BMWのミドルクラスSUV、X3に新たな選択枝として追加されたEVモデルが「iX3」。見慣れたBMWならではのスタイルと、EVがもたらす走りの新しい感覚。そこから見えてくるEVライフとはどんな感覚だろうか?
BMW iX3 Mスポーツ
50周年を迎えたマセラティ初のミッドシップスポーツ「ボーラ」
最先端という言葉には敏感だし、人一倍の関心もあり、すぐにでも採り入れたくなるのだが、一方では、出来ることならさりげなく、新しい物にすぐ飛びつくようには見られたくない。そんな感覚を由とすること、そしてそう考える人の心情、十分に理解できる。仕事柄もあるだろうし、個人的な考え方にもよる感覚だろうが、さらりと最先端にしてサスティナブルなライフスタイルを送りたい人は、身の回りにも結構いたりする。
そんな思いを抱く人のEV選択に、ピタリとはまるのが、見た目はSUVのX3でありながら、中身は実績のある最先端EVとしてラインナップに追加された「iX3」だ。軽快さを感じるサイズ感と、その感覚をさらに引き立たせるようなスポーティーな走り。それはまさにガソリンエンジンの搭載モデル同様に「ドライビングカー」としての面目躍如であり、イメージどおりだった。
この新しいSUVだが、走破性を求めた4WDではなく、1モーターで後輪を駆動する。しかしカタログ数値ではあるが、パフォーマンスはBMWらしいものである。2.2tのボディを0~100km/hを6.8秒で加速させる。EVということで一充電走行距離を優先し、最高速度は時速180kmに抑えられているのだが、少なくとも日本国内では十分な達成数値である。
もちろん運転した感覚は実に静粛にして、シームレスな加速と、低重心で安定感のあるコーナリングといった走りは、なんとも快適。決して圧倒的なパフォーマンスを最優先にしたEVではないものの、BMWとしての走りのスタンダードはきっちり達成している。全体的なイメージで言えば、やり過ぎない走りと外観のバランスの良さが実に魅力的なのだ。
ただし、まったくEVである事の主張をしていないわけではない。X3をベースとしながらボディの随所には「ブルー」がスパイスとして効いている。BMWにとってブルーの差し色というかアクセントは、EVを主張する大切な要素。よくよく見ればキドニーグリルのまわり、リヤスポイラーの一部、BMWロゴ、そしてスタート/ストップボタンやシフトノブのまわりなどに、効果的に配色されている。いくら、さりげなくが信条ではあっても、なにも主張しないのはなんとも寂しい物だが、そうした点においてもiX3の洒落っ気によって抜かりはないということになる。
昨年からBMWは、このiX3を含め、ひとまわり大きなSUVスタイルで2モーターによる4WDモデル「iX」、サルーンクーペの「i4」も投入してきている。こちらの2台は、ドラスティックな変化として話題となった新世代の巨大なキドニーグリルを採用し、とくにiXは今後のBMWのEVブランドをリードするデザイン、の路線に沿ったものであると同時に、まだなじめない、という人もいる。誰にでも少なからずあるだろう躊躇にとって、iX3のコンサバ感は、ほどよい距離感にあるのかもしれない。
標準装備のM スポーツ・パッケージをまとい、よりスポーティーな外観に仕上がっている。
エクステリアはX3ベースだが、随所に電気自動車であることをさりげなく主張するデザイン・エレメントを採用。
見慣れた落ち着きと安心感のある横長のキドニーグリルのフロントマスク。
インテリアの見た目もX3と同様。ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能を標準装備している。
80kWhのリチウムイオン・バッテリーを搭載し、最長508km(WLTCモード)の航続可能距離となっている。
専用ステッチ付のヴァーネスカ・レザー モカという仕様のインテリア。ホールド性のいいシートは肌触りもよく、相変わらず魅力的だ。
(価格)
8,620,000円~(税込み)
<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,740×1,890×1,670mm
車重:2,200kg
駆動方式:FR
トランスミッション:AT
(モーター)
最高出力:210kw(286PS)/6,000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/0~4,500rpm
問い合わせ先:BMW i カスタマー・インタラクション・センター 0120-201-438
撮影/尾形和美
TEXT:佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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