一番人気は「Lounge」
ヒョンデIONIQ5 Lounge WLTC交流電力量消費率:132Wh/km 一充電走行距離618km リチウムイオン電池
総電圧:653V 総電力量:72.6kWh
カーデザイナーとなった僕は、海外に出て初めて『スポーティ』という言葉の意味を知った【難波治のカーデザイナー的視点 “MY STYLE” Vol.02】
ヒョンデのBEV(バッテリーEV=電気自動車)、IONIQ5は2021年にデビューしている。ヒョンデは、2021年の欧州でのBEV販売台数で4位(1位はテスラ、2位VW、3位ルノー)である。IONIQ5は19954台を売り上げている。
さて、そのヒョンデIONIQ5。日本上陸に際して、かなり力を入れている。乗り込んでスイッチをONにすると「みちびき信号を受信しました」と日本の準天頂衛星からの信号を受信したことを知らせてくれる。ウィンカーのレバーも日本用に右側に変えている。生産は韓国工場だが、日本向けは日本向け専用ラインで行なっているという。
販売方法も「いま風」だ。オンライン販売のみで実店舗は持たない戦略をとる。販売は5月2日からスタートしている。ヒョンデモビリティジャパンの広報担当者に聞くと、セールスは順調だそうだ。ただ、オーダーを決意するまえに、ほとんどの人は実際に試乗しているそうだ(試乗はカーシェアの「Anyca」などでできる)。ほぼ日本での実績がないブランドだけに、実車との接点なしに買うのやはりハードルが高いのだろう。
IONIQ5のラインアップは
IONIQ 5(バッテリー容量58kWh 498km):479万円
IONIQ 5 Voyage(72.6kWh 618km):519万円
IONIQ 5 Lounge(72.6kWh 618km):549万円
IONIQ 5 Lounge AWD(72.6kWh・AWD 577km):589万円
となっている。
これまでのところ、一番人気は「Lounge」。72.6kWhでモード電費で618km走れて装備が充実しているグレードだ。価格は549万円。
スバル・ソルテラ EET-SS(FWD):594万円
日産アリアB6:539万円
あたりが直接のライバルとなるだろう。
さて、Loungeグレードを数日間借りだして、実際に使ってみた。
ヒョンデモビリティジャパンがある横浜で車両を預かったとき、モニターには「バッテリー89%、走行可能距離367km」と出ていた。累積の電費は「4.4km/kWh」。どう考えても、モード電費の一充電走行距離618kmは走れそうもない電費だ。これはどうやら筆者の前に乗った人たちが、BEVらしい加速をたっぷり楽しんだからだろう、と考えた。4.4km/kWhはいくらなんでも悪すぎる。
その証拠に、横浜から首都高を使って都内に戻り、一般路を走った70.7kmでは「6.9km/kWh」という数字になっていた。これなら納得だ。
WLTCモード電費は132Wh/kmだから、7.58km/kWhがある意味理論値だ。エアコンを使って普通に走れば、もちろんモード電費通りにはいかない。
何にも似ていないスタイルは魅力のひとつ
IONIQ5のボディサイズは
全長×全幅×全高:4635mm×1890mm×1645mm ホイールベース:3000mm
である。全長はともかく全幅1890mmはちょっと広い。もっと広いのはホイールベースだ。3000mmというのは、驚くほど長い。全長5335mmのトヨタ・センチュリーのホイールベースが3090mmなのだから、IONIQ5のそれはやはり長い。
全長×全幅×全高:4635mm×1890mm×1645mm ホイールベース:3000mm 最小回転半径:5.99m
トレッド:F1638mm/R1647mm 最低地上高:160mm車両重量:1990kg 前軸軸重950kg 後軸軸重1040kgそのおかげで前後のオーバーハングは短く、キャビン空間には余裕がある。いいことずくめ……というわけにはいかないのが、クルマだ。最小回転半径が5.99mもあるのだ。ここは駐車やUターンなどでちょっと気を遣う。
IONIQ5のプラットフォームはヒョンデの電動車向けプラットフォームのE-GMPだ。ベースはRWD(後輪駆動)で、上級モデルはフロントにもモーターを積む。Loungeは1モーターのRWDである。エンジン車で後輪駆動車となると、たいてい前輪の切れ角を大きくとれるので、サイズの割に最小回転半径は小さくできること多いがIONIQ5は約6mなのだ。
エクステリアデザインは、ほかのどのモデルにも似ていない。これはIONIQ5の大きな魅力のひとつだ。好き嫌いが分かれるデザインかも知れないが注目度は非常に高い。存在感があるのは、新規参入組としては重要だ。
パラメトリックピクセルというデザインを採用。個性的だ。走りはどうか? リヤに積んだモーターは160kW(217ps)/350Nmだ。車重は1990kg。スペックは最新のBEVの2WDモデルとしてクラス標準だ。車重2トンで350Nmのエンジン車とは違って、BEVはモーターのトルクの出方のおかげで、走りは力強いし、レスポンスがいいから、追い越しでもほんの少しアクセルに力を入れれば間髪入れずにぐいっとクルマは前に出てくれる。じつに気持ちいい。
少し気になったのはステアリングフィールだ。車体(サイズ・重さ)に対して、やや軽すぎで心許ない感じがした。
室内長×幅×高:2013mm×1631mm×1209mm センターコンソールは、前後可動式。足元はゆったりしている。Loungeは本革シート。電動パワーシートだ。本革シートの革は、亜麻の種から抽出した植物性オイルを活用して加工した。シートとドアトリムにはリサイクル透明PETボトルから作られた糸を使用。シフト操作は、ステアリングの右下にあるレバーで行なう。ひねることでD・N・Rを切り替える。レバーのトップを押すと「P」になる。先進運転支援システムは最先端のシステムが載っているが、ここはもう一段の洗練が必要だ。首都高湾岸線、東名高速、第三京浜、横浜横須賀道路などで使ってみたが、ハンドル操作がうまいとは言えない。となるとちょっとコワイという気持ちが湧いてくる。となるとクルマとの信頼関係が築きにくくなって……というサイクルに陥ってしまう。
ステアリングにあるパドル(左が回生力を強める、右が弱める)で回生力を調整できる。
もっとも回生力を強くすると「i-PEDAL」がONになり、アクセルの操作だけでかなりの速度調整ができる。日産のワンペダルと同じような感じだ。充電性能は?
