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帝王トヨタの牙城を崩すのは諦めたのか!? 日産とホンダが打つべき次の一手

掲載 更新 139
帝王トヨタの牙城を崩すのは諦めたのか!? 日産とホンダが打つべき次の一手

 日本国内では長期間にわたりトヨタの圧勝状態が続いている。常にトヨタがトップに立っているが、トヨタと日産はお互いを強烈に意識し合ってきた。いっぽうその間隙をついてホンダが躍進してきた。

 その結果、トヨタの標的はホンダに移り、ホンダを強く意識するようになった。

どうしたプリウス ついにベスト10圏外に HV代名詞苦戦の実態

 しかし、トヨタを脅かしてきた日産、ホンダとトヨタとの差は開くばかりで、特にここ数年はトヨタの勢いだけが強調されるようになっている。

 トヨタの独走に対し、日産、ホンダはさじを投げたようにも見えるが、どのような戦略が必要なのか、どうすべきなのかについて御堀直嗣氏が考察する。

文:御堀直嗣/写真:NISSAN、HONDA、TOYOTA、ベストカーWeb編集部

【画像ギャラリー】トヨタの独走を阻止する起爆剤として期待される 日産&ホンダそれぞれの新型EVの詳細をチェック!!

マーチを愛好してきた人への次の回答が欲しい

 トヨタに対し、日産で商品構成に不足があるとするなら、それは登録車のコンパクトカーのさらなる充実ではないだろうか。

 もちろん、ノートはe-POWERを搭載して実績を伸ばし、一般社団法人日本自動車販売協会連合会の乗用車ブランド通称名別順位において、2020年1~6月の集計で5位に位置する。

2012年のデビューながら、2016年にe-POWERという武器を得て息の長い人気モデルとなっているノートは2020年秋に新型登場予定

 それより上位の各車は、2019年から2020年にかけてフルモデルチェンジをした新車効果があると考えられ、2012年に発売されて以降8年目に入ったノートの手堅さがうかがえる。

 しかし、上位4台のなかのフィットやヤリスの対抗車種として、マーチの名がないのは寂しい。しかもベスト50にさえ登場しないのである。

 国内では、軽自動車人気が高止まりしており、日産のデイズとルークスは、一般社団法人全日本軽自動車協会連合会の通称名別新車確報の2020年1~6月の集計で、デイズが4位、ルークスが11位となっている。

 2020年3月から発売のルークスは6月の単月で3位に入る好調ぶりだ。それでも、フィットやヤリスが高い人気を得ている以上、これまでマーチを愛好してきた消費者に対する次の回答が欲しいところだ。

2010年にデビューしたマーチは、2020年4月の一部改良でようやく衝突被害軽減ブレーキが設定された。販売は続けられるが現行の浮上の可能性はほぼない

5ナンバーサイズのクルマに入り込む余地なし!?

 また、上位人気車種として、ダイハツとトヨタが共同開発したコンパクトSUV(スポーツ多目的車)のロッキー/ライズの好調も目立つ。トヨタライズが常に1~2位あたりで推移しているのが実態だが、販売力の差もあるだろうから、ロッキー/ライズの商品性が広く消費者の心をとらえているに違いない。

欧州で販売されているマイクラ。欧州などではマーチをマイクラとして販売してきたが、このモデルでマイクラはマーチと切り離された

 こうした状況に対し、日産は海外でマイクラとして販売してきたマーチを、すでに欧州向けではモデルチェンジしている。ただし新型マイクラは車幅が1.7mを超えており、国内では3ナンバー車となる。

 日産は、中期経営計画のなかで車種の削減を決めており、資源を集中すべき車種を、C/Dセグメントと、EVとスポーツという分野に絞るとしている。ここに5ナンバー車の話はない。

日産は100%EVのクロスオーバーSUVのアリアのプロトタイプを2020年7月に公開し、2021年から日本で発売を開始すると発表

軽専門のNMKVの業務拡張の可能性

 そこで一案となるのが、軽自動車で実績を上げている三菱自との提携のさらなる強化だ。

 両社によって出資されたNMKV(日産・三菱・軽・ヴィークル)社は軽自動車専門の合弁会社だが、そこから生まれた最新のルークスは、軽スーパーハイトワゴン最良の一台といえる。

スーパーハイトワゴン軽自動車として最後発となるルークスは質感、操安性、安全性能などクラストップのポテンシャルを持っている

 そしてダイハツは、DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を活用し、軽の技術をコンパクトカーに活かすとしてロッキー/ライズを開発し、上記の販売成績を残している。

 そこからすれば、NMKVの事業分野を少し拡大し、コンパクトSUVとマーチに続く車種の開発ができないだろうか。それは、三菱自のミラージュにも活かせるだろう。

コンパクトカーの電動化が日産浮上のカギ

 その際に、日産でカギを握るのがe-POWERだ。e-POWERへの注目の高さは、すでにノートやセレナで実証済みだ。

 2020年6月に発売されたキックスは、わずか3週間で9000台の注文を得て、年内の納車が間に合うかどうかというほどである。

ジュークの後継として2020年6月にデビューしたキックスはe-POWERのみの設定。ノートと比べると大幅に進化している

 トヨタにないのが、電気自動車(EV)を基にしたモーター駆動のハイブリッド車(HV)であり、それによってアクセルのワンペダル操作であるe-POWERドライブが日産の特徴である。

 またモーター駆動と相性のよいプロパイロットの制御の洗練さにもつながっている。

 ルークスに搭載されたマイルドハイブリッドのターボエンジンはコンパクトSUVにも通じるようなゆとりを持つ。

キックスで第2ステージに突入したe-POWERを搭載する次期ノート。シエンタ、フリードに対抗する3列シートモデルの派生車にも期待がかかる

 あるいは、軽自動車用の3気筒エンジンを活用したe-POWERもできるのではないか。ノートで使うe-POWERを次期マーチやコンパクトSUVに活用する方法もあるだろう。

