BMW 1 series vs Mercedes-Benz A-Class vs Volkswagen Golf vs Peugeot 308 vs Mazda 3
BMW 1シリーズ vs メルセデス・ベンツ Aクラス vsフォルクスワーゲン ゴルフ vs プジョー 308 vs マツダ 3
BMW 1シリーズと競合が集結! 独仏日コンパクトハッチ5台の一番勝負【渡辺敏史編】
今乗れるコンパクトハッチバックを渡辺敏史が斬る
新型BMW 1シリーズを中心に独仏日のコンパクトハッチバックが5台集結。「全長4.5m以下、FFベースの5ドアハッチバック」という最も商品力の求められるセグメントの強豪同士を、渡辺敏史と渡辺慎太郎の両ジャーナリストが徹底比較する。
Aクラスの「メルセデス・ベンツ」らしさの在処
第4世代Aクラスの刷新は、先代のネガティブファクターを徹底的に潰すことを主眼に施された。それは前席よりむしろ後席まわりに顕著だ。B~Cピラーやリヤゲートまわりの開口形状が整えられたことで後方視界が改善、後席居住性も天方向の圧迫感が減り、積載性も改善・・・と、実用性の向上は確実にみてとれる。言い換えれば立ち位置がファーストカー寄りとなり、その適性は向上したわけだが、そのぶんゴルフに代表されるガチのCセグメントとの距離は縮まったともいえる。
とあらばAクラスのプレミアム性、スペシャリティ性はどこにあるのか。静的質感の高さやコツコツと賢さを高めている音声インターフェースはキャラクター足り得るし、動的にみればA 45 Sの強烈無比な走りは間違いなく個性といえる。今回の試乗モデルはディーゼルのA 200 dだったが、時折りトルクステアが感じられるほどの力感がありながらエンジン起因のノイズや振動はまずまず抑えられており、それなりの上質さは感じられる。
が、バネ下の癖が強く現れて、路面凹凸の吸収性の悪さやロードノイズの大きさがことさら目立ってしまったのは残念なところだ。主に装着タイヤの径や銘柄によるものだろうが、全般にAクラスは高速・高負荷側に寄らないとメルセデスらしい懐の大きさが感じられない傾向があるのも確かだ。リヤサス形式による動きの違いも大きく、動的な方向からみれば現状ではベースモデル側は分が悪い。車格に条件がなければCLAクラスを選んだ方が幸せかもしれない。
1シリーズの個性が“活きる”グレードは
その源流は1990年代の3シリーズコンパクトに遡る1シリーズ、その最大の個性がクラス唯一のFRレイアウトを採ることだった。が、昨年のフルモデルチェンジで遂にFF化されたのはご存知の通り。理由は言わずもがな、最大の弱点だった居住性や積載性の向上と、MINIブランドとの骨格共有による生産性やコストメリットの追求にある。
パッケージは直接的なライバルとなるAクラスに比べると全長やホイールベースがやや短く、全高はやや高い。後席は座面高があり大柄な成人男性では天側の圧迫感を感じるかもしれないが、着座姿勢は自然で、視点も運転席越しに前方の景色を確認できるなど環境としては真っ当だ。そして当然ながら先代よりは足元まわりりなどが確実に広くなってもいる。
試乗車は標準の16インチタイヤを装着していたが、細かな入力を綺麗に丸めながらフラットに転がってくれる。大きな凹凸ではさすがに強めの突き上げも現れるが、ランフラットと思えば上々なライドフィールだ。ロードノイズや風切り音の類も巧く整理され、エンジンも高回転域のサウンドを除けば振動など3気筒の癖はまるで感じさせない。
1シリーズの最大の個性であり、疑問でもあるのはFRからの大転換をネガとしないために苦慮したハンドリングの作り込みだろう。クイックなギヤ比に電子デバイスの助けもあってともあれゲインが高く、慣れるまでは時には曲がりすぎて舵を戻すほどだ。ガンガン追い込んでいけばFFであることを忘れさせるシャープな動きをみせてくれるが、前述してきた真っ当ないいもの感と、この個性とを折り合いづけるなら、やはりM135iくらいのスポーツグレードを選んだ方がしっくりくると思うのは僕だけではないだろう。
308が備えるベーシックカーとしての優れた資質
ゴルフ7から遅れること1年の2013年にデビューしたプジョー 308。モデルライフは間違いなく後半ということで、内装造作などはさすがに旧さを感じるところもある。小径ステアリングを前提としたi-Cockpitも小さなメーターが左右に置かれるインターフェースに見にくさを感じる人もいるだろう。現行508や新型208のように液晶パネルを用いると視認性は一気に改善されるが、年次的にも志半ばの物件ということになる。今回の5モデルの中ではホイールベースは最も短いが全高が高く、座面高が低いことを除けば後席居住性は悪くない。