今回の試乗のテーマのひとつが「充電」だ。近年、欧米のBEVは急速充電性能を大きく上げている。
高出力充電への対応では
テスラ・モデル3:250kW
ポルシェ・タイカン:270kW
アウディe-tronGT:270kW
ヒョンデIONIQ5:350kW
日産アリア:130kW
トヨタbZ4X :150kW
となっている。IONIQ5の急速充電性能は極めて高いのだ。
しかし、現在、一般的な急速充電器(CHAdeMO対応)は、多くは50kW以下だ。これでは性能を生かし切れない。首都高速大黒PAにある新しい急速充電器は90kWと高出力なのは、すでに確認済み。ここでIONIQ5も充電しようと考えていた。
首都高速大黒PAの新しい急速充電器。能力的には90kWの高出力で充電できる(はず)。充電口は右リヤ。急速充電用が後ろ、普通充電用が前。リッドは電動で開閉する。他愛ないことだが、ちょっとうれしい。リーフe+(62kWh 458kmモデル)で「電費」と「急速充電」について考えてみる日産リーフは、BEV(電気自動車)の代表モデルである。世界のBEVの標準器となるはずだったリーフは、次々と登場するニューモデルの前に、若干存在感が薄くなっている気が…motor-fan.jp90kWで30分間急速充電すれば、45kWh分の充電ができるはず。これは理論上だが、40kWh程度は充電できるのはないか、と思って大黒PAへ向かった。
が、しかし、30分間で充電できたのは「9.5kWh」だった。つまり、20kWの出力しか出なかったのだ。どうやら、急速充電器に注意書きがあった「タイカン、e-tronGT」などと同じ状況になってしまったようだ。CHAdeMO対応でも「相性が悪い」と所期の充電性能が発揮できないというのは、BEV普及の過程で解消すべき大きな問題だ。
がっかりしながら自宅に帰った。自宅ガレージには3kWの普通充電のコンセントがある。急速充電で100%までもっていくのは難しいから、ここは普通充電で、と思ったのだが、車載のケーブルを挿そうとしたら、これが挿せない。見てみると、ケーブルは「100V対応」となっている。
問い合わせてみたら、IONIQ5に標準で付属するケーブルは100V対応のものだという。72.6kWの大容量バッテリーを搭載しているのだから、ここは早急に200Vケーブルに変更してほしい。
100V 15A(1.5kW)10時間普通充電すると15kWh(実際はそれよりは少し少ないけれど)
200V 15A(3.0kW)10時間普通充電なら30kWhになる。
一晩で充電できる量が約100km分なのか200km分なのかは大きな違いだと思う。
自宅近くの三菱ディーラーにある急速充電器(50kW)で充電。モードの一充電走行距離の618kmは無理としてもフル充電なら450kmほどは走れるはず。今回は普通充電ができなかったので、急速充電での対応となったが、IONIQ5は90%までは急速充電で対応できる。90%で404kmの航続可能距離、という表示だった。
今度は別の試乗会に出向くために箱根までドライブしてみた。東名~小田原厚木道路~箱根ターンパイク~芦ノ湖スカイラインというようなコースで電費は6.4km/kWhだった。もちろん楽々往復できたし、特別なエコランを強いられたわけではない。
ヒョンデIONIQ5と5日間を過ごして737km走行した。平均すると電費は6.6km/kWhくらいだった。72.7kWhのバッテリー容量のうち多めに見積もって70kWhが使えた(Uasable Battery)だとして、
6.6×70=462km
がリアルワールドの一充電走行距離ということになる。
1回の充電で400km以上走れれば、大多数の人たちにとっては実用上問題はないだろう。IONIQ5は、リアルワールドで400~450km走れる新世代BEV、つまり日産アリア、トヨタbZ4X、スバル・ソルテラ、アウディQ4、メルセデス・ベンツEQA……のなかで、高い競争力を持ったBEVだと言える。とくにコストパフォーマンスで言えば、もっとも高いと言っていい。次はBEVもいいかな、と考えている人は、試乗リストに載せてみて損はない。ただし、クルマはメインテナンスが必ず必要だ。ヒョンデの再上陸が成功するには、サービス体制の充実が重要だ。そこは、現在進行形で関係者が努力を続けているという。クルマのリファインとともに、そちらにも注目していきたい。
ボンネットフードを開けると、「EV」と書かれたカバーがある。これを開けてみると……。なんとラゲッジスペースになっている。容量は57ℓ。ミシュランの技術協力を受けたPRIMACY 4 サイズは、235/55R19。
リヤサスペンションはマルチリンク式フロントはマクファーソンストラット式ヒョンデIONIQ5 Lounge 全長×全幅×全高:4635mm×1890mm×1645mm ホイールベース:3000mm 車両重量:1990kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rマルチリンク式 リヤモーター EM17型交流同期モーター 最高出力:160kW(217ps)/4400-9000rpm 最大トルク:350Nm/0-4200rpm リチウムイオン電池 総電圧:653V 総電力量:72.6kWh WLTC交流電力量消費率:132Wh/km 一充電走行距離618km 車両価格:549万円
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