13年振りに3モデルのGTIがそろい踏みスポーツハッチを中谷明彦が試す!
フォルクスワーゲン(VW)にとって「GTI」のネーミングは、スポーツ性をアピールする最上級のモデルであることを意味する。初めてネームを冠されたのは1976年。初代ゴルフに設定されたのが始まりだ。今年は13年振りにGTIのネームを与えられたVW車となるゴルフ、ポロ、up!(アップ)の3モデルが出揃うこととなった。その内の2モデル、ポロとup!を富士スピードウェイ・ショートコースにて全開走行テストしたのでレポートしよう。
「煽られる原因」を知っておけばトラブルは防ぎやすい、その代表例3選とは
写真は、左から初代ゴルフGTI、ポロGTI、ゴルフGTI、up!GTI。
兄貴分のゴルフGTIと同じ2Lエンジン搭載、車両挙動安定装置ナシでも安定した走りを実現
まず新世代GTI3兄弟(ゴルフ・ポロ・UP!)の真ん中に位置するポロGTIだ。搭載する2リットル直4直噴ターボのTSIエンジンは、兄貴格のゴルフGTIと同じ。最大出力、最大トルクはやや低い設定だが車両重量が1290kgでゴルフGTIより100kg近く軽量なため、パワーをセーブしないと速さで兄貴格を上回ってしまう可能性があっただろう。
トランスミッションはツインクラッチの6速DSGのみの設定だが、そのセッティングが秀逸。スタートダッシュはローンチコントロールをモニターで設定すれば、誰でも簡単に最速ダッシュを決めることができる。
電子制御のトラクションコントロールをオフにし、パワーコントロールでタックインさせ車両姿勢を自在にコントロール可能。前輪駆動FFの特性を完璧に理解し使いこなしている。
DSGはマニュアル操作も可能で、ステアリングパドルを使用しながらレーサー感覚でシフト操作するのも楽しいが、単純にラップタイムの速さを求めるならDレンジのフルオートマティックで走るほうが速い。
シャシー性能の高さを実感できる”up!GTI”、車両安定デバイスがカットできないのが残念
次に三男格となるup!GTIに乗り換える。日本では600台の限定発売となる。up!GTIには排気量が1リッターしかない直列3気筒ターボ付きパワーユニットが搭載。ポロ/ゴルフGTIの半分しかない排気量だが、パワースペックは半分以上。特にトルクレンジが広く扱いやすい特性となっている。
トランスミッションが6速マニュアルの3ペダルのみ設定されていること、車体寸法的に初代ゴルフに最も近いことなどもGTIファンにとって魅力だろう。しかし走り始めるとすぐにある問題が露呈する。それは電子制御コントロールがトラクションコントロールを含め全く解除できないため、常に介入が行われることによるストレスだ。シャシー性能は、1000kg丁度しかない軽量なこと、ショックアブソーバのダンピングがよくロードホールディングがいいことなど、VW車らしさが際立つが、せっかくのパワーをスポイルされてしまうのはサーキットでは有り難迷惑なことだった。だが一般道においては特にビギナードライバーにとって有効な制御であることを明確に付記しておきたい。
<中谷明彦>大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍中。自動車関連の開発、イベント運営、雑誌企画など様々な分野でのコンサルタントも行っている。高性能車の車両運動性能や電子制御特性の解析を得意とする。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設しF1パイロット・佐藤琢磨らを輩出。
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