2021年5月23日に決勝を行ったF1モナコグランプリは、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが勝ち、1992年アイルトン・セナの駆るマクラーレン・ホンダ MP4/7A以来となるホンダエンジンが勝利を飾った。
50代の筆者はこの2つのレースを中継で見ることができたのだが、29年という自分の人生の半分以上の月日が流れたことに驚かされた瞬間だった。
「自動運転で『ナイト2000』は作れるか」ホンダ 杉本洋一氏インタビュー(後編)【自律自動運転の未来 第13回】
まだ免許証も持たない高校生の頃から、F1のボディに書かれた“POWERED by HONDA”という文字をテレビ画面で見てきた。そう、自分にとってホンダ=F1のエンジンを作るメーカーであり、常勝軍団となった第二期を目の当たりにしてきた。
そんな自分の初めての愛車はそういった経緯もあってワンダーシビック25iだったし、2台目も1991年に登場した2.2L、直4DOHC VTECエンジンを搭載した4代目プレリュードだった。
この2.2L VTECエンジンのどこまでも回っているようなフィーリングは当時20代の自分にとっては麻薬のようなもので、箱根ターンパイクや嵐山・高雄パークウェイなど様々なワインディングを走りに行った。
ホンダ=最高のエンジンメーカーという自分にとって、2021年4月23日に行われた社長就任会見の「2040年にグローバルでEV、FCVの販売割合で100%を目指す」という発表は非常にショッキングなニュースだった。
きっと多くのホンダファンも驚いたことだろう。そこで、ここでは中古車は高騰しているが、乗っておきたいホンダのピュアエンジン車と中古車価格がお手頃で狙い目のピュアエンジンモデルを紹介していきたい。
文/萩原文博
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 ホンダ
【画像ギャラリー】ホンダ伝家の宝刀 VTEC搭載の名車がズラリ!!
■初代NSX/流通台数:35台 中古車相場:約460万~約1480万円
1990年9月に誕生した唯一無二の国産スポーツカー、初代NSX。オールアルミ製のモノコックボディが大幅な軽量化を可能にした
初代NSXの中古車情報はこちら!
ホンダの中古車で最も値上がり幅が大きいのが、1990年9月に登場した初代NSXだ。C30A型3L、V型6気筒DOHC VTECエンジンをミドシップに搭載したスポーツカー。
搭載するC30A型3L、V型6気筒エンジンは、5速MT車は最高出力280ps、4速AT車は最高出力265ps、最大トルク30.0kgmを発生する。
出力と重量のバランスからコンパクトに設計できるV6を採用。そのV型の角度は全幅・全高ともに圧倒的にコンパクトな90°Vを実現。しかも120°等間隔爆発も可能としている。
そしてボア90mm×ストローク78mmという吸・排気特性に優れたビッグボア・ショートストローク設計や高圧縮比10.2を達成したペントルーフ型燃焼室を採用。
その結果、3L自然吸気エンジンとして、当時最大級の最高出力280psを7300回転で発生。しかも、チタンコンロッドなどの採用で、5速MT車は8000回転まで廻る高回転化を実現している。当時のテスト値で0~100km/h加速は5.5秒というハイパフォーマンスだった。
現在、初代NSXの中古車は35台流通していて、価格帯は約460万~約1480万円。1997年2月のマイナーチェンジで3.2Lエンジンへと変更されるが、3.2Lエンジン搭載車の中古車はほとんどが価格応談となっているため、実際には最高値は2000万円以上と考えたほうが良いだろう。
■初代インテグラタイプR/流通台数45台 中古車相場:約128万~約890万円
FF最強のハンドリングマシンと称された初代インテグラタイプR。搭載されるB18C型1.8L、VTECエンジンは最高出力200ps/18.5kgmを発生
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続いて値上がりが目立つのが、1995年8月に登場した初代インテグラタイプRだ。搭載するB18C 96spec.Rと呼ばれる1.8L、直列4気筒DOHC VTECエンジンは、ベースとなったエンジンを傑出した高回転域の伸び、ピックアップ性能を発揮する高出力エンジンとするためにチューニングを行っている。
まずは、伸びのある高出力エンジンとするために、ピストンの形状を変更し、圧縮比を高めている。ただピストンヘッドを盛り上げるだけでなくピストンヘッド内部の肉厚を削り込み、ピストン重量を増加させることなくベースエンジンの10.6から11.1へと大幅な圧縮比アップを実現した。
そして、熱価7番の高性能白金プラグを採用することで、燃焼温度が高まる高回転域においても安定的な燃焼を確保している。
また、高圧縮比を実現した燃焼室に、より大容量の混合気を送り込むため、これまでデュアル構造だったインテークマニホールドをシングルポート化。シンプルかつ口径を広くとれるこのポートの採用により、特に高回転域の吸気量を増加させている。
さらに、インテーク側のバルブ本体の軸を細径化した上でバルブ傘部を薄くして軽量化するとともに、バルブスプリング強化と軽量化を両立するために断面を楕円とした大小径2つのスプリングを重ねる構造を採用。高回転域でのバルブジャンプを防ぎ、スムーズなバルブ追随性を実現している。
さらにフリクションの低減技術を施すことで、最高出力200ps、最大トルク18.5kgmを達成。リッター当たりの111ps、そして最大許容回転数8400回転という高回転型エンジンを実現したのだ。
現在、初代インテグラタイプRの中古車は45台流通している。中古車の価格帯は約128万~約890万円となっていて、走行距離5万km以下、修復歴無しという中古車は約480万円からと高値となっている。走行距離が7万km以上でも350万円以上と手が届かないクルマになりつつある。
■初代シビックタイプR/流通台数68台 中古車相場:約150万~約799万円
6代目ミラクルシビックに追加されたシビックタイプR
初代シビックタイプRの中古車情報はこちら!
