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いま最もデザインコンシャスな1台