試乗車は売れ筋である1.5リッターディーゼルだが、このエンジンは回転感が滑らかで低回転域から振動も少なく音も静かと、実用ユニットとして文句のつけようがないフィーリングを備えている。アイシン製8速ATとの相性もよく低回転域からドライバビリティは良好。トップエンドに伸びはないが、普段乗りでの使い勝手の良さを知ればそれも意に介さない。但しACCなどのADAS機能が最新のメルセデスやBMWに対すれば、明らかに一段劣るのが惜しい。
ハンドリングは至って素直で懐も深く、安定性も抜群。そして乗り心地もフランス車に期待する初期アタリの柔らかさやコシの深さがしっかり備わっている。個人的には先述のステアリング形状がどうしても慣れないが、その動的資質はゴルフに肉薄するものだと思う。
マツダ 3に見るデザインの圧と操作性の妙
日本では先代までアクセラの名で親しまれたマツダ 3。海外での車名に合わせるかたちになったのもリブランディングの一環だが、その旗印的な車種ということもあり、内外装のデザインやクオリティはAクラスや1シリーズあたりに比べても遜色ないレベルに達している。が、それによって後方視界等が犠牲になっているのは確かだ。加えて先端が長く鋭利にみえる外観の印象から、狭所の取り回し時にも鼻先の長さが常に気にかかる。インパネ周りの割線のビジーさも含めて、デザインの圧の強さが個人的には疲れる感もあった。
試乗車は先代の白眉だった1.5リッターガソリンモデルだったが、ワインディングのような登坂路絡みになるとパワー的にカツカツの感は否めない。但しエンジンの回転フィールは爽快で回すことが苦にならないのが有り難い。平坦路では従順なスロットルマネジメントに速度がぴたりと追従し、街中~郊外領域でのコントロール性は抜群。また、踏力、踏量に応じて綺麗に減速Gを立ち上げるブレーキの扱いやすさも絶品だ。そしてストレートなドラポジや真円で細いスポークのステアリングなど、疲れにくく繊細な操作が可能な運転環境は他のどのモデルにも勝るポイントとなる。
人の感覚にどれほど忠実に応答するか、という点をこれほど綺麗に整えたクルマも今日びなかなかないものだが、そこに合わせ込むという意味では、曲がりのキャラクターは気持ちスローでもいいような気がするし、低速域の乗り心地ももっと穏やかであって欲しい。こういった点を擦り合わせれば、より大物感は高まるだろう。よりコンベンショナルな16インチタイヤの選択肢も試してみたいところだ。
ゴルフの隙の無さに見るエンジニア魂
今回乗った5モデルの中で仮にベストを選ぶとすれば、僕はゴルフを挙げる。まったく面白味のない選択も、偉大なるマンネリと称賛したくなる。最も設計年次が旧く、本国では既に8代目がデビューしているというのに、全方位ほぼ隙なしの性能を維持している理由は単なる熟成では片付けられない。背景にはゴルフというものに対するエンジニアの敬意や執念のようなものもあるだろう。
居住性は前席・後席共に至極真っ当で視界もクリーンだ。乗り心地は低速域から至って穏やかで、高速域に至るまで同様のタッチが維持される。一方で上屋姿勢のフラット感は遥かにスポーティなAクラスあたりにも劣らない。転がり感は軽く、遮音もしっかりしており静粛性も非常に高い。数少ないネガ要素はバルクヘッド辺りに溜まる振動がステアリングを僅かに揺することや、EPSの操舵感がややデッドなことで、これは7代目に一貫して感じられた癖のようなものだ。
コーナーではロール量は大きめの傾向だが姿勢は良く接地感は盤石、ハンドリングは切り始めの動きも穏やかで操舵ぶんだけリニアにゲインを高めていく。スポーティであろうと演出めいたところは一切ないが、反応の遅さなどは一切感じない。誰でも安心して乗ることができる抜群の安心感を備えている。
8代目ゴルフは大幅にデジタル化が進められたモデルとなるが、ローカライズの関係でどこまでの機能が搭載されるかはまだわからない。ADAS系もこのモデルでは概ねの機能が搭載されており、その制御もマツダ 3あたりよりこなれている。静的質感より動的質感を重視するクルマ選びであれば、この7代目は今でも十分検討に値する価値を備えているといえるだろう。
REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
【5つ星評価表】
デザイン
やはりマツダ3が突出している
1シリーズ ★★★
Aクラス ★★★★
ゴルフ ★★★★
308 ★★★
マツダ 3 ★★★★★
パッケージ
ゴルフのこなれぶりには感心
1シリーズ ★★★★
Aクラス ★★★
ゴルフ ★★★★★
308 ★★★★
マツダ 3 ★★★
パワートレイン
308の1.5ディーゼル+8ATは見事
1シリーズ ★★★★
Aクラス ★★★★
ゴルフ ★★★★
308 ★★★★★
マツダ 3 ★★★★
快適性
旧い2モデルの健闘が光る
1シリーズ ★★★★
Aクラス ★★★
ゴルフ ★★★★★
308 ★★★★★
マツダ 3 ★★★★
使い勝手
AIインターフェースを持つ2モデルの進化に注目
1シリーズ ★★★★
Aクラス ★★★★
ゴルフ ★★★★★
308 ★★★★
マツダ 3 ★★★★
【SPECIFICATIONS】