続いては根強い人気を誇る1997年8月に登場した初代シビックシビックタイプR。SiRに搭載されている1.6L、直列4気筒DOHC VTECエンジンをベースにホンダならではの高出力技術を採用したB16B 98spec.Rと呼ばれる1.6Lエンジンを搭載。
エンジンの出力向上に効果的な高回転を実現するために、バルブ系を強化。インテーク側のバルブスプリングを楕円断面の二重スプリングとし、バルブ軸径を一部細軸化し傘部をスリム化。軽量化しながら広開角・高リフトに対応する高強度を実現するとともに、高回転域でのバルブ追随性も高めている。
また、コンロッドを軽量化し、回転バランスに優れたフルバランサー8ウエイト仕様のクランクシャフトを採用することで、高回転化に対応させている。
さらに、より多くの混合気を燃焼させ高いトルクを得るために、吸排気系のパフォーマンスを高めている。吸気系は、バルブシートの開口部を60°から45°へと鋭角化し、バルブのスリム化とあわせて吸気抵抗を低減。排気系は、全体を大径化した上で、エキゾーストパイプの集合部を鋭角化。
また、サブチャンバーを追加し、プリチャンバーの大型化で流量をアップした。さらに、さらにすべてのポート内段差を、ハンドメイドで一基一基丹念に研磨する工程を設け、吸排気抵抗を一層低減させている。
加えて、吸排気系の抵抗低減にあわせ、高い回転域においても、吸気・燃焼・排気を効率良く行えるよう、バルブタイミングとリフト量もチューニングを施した。
これにより、高回転域のトルクを大きく向上させるとともに、VTEC技術とあわせ低回転域のトルクも充分に確保している。
B16B型1.6L、VTECエンジンは最高出力185ps/16.3kgmを発生。リッターあたり116psの高出力をたたき出した
また、燃焼効率を高める圧縮比をアップさせるため、まず、ピストンヘッドを隆起させるとともに内部を削り込み、重量を増加させることなく圧縮比をベースエンジンの10.4から10.8へアップ。あわせて熱価7番の白金プラグを採用し、燃焼温度が高まる高回転域においても安定的な燃焼を実現した。
その結果、B16B 98spec.R型1.6L、直列4気筒DOHC VTECエンジンは最高出力185ps、最大トルク16.3kgmを発生。当時自然吸気エンジン世界最高峰のリッター当たり116psを実現し、回転限界を8200回転から8400回転まで高めている。
現在、初代シビックタイプRの中古車は68台流通していて、価格帯は約150万~約799万円と幅広くなっている。
走行距離10万km以上という中古車でも新車時価格を上回る約350万円以上のプライスが付いている。価格は高いが、コンディションの見極めが難しいのが初代シビックタイプRの中古車の特徴だ。
■スポーツシビックSiR/流通台数12台 中古車相場:約139万~約418万円
5代目スポーツシビックのSiR系グレードにはB16A型1.6L、VTECエンジンを搭載。最高出力は170ps/16.0kgmと先代よりパワーアップ
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シビックのハッチバックでは1991年9月に登場したスポーツシビックの1.6L直列4気筒DOHC VTECエンジンを搭載したSiR系中古車の値上がりも目立つ。
3種類のVTECエンジンを設定するスポーツシビックのなかで、最もハイパワーなのが、最高出力170ps、最大トルク16.0kgmを発生するB16A型1.6L、直列4気筒DOHC VTECエンジン。
このエンジンは、従来型より圧縮比を高圧縮比10.4に向上。またバルブタイミングの見直しとバルブリフト量の変更を行なうとともに、吸排気抵抗の低減により吸排気効率を向上させている。
この結果、低回転域と高回転域とで、吸気及び排気バルブともにそれぞれに最適なバルブタイミングとリフト量に切り換えることで、吸排気効率を極限まで高めて全域高性能を実現したのだ。
スポーツシビックのSiR系の中古車の流通台数は12台とかなり少なくなっているが、価格帯は約139万~約418万円とかなり幅広い。エンジンを載せ替えている中古車も多くなっていて、ノーマル車を見つけるのは困難となっている。
■S2000/流通台数180台 中古車相場:約177万~約1100万円
