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新型メルセデス・ベンツ Sクラスは乗員の健康状態にまで踏み込む! 渡辺慎太郎が詳らかにする最先端キャビン

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新型メルセデス・ベンツ Sクラスは乗員の健康状態にまで踏み込む! 渡辺慎太郎が詳らかにする最先端キャビン

Mercedes-Benz S-Class

メルセデス・ベンツ Sクラス

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新型Sクラスの先出し情報第3弾

2020年9月2日の正式発表を前に、段階的にその情報を小出しにしてきたメルセデス・ベンツ新型Sクラス。第3弾となる今回のテーマは「快適な室内空間」である。

第1弾の時に、有機ELを採用したセンターディスプレイや3D表示も可能なメーターパネル、AR機能搭載のヘッドアップディスプレイなどをお披露目し、その際チラッと見えていたダッシュボードがすべて公開され、同時にシートやドアトリムなども明らかになった。

これからの車内空間のあるべき姿

数年前にチーフデザイナーのゴードン・ワグナーがこれからの高級車のインテリアに関して次のようなことを語っている。

「自動運転が広く普及してくると、それまでは運転する場所だった室内が、リラックスしたりゆったりと仕事をする場所に変わっていくでしょう。そうなると、自動車の室内はできるだけシンプルに、でも上質な素材に包まれて視覚や触覚からも安堵できる空間であるべきだと考えています」

シートスイッチは“指定席”に

新型Sクラスのダッシュボードを見て彼の言葉を思い出し、こういうことだったのかと悟った。ふたつのモニター以外の部分にはほとんど何もなく、直線基調だが角や段差のないなめらかで優しい造形が広がっている。

アルミを本杢で挟んだパネルはストライプ柄のようにも見えるし、ヨットやクルーザーなどで見られる金属と木材という異なる素材を組み合わせて生まれる独特の雰囲気が、クルマのインテリアとしては新鮮である。一方で、ドアトリムに置かれるシートスイッチは相変わらず健在だ。機能的にそれがベストだと思う部分に関しては、ブラッシュアップはしても無くしたり大きく変えたりはしないようである。

家庭でもなく仕事場でもない第3の場所

インテリアデザインの責任者であるハルムート・シンクヴィッツ氏は、新型Sクラスのインテリアについて、次のように語っている。

「Sクラスのお客様の目は非常に肥えています。我々はそんな彼らに満足していただけるよう、まったく新しいラグジュアリーの提案を新型Sクラスでさせていただきました。それが、我々のデザイン哲学である“Sensual Purity”と品質への絶対的なコミットメント、そしてデジタルとアナログが融合した革新的インテリアなのです」

新型Sクラスにはショートホイールベースとロングホイールベースが用意されるようで、しかしいずれのボディでも前席/後席ともに十分なスペースが確保されているという。インテリア空間のイメージは家庭と仕事場の間にある「第3の場所」とのこと。

インテリア設計にまつわる「6つの条文」

そもそもラグジュアリーとは贅沢な素材を使えばいいのではなく、特にクルマの場合は機能性と静粛性と乗り心地が高いレベルで確保されていることが重要という考えに基づいて、新型Sクラスの室内空間は包括的に設計されたそうだ。

以下は公表された資料から抜粋した要約である。

新型Sクラスのインテリアは6つのガイドラインに沿って設計された。

1:Unexpected Moments
「車内」というよりも、ゆったりとしたラウンジのような空間の実現がコンセプト。「ダッシュボード」という既存の概念ではなく、室内のドアからつながる一体的トリムの一部という考え方。

2:Stimulating Contrast
明るい部分(ディスプレイ)と暗い部分(トリム)、視覚的に柔らかい表面(本革)と硬い表面(ピアノブラック)など、対極的なコントラストを効果的に使う。

3:Stunning Proportions
ダッシュボードの上質で面積の大きいウッドパネルは、滑らかな断面形状が美しいプロポーションを形成しているが、それを実現したのは熟練のクレイモデラーの手による職人技。

