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エンタメ業界の“闇”を静かに、しかし鋭く突きつける衝撃的傑作『アシスタント』

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エンタメ業界の“闇”を静かに、しかし鋭く突きつける衝撃的傑作『アシスタント』

 ドキュメンタリー映画作家のキティ・グリーンが、いわゆるハーヴェイ・ワインスタイン事件を発端に世界へと広まった<#Me Too運動>を題材に、エンタメ業界で働く人々への取材を重ねて作り上げた映画『アシスタント』。ハリウッドに限らず、あらゆる業界にはびこるパワハラや性的虐待を許容してしまう“構造”そのものを静かに、しかし力強く告発しています。

——名門大学を卒業したばかりのジェーン(ジュリア・ガーナー)は、映画プロデューサーという夢を抱いて激しい競争を勝ち抜き、有名エンターテインメント企業に就職します。業界の大物である会長のもと、ジュニア・アシスタントとして働き始めますが、そこは華やかさとは無縁の殺風景なオフィス。早朝から深夜まで平凡な事務作業に追われる毎日。常態化しているハラスメントの積み重ね……。

銀幕を飾ったカスタム・バイク 1992年公開の“ハーレーダビッドソン&マルボロマン”に登場したハーレーFXRカスタムとは

 しかし、彼女は自分が即座に交換可能な下働きでしかないということも、将来大きなチャンスを掴むためには会社にしがみついてキャリアを積むしかないこともわかっていました。ある日、会長による“許されない行為”を知ったジェーンは、この問題に対して立ち上がることを決意するのですが——。

 映画製作会社の新人アシスタントである主人公ジェーンを演じるのは、人気ドラマシリーズ『オザークへようこそ』でエミー賞を受賞したジュリア・ガーナー。彼女は最小限の台詞と表情、仕草でジェニーの境遇や心理を見事に表現。そんなジェーンが働くオフィスも華やかな業界とは裏腹に無味乾燥としていて、そこにいる誰もが“違和感”に対し見て見ぬふりをしています。

 たとえば『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022年)では、黒幕=ワインスタインを登場させていましたが、本作の同じポジションにあたる人物(会長)は、声や後ろ姿がかすかに映るだけ。それが“淫蕩な怪物”を普遍的な存在にしていて、観ている我々の生活にも“置き換え”が可能なリアルを与えます。

 アメとムチを使い分け、将来のチャンスをチラつかせて“アシスタント”を従順な共犯者に仕立て上げる……。そうした支配・従属構造を見せつけられるのは、スクリーン越しとはいえ非常につらいことですが、つい「仕方のないことなのかも」という思いが頭をよぎってしまい、あらためて支配構造に抗うことの難しさ・恐ろしさを強く認識させられるでしょう。

 本作はフィクションではありますが本質的にはノンフィクションであり、グリーン監督が淡々と積み上げる“今もどこかで起こっている”現実は、エンタメ業界における“底辺の声”を代弁しています。しかし、キティ・グリーンという女性監督の存在、この素晴らしい映画を作り上げた新たな才能が、私たちの心に良き未来への希望を残してくれることも事実です。なお余談ですが、序盤に意外な大物俳優のカメオ出演もあるのでお見逃しなく。

 さて、ジュリア・ガーナーといえば『シン・シティ 復讐の女神』で演じた若きストリッパー、マーシー役を思い出すという古参ファンも少なくないでしょう。“ハードボイルド劇画映画”な同作は、ハーレーダビッドソンのVRSCDXナイトロッド・スペシャルに乗るミッキー・ロークも印象的でした。

『アシスタント』は2023年6月16日(金)より新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開です。

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