21世紀の「S」シリーズとして世に送り出されたS2000。ホンダ車として珍しいFRスポーツとして注目を浴びた
こちらは2005年以降に発売された後期型。排気量が2Lから2.2Lにサイズアップ
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続いては、最近値上がり傾向が落ち着き高値安定へと動きが変わってきたS2000だ。1999年4月に登場したS2000はホンダが開発した久しぶりのFR車として大注目を浴びた。
そのS2000に搭載されているエンジンが、F20C型2L、直列4気筒DOHC VTECエンジンだ。最高出力250ps、リッター当たり125ps、最大トルク22.2kgmという世界最高水準の高出力は、フリクションを低減する進化したVTEC構造を中心に、ショートストローク化、主運動系往復部重量の低減、低フリクションロス化、高剛性化などによる高回転対応と、充填効率の向上などにより達成。
レスポンスは、インテークマニホールド、吸気ポートのストレート化、容量の最適化などにより達成している。また、平成12年排出ガス規制値を50%以上下回る低排出ガス化は、触媒の急速な温度上昇を実現する新技術であるマルチポート排気2次エアシステムとメタルハニカム触媒を中心に、コールドスタート時からの効率的な排出ガス浄化技術を構築し達成。
しかも10・15モード走行では、12.0km/Lの低燃費を実現している。2005年11月のマイナーチェンジでは2.2Lエンジンへと変更されるが、前期型の2Lエンジンは許容回転数が9000回転という超高回転型エンジンだった。
現在、S2000の中古車は180台流通していて、価格帯は約177万~約1100万円。車両本体価格500万円を超える中古車のほとんどが2.2Lエンジンを搭載した後期型となっている。
■3代目プレリュード/流通台数:6台 中古車相場:約68万~約179万円
3代目プレリュードはS13型シルビアとともにデートカーとして話題に。後輪が前輪と逆位相に回転する4WSを搭載したことで旋回性能が向上した
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かつて、自分も所有していた1991年9月に登場した3代目プレリュードも値上がり傾向となっている。上級グレードのSi VTECにはH22A型2.2L、直列4気筒DOHC VTECエンジンを搭載。
このエンジンは、DOHC VTECと可変吸気システムを採用した爽快ワイドトルクが特徴で、アクセルワークに忠実に、高回転まで一気に吹け上がる爽快な加速感が魅力。
最高出力200ps、最大トルク22.3kgmはこれまで紹介したエンジンと比べるとスペック的には特筆するものはないですが、DOHC VTECと可変吸気システムを組み合わせ、2000回転から7000回転以上の全域にわたってリッター当たり9kgm以上ものトルクを発揮するため、誰でも扱いやすいのが特徴。
現在、3代目プレリュードの中古車は6台しか流通していませんが、中古車の価格隊は約68万~約179万円。平均価格も117.7万円まで高くなっている。ノスタルジーに浸って手軽に買えるクルマではなくなってしまった。
■S660/流通台数:91台 中古車相場:約136万~約400万円
2022年3月をもって生産を終了するとアナウンスされたS660。ミドシップレイアウトを採用した貴重な軽オープンカーだ
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そして、最後に紹介するのは現在最もホットなS660です。中古車の流通台数は激減し、中古車の平均価格はわずか1ヵ月で32万円もアップし、現在約207.6万円と値上がり傾向は現在も進行形だ。
S660に搭載されているエンジンは、S07A型660cc直列3気筒DOHCターボです。Nシリーズに搭載されているエンジンをベースにチューニングを施し、6速MT車の最高許容回テンスは7700回転となっている。
また、ターボチャージャーにハイレスポンスタイプを採用。アクセルを軽く踏み込んだパーシャル状態( 加速も減速もしない状態)からのレスポンスを向上させ、コーナーから立ち上がる際に、アクセル操作に対して遅れ無くパワーの立ち上がる気持ちよさを追求。さらに、大型のラジエターを採用することでエンジンの冷却効果も向上させている。