 軽自動車において、マイルドハイブリッドを搭載するのはスズキと日産、三菱自のみであり、ダイハツやトヨタの軽自動車には品揃えがない。

 電動化を踏まえたコンパクトカーを充実すると、日産はさらに注目されるようになるのではないか。

東京モーターショー2019で世界初公開した軽EV。三菱が水島工場内のEV用生産設備への投資を発表しているように力が入っている。日産にとって重要なモデルとなる

新型ヴェゼル、ホンダeは期待のモデル

 ホンダは、これまでも5ナンバー車の品揃えを守ってきた。そのなかで、2013年の発売から7年目に入るヴェゼルは2021年に新型が登場すると言われている。

 現行ヴェゼルは2019年、1.5Lのガソリンターボエンジンを追加し商品力に幅を持たせたが、試乗すると競合他社に比べればさらなる改良点が見えてくる。ハイブリッドもi-DCDのままで旧態化は否めないから新型に期待がかかる。

新型ホンダヴェゼルは2021年のデビューが有力視されている。ハイブリッドシステムはフィットと同じe:HEVとなるのは間違いない期待のSUV

 さらに期待するところは、今年ホンダeが発売されるように、さらなる電動化への前進だ。

 日産はアリアを2021年発売予定だ。輸入車で高い人気を博しているボルボXC40も2021年はEVが加わるだろう。

 マツダのMX-30のEVモデルはいつ日本に導入されるかが定かではないが、いずれにしても、小型SUVにEVの流れが加速するかもしれない。トヨタへの対抗を考えるなら、EV化を早く推し進める必要があるだろう。

2020年8月末に発表される100%EVのホンダe。キュートなデザインとホンダが手掛けたEVということで世界が注目している

クルマだけにとどまらないのがホンダの強み

 その際、ホンダらしさはどこに示せるだろう。やはり、2輪・4輪・汎用の各事業を持つ特徴を活かしていくことだと思う。

 ホンダeは、一充電走行距離を約200kmとした割り切りを見せた。実際、日常的なEVの利用では実走行距離で200km走れたら十分だろう。

 それ以上走行するのであれば急速充電をすればいいし、レンジエクステンダーによってエンジンで発電機を回し、補足してもいい。

EVは航続距離を延ばすことに主眼が置かれているなか、ホンダeは実用EVとして航続距離を200kmと割り切っている。それが吉と出るか凶と出るか

 かつて、1990年代に米国のアラン・ココーニという人物が、当時は鉛酸バッテリーしかなかったので走行距離は限られたが、シビックをEVに改良し、ロサンゼルスに住む彼にとって十分であった。これに、レンジエクステンダーを牽引する方式でつなぎ、全米を横断してもいる。

 ホンダは、汎用部門で発電機を販売しているし、コージェネレーション用に高膨張比(アトキンソンサイクル)のエンジンも実用化している。

 あるいは、石油液化ガス(プロパンガス=カセットボンベ)で動く発電機も市販した。そうしたさまざまな知見を活かせるのではないか。EVや発電機は、災害時などの停電に活用することも可能になる。

ホンダの汎用製品はさまざまなアイデアを具現化。クルマに生かせそうなものもたくさんある(写真はカセットボンベで発電するEU9i-GB)

ホンダだからできること

 将来の電動化社会を想像すれば、UNI-CABや電動スクーターの開発などの経験を活かした電動車椅子を開発すれば、障害を持つ人や高齢者が自立した生活をする助けともなるだろう。

 車椅子も電動という動力を持てば、ホンダがいうパーソナルモビリティの一角をなすのではないか。

ホンダは早くからライフケアビークルを商品化してきた。今こそ健常者だけでなく障害を持つ人に夢を与えてほしい

 車椅子は一般的に黒など地味な色遣いが多いが、ホンダF1のナショナルカラーであったアイボリーのフレームに、椅子の背中に赤い“H”のマークが付いたら、車椅子で外出することも嬉しい気持ちになるのではないか。

 フィットには、国内で唯一、障害を持つ人が自分で運転できる補助装置のテックマチックを設定している。EVの素早く正確な制御によって、より安全なクルマとなっていくだろう。

ホンダ一丸となって夢に向かっていく

 以上は、すべて夢のような話かもしれない。

 しかし、ホンダの企業メッセージは「パワー・オブ・ドリームズ」であり、夢の力という意味だ。

 夢を実現しようとする次世代を見据えた商品群が実現するなら、ホンダ独創の商品力となっていくだろう。これこそがブランディングである。

医療機器分野でもホンダの活躍は目覚ましく、歩行アシストも商品化して、歩行が困難になった人をサポートしている

 単に一台のクルマをホンダらしくEVにするだけでなく、企業として未来を描く姿をホンダならではの事業展開で組み立てていくことができるはずだ。

 クルマは、これからいよいよ面白くなっていくのである。

 本田宗一郎が「世のため人のため」を思い、エンジン付き自転車を発明したことがホンダの創業につながっている。しかし従来は、健常者のための世のため人のためであった。

 しかし上記の商品群を実現したら、それらは万人のためのパーソナルモビリティになっていく。これこそが、「世のため人のため」の神髄だろう。

 2輪・4輪・汎用を総合的に活用し、ホンダ一丸となって夢に向かっていくことが、トヨタの対抗勢力となっていく道である。

創業者の本田宗一郎氏の夢であった航空産業にも参入。その夢を実現したホンダには、クルマについても一丸となって夢に突き進んでほしい

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