ロールス・ロイス、価格公表せぬ限定車 天井に夜空 無着陸大西洋横断飛行を讃える

もくじ

ー 100年の時を経て受け継がれるイーグルVIII
ー 内外装は記録に挑んだ夜間飛行がモチーフ
ー チャーチルによる賛辞の言葉が刻まれたプラーク

100年の時を経て受け継がれるイーグルVIII

ロールス・ロイスは今年のコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステで、限定モデル「コレクション・カー」の最新作「レイス・イーグルVIII」を公開する。

イタリア・コモ湖畔で24日から公開されているレイス・イーグルVIIIは、50台の限定生産。ロールス・ロイスによれば、その目的は「20世紀で最も重要な瞬間の1つである英雄譚を語る」ためだという。それは無着陸大西洋横断飛行の成功だ。

1919年6月（今から100年前の来月だ）、英国人飛行家のジョン・オールコックとアーサー・ブラウンは、改造した第一次大戦期の爆撃機ヴィッカース・ヴィミーでカナダ・ニューファンドランド島のセント・ジョンズを出発し、厚い雲や氷霧と奮闘しながら約16時間後にアイルランド・クリフデンに降り立った。その飛行機には20.3ℓ360psのロールス・ロイス製イーグルVIIIエンジンが搭載されていた。今回の新しい限定モデルの名前は、このエンジンに由来する。

内外装は記録に挑んだ夜間飛行がモチーフ

この特別なレイスのボディは濃淡2色のグレイで塗り分けられ、その境界には真鍮で線が引かれている。このカラーリングは、無着陸大西洋横断飛行が夜間に行われたことにちなんでいるという。

ホイールはポリッシュと「トランスルーセント・シャドウ」のペイントが組み合わされている。黒く塗られたグリルの羽根板は、偉業を達成した飛行機のエンジンカウルに倣ったという。

インテリアはブラックとグレーの革張りに、真鍮でアクセントが施されている。しかし、注目すべきはディテールだ。真鍮製のスピーカーカバーには、当時の推定飛行距離（1880マイル：約3000km）が書かれ、ドアの装飾にも真鍮が使われている。

ダッシュボードに装備されている時計は、氷で覆われたような背景に、夜はグリーンの光でほのかに輝く。これは飛行機の氷で覆われた計器板と、グリーンの照明が灯る操作パネルを模したという。

チャーチルによる賛辞の言葉が刻まれたプラーク

ダッシュボードのウッド・パネルはユーカリで、そこに金と銀と銅で模様が貼り込まれている。これは夜の空から眺めた地球の光景を表現したものだ。天井に光ファイバーを組み込み、車内でプラネタリウムが楽しめるスターライトヘッドライナーは、1919年に行われた飛行中の夜空を再現する。

さらに当時の航空路と星座を真鍮の糸で刺繍。飛行中に雲が晴れて、星の灯りにナビゲートされた瞬間も赤い光ファイバーで表すという。雲も刺繍で表現されており、6月15日午前0時17分に到達した飛行の中間点を示す文字が刻まれたプラークも付く。

運転席側のドアに装着されたプラーク（これも真鍮製）には、サー・ウィンストン・チャーチルがこの歴史的飛行に対して贈った賛辞の言葉が書かれている。「彼らの大胆さ、決意、技術、知識、彼らの飛行機、そのロールス製エンジン、そして彼らの幸運に対し、わたしはどのように褒め称えればよいかわからない」

レイス・イーグルVIIIの価格は公表されていない。古いことわざで言われているとおり「価格を尋ねなければならないようなひとには買うことができない」ということだろう。