現在、S660の中古車の流通台数は91台で、中古車の価格帯は約136万~約400万円となっている。
■インテグラiS/流通台数:37台 中古車相場:約23万~約130万円
インテグラiS/タイプSは2代目シビックタイプRにも搭載されているK20A型エンジンのレギュラーガソリン仕様を積む、お手頃なi-VTEC搭載モデル
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これまでは、中古車の価格が高騰している車種をピックアップしてきたが、ココからは現在でもリーズナブルな価格で“ホンダのエンジン”を楽しめるクルマを3台紹介する。
まずは、2001年7月に登場したインテグラiS(後期型はタイプS)に搭載されているK20A型2L直列4気筒DOHC i-VTECエンジンだ。
このタイプRは同じ型式ながら、ハイオク仕様となっているが、こちらはレギュラー仕様で、最高出力160ps、最大トルク19.5kgmを発生。ホンダ独創のVTEC機構に加え、吸気バルブタイミングの位相も連続的に制御するVTC(Variable Timing Control)を組み合わせた、高知能バルブタイミング・リフト機構、i-VTECシステムを採用。
また、低回転域では長く、高回転域では短く管長を制御して常に最適な吸気慣性効果を獲得するロータリーバルブ式可変管長インテークマニホールドを採用。排気抵抗を低減する“e”断面のデュアルエキゾーストマニホールドとあわせ、優れた低中速トルクを実現する。
現在、最終型インテグラの中古車は37台流通していて、中古車の価格帯は:で手に入れることができる。
■2代目シビックタイプR/流通台数:25台 中古車相場:約85万~約270万円
2代目シビックタイプRはイギリスのスウィンドン工場で生産し日本に輸入された。搭載されるK20A型2L、直4i-VTECエンジンは最高出力215ps/20.6kgmを発生。DC5型インテグラタイプRと同じだが、排気系の差で5ps低くなっている
2代目シビックタイプRの中古車情報はこちら!
続いては、歴代シビックタイプRの中で最もリーズナブルな相場となっている2001年10月に登場した2代目シビックタイプRだ。搭載するK20A型2L、直列4気筒DOHC i-VTECエンジンは、ハイオク仕様で最高出力215ps、最大トルク202Nmを発生する。
タイプR用エンジンとして吸・排気系、回転系を研ぎ澄まし、8400回転のレブリミットまで、鋭く伸びのよい加速と、優れたアクセルレスポンスを追求。
日常領域からサーキットまで、高次元の走りの楽しさを実現している。中古車の流通台数は25台と少なめだが、価格帯は約85万~約270万円とまだ100万円以下でも手に入れることが可能だ。
■アコードユーロR/流通台数:83台 中古車相場:約50万~約320万円
7代目アコードのスポーツモデル、ユーロR。搭載されるK20A型2L、直4i-VTECエンジンはユーロR専用チューンにより、最高出力220ps/21.0kgmを発生
CL7型アコードユーロRの中古車情報はこちら!
そして、最後に紹介するのは、インテグラや2代目シビックタイプRと同じK20A型2L直列4気筒DOHC i-VTECエンジンを搭載する2002年10月に登場したアコードユーロR。
ハイオク仕様で最高出力220ps、最大トルク21.0kgmを達成し、リッター当たり110psを実現したユーロR専用エンジンを搭載している。さらにこのユーロRは4ドアセダンながら、6速MTのみというこだわりも半端ない。
現在アコードユーロRの中古車は83台流通していて、価格帯は約50万~約320万円となっている。
個人的にはホンダといえば、どこまでも回っていくような自然吸気エンジンが魅力と思っている。
しかし、今後はそのようなエンジンが登場する可能性は低くなっている。奇しくも現在、お買い得と紹介したクルマにはK20A型2L、直列4気筒DOHC i-VTECエンジンが搭載されているが、これからはこのクルマたちも徐々に値上がり傾向となる可能性は高い。
なかでも実用性を兼ね備えたアコードユーロRはMTのみだが、狙い目の1台だと思うので、値上がりする前にゲットしてもらいたい。
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