ。
巧みなパワーマネージメントにより、気づかないうちにエネルギーを回収して再利用している。ハンドリングは精巧で、車重2トンのクルマにしてはかなり正確なものとなっている。
例によって、トランク容量は少し減っているが、実用性に優れたクルマであることに変わりはない。ワゴンではなおさらだ。スマートで魅力的、効率的なクルマであることは間違いないだろう。
6. アウディQ5 55 TFSIe
アウディ初のPHEVは「e-トロン」のバッジをつけていたので、最新のEVと混合しやすく、少しややこしい。現在では「TFSIe」と呼ばれている。
紹介するのは、2.0Lターボエンジンと電気モーターを組み合わせ、367psの合計出力を発揮するQ5 55 TFSIeだ。性能は予想通りパワフルだが、最も印象的なのは日常的な走行における滑らかさだ。
残念なのは高額な価格設定と、燃費(実測値で14.8km/l)がやや期待はずれであることだ。また、運転している感覚もまるで遠隔操作で、ドライブ体験はフィルター越しに伝わってくるように感じられる。
そして電気のみの航続距離が48kmを超えていないため、英国での税区分は下位に位置する。
7. フォルクスワーゲン・パサートGTE
新しくなったパサートGTEの最大の変更点は、スタイリングではなく中身にある。
バッテリーを13kWhに大型化し、WLTPサイクルで58kmの航続距離を実現。車両価格も引き下げられた。英国ではパサートの購入者の4分の1がPHEVを選択する。
パワートレイン自体は、洗練された1.4Lガソリンターボエンジンと電気モーターで構成されており、ここに6速デュアルクラッチATを組み合わせることで、前輪に最大218psを供給することができる。
同セグメントの最新モデルと比べれば、このパサートGTEは最速でも最もエキサイティングなPHEVでもないが、魅力の幅広さとフォルクスワーゲンという控えめなブランドという点では、このパサートをお勧めする理由は少なくない。
8. メルセデス・ベンツA250e
電動モデルのラインナップ拡大が加速する中、メルセデス・ベンツAクラスにプラグソケットが芽生えるのは時間の問題だった。
A250eは、1.3Lガソリンターボエンジンと電気モーターを組み合わせ、合計218psを発揮する。PHEVとしては大容量の15.6kWhバッテリーを搭載し、WLTPサイクルで最大67kmの航続距離を実現。英国の税区分では、このリスト中最も上位に位置する。
近所へ買い物へ行く程度なら、短距離EVとしても使える。電気モーターはかなり強力で、街乗りに十分なパンチがあり、バッテリー容量も余裕がある。バッテリーの回生強度を好みに合わせて調整できる設定も多数ある。
残念なのは、エンジン始動時の音がうるさいことだ。経済的でかなり快適な部類に入るが、乗り心地は期待していたほどよくはない。惰性走行の制御などが難しく、走りやすさには欠ける。
9. ボルボXC40リチャージT5
ボルボはPHEVの分野に参入した最初のプレミアムブランドの1つだが、これまでは社用車ドライバーに大きくアピールする価格設定のクルマが待たれていた。
XC40リチャージT5の3気筒ガソリンエンジンを搭載したコンパクトなSUVでありながら、システム出力262psと43.4kg-mの合計出力を持ち、価格は4万ポンド(540万円)強となっている。
アウディQ5と同様に、電気の航続距離が48kmに届かず、英国の税制面でも有利とはいえない。その走りもまた、少し不満な点がある。速さはなく、洗練さも少ない。特にスポーツサスペンション付きのRデザインでは硬さに悩まされる。
10. プジョー508ハイブリッド225
PSAグループがPHEV市場に参入した。508ハイブリッド225は1.6Lガソリンターボエンジンを搭載し、電気モーターのアシストを受けて前輪を駆動する。電気モーターを2基搭載した四輪駆動モデルもある。
前輪駆動モデルであれば、WLTPサイクルの航続距離は50kmを実現しており、英国での税区分では中位にあたる。
パワートレインは低速走行時に本領を発揮する。エンジンの始動と停止は淡々と行われ、ドライバビリティは良好だ。スピードを出そうとしてスロットルを深く踏むと、滑らかさは失われてしまうが、加速は十分だ。
パドルを使って自分でギアを選択することで、ハイブリッドシステムが時折見せる過敏な気性を落ち着かせることができる。
室内の広さは中型セダンにしては物足りないが、後部座席は子供が乗っても十分に使えるし、前席は快適でデザインも面白い。クルマのスタイリッシュさとあわせて、魅力あるモデルである。
11. ヴォグゾール・グランドランドXハイブリッド4
英ヴォグゾールは、20年前にベクトラが大ヒットした頃と同じように、新時代のPHEV市場の牽引役になろうとしている。ただし、導入したのは伝統的なファミリーセダンではなく、むしろ同社初のハイブリッドSUV、グランドランドXハイブリッドであった。
プラットフォームとパワートレインをプジョーやDSと共有しているグランドランドXは、日本では全くと言っていいほど無名だが、欧州では注目に値するモデルである。
その1.6Lガソリンターボエンジンと2基の電気モーターにより300psと52.9kg-mを発生し、停止状態から6.0秒未満で時速97kmまで加速することができる。
ただ、走りは速いのだが、エンジンから電気モーターへの切り替えが鈍く、不器用に感じることがあり、ハンドリングやエンジンには洗練さが少し足りない。
Q5やXC40とは異なり、グランドランドXは48kmの航続距離を持っているとはいえ、英国の税区分ではそれほど有利には働かない。
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