4:Freeform & Geometry
センターディスプレイはダッシュボードに対してフリーフローティング状態で固定。“画面”という2Dから“フローティング”という3Dへと、ジオメトリーがスムーズに移行する。シート表皮は、デザイン性と機能性を両立。

5:Significant Graphics
スイッチも減らしたミニマムでシンプルなデザインの中で、エアコンの吹き出し口は見た目のアクセントにもなる部分。正面には薄くて横型の吹き出し口を配置。左右はあえて縦型とし、これをウッドパネルに合わせてRをつけた。

6:Natural Attractions
シートは立体的な造形で、貝殻のように身体をすっぽりと包み込む。後席のセンターに配置したウッドトリムは滝をイメージ。

着座姿勢から照明まで万全のケア体制

そのデザインコンセプトに則ったキャビンの中で、注目すべき機能、演出装備、アメニティ類は以下のようなものがある。

■最新かつ多彩な照明システム

・昼夜を問わず快適な空間を演出するために新開発のアンビエントライトを装備。すべての乗員を光りで包み込むようにするため、オーバーヘッドコンソールや前席後方にも照射する。

・使用されるLEDは全部で約250個。これを1.6cm間隔で光ファイバーに組み込み、CAN-BUS経由ですべてをリアルタイムで制御。
・光を動かしてアニメーション効果を実現。
・明るさは従来の10倍(1平方メートル辺り200カンデラ)で、昼間でも室内をより明るくする。周囲の明るさに応じて自動的に昼間/夜間を切り替える。
・色と照度(20段階設定)はMBUX経由で設定可能。
・オプションで運転支援システムとの協調制御も可能。レーンキープアシストやブレーキアシストが作動するとアンビエントライトが赤くなって視覚的に注意を促す。
・エアコンの設定温度を低くすると青くなるなど、フィードバック制御も搭載。

■シート周りやシートの快適性を大幅に改善

・ホイールベースを問わず、運転席/助手席/後席のスペースを従来型よりも拡大。
・シートとステアリングの位置関係を見直し。オフセットをなくして理想的なポジションを確立。
・ドライバーがMBUX経由で身長を入力するとシート/ステアリング/サイドミラーを理想的なポジションに自動設定。
・ヘッドレストを新開発。後席ヘッドレストにはヒーティングマットを内蔵し、快適な枕のような心地よさを実現。
・ショーファードリンブン時のシート調整幅を拡大。
・シートクッションと背もたれの傾きを微小に変化させることで、整形外科的見地から最適な着座姿勢をサポート。
・ラジアルファンを搭載した温度調節可能なシート。
・6つのエアクッションを装備したマッサージ機能。
・前席の耳元近くにイヤースピーカーを搭載。オーディオのサラウンド効果だけでなく、ナビゲーションの道案内や電話の声などは運転席のイヤースピーカーを使用。
・後席のバリエーションは最大5種類から選択可能。ふたり乗り/3人乗り/リクライニング機能付き/ビジネス用センターコンソール付きなど。

乗員のフィジカルとメンタルも見守るクルマ

この他にも、現行のSクラスから導入された“ENERGIZING COMFORT”がアップグレードされている。この機能は、乗員がRefresh/Vitality/Warmth/Joy/Comfortの中からその時の気分にあったものを選択すると、シートポジションや音楽やディスプレイのグラフィックやマッサージ機能やアンビエントライトなどが自動的に調整されるというもの。

要するに、疲れているときには活力を与え、ストレスが溜まっている時にはリラックス効果をもたらすプログラムである。また、専用のアプリやブレスレットを身につけていると、睡眠の質やストレスレベルなどに関する情報をアルゴリズムに組み込み、より個人の精神的肉体的状況に即した制御を行うそうだ。

新型Sクラスはついに、乗員の健康状態にまで踏み込んでくるようになったのである。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

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