BMW 118i Play
ボディサイズ:全長4335 全幅1800 全高1465mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1390kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ(B38A15A)
総排気量:1499cc
ボア×ストローク:82.0×94.6mm
最高出力:103kW(140ps)/4600-6500rpm
最大トルク:220Nm/1480-4200rpm
トランスミッション:7速DCT
サスペンション:前シングルジョイントスプリングストラット 後マルチリンク
駆動方式:FWD
タイヤサイズ:前後205/55R16
最高速度:213km/h
0-100km/h加速:8.5秒
車両本体価格:375万円
メルセデス・ベンツ A200 d
ボディサイズ:全長4440 全幅1800 全高1420mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:1510kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ(OM654q)
総排気量:1949cc
ボア×ストローク:82.0×92.3mm
最高出力:110kW(150ps)/3400-4400rpm
最大トルク:320Nm/1400-3200rpm
トランスミッション:8速DCT
サスペンション:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
駆動方式:FWD
タイヤサイズ:前後225/45R18
最高速度:220km/h
0-100km/h加速:8.1秒
車両本体価格:410万円
プジョー 308 テックパックエディション BlueHDi
ボディサイズ:全長4275 全幅1805 全高1470mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1330kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ(DV5)
総排気量:1498cc
ボア×ストローク:75.0×84.8mm
最高出力:96kW(130ps)/3750rpm
最大トルク:300Nm/1750rpm
トランスミッション:8速AT
サスペンション:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
駆動方式:FWD
タイヤサイズ:前後205/55R16
最高速度:204km/h
0-100km/h加速:9.7秒
車両本体価格:320万7000円
フォルクスワーゲン ゴルフ TSI ハイライン マイスター
ボディサイズ:全長4265 全幅1800 全高1480mm
ホイールベース:2635mm
車両重量:1320kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ(EA211)
総排気量:1394cc
ボア×ストローク:74.5×80.0mm
最高出力:103kW(140ps)/4500-6000rpm
最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
トランスミッション:7速DCT
サスペンション:前マクファーソンストラット 後4リンク
駆動方式:FWD
タイヤサイズ:前後225/45R17
最高速度:212km/h
0-100km/h加速:8.4秒
車両本体価格:370万円
マツダ 3 15S ツーリング
ボディサイズ:全長4460 全幅1795 全高1440mm
ホイールベース:2725mm
車両重量:1340g
エンジン:直列4気筒DOHC(P5-VPS)
総排気量:1496cc
ボア×ストローク:74.5×85.8mm
最高出力:82kW(111ps)/6000rpm
最大トルク:146Nm/3500rpm
トランスミッション:6速AT
サスペンション:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
駆動方式:AWD
タイヤサイズ:前後215/45R18
最高速度:-
0-100km/h加速:-
車両本体価格:231万5989円
【問い合わせ】
BMW カスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
メルセデスコール
TEL 0120-190-610
プジョーコール
TEL 0120-840-240
フォルクワーゲン カスタマーセンター
TEL 0120-993-199
マツダコールセンター
TEL 0120-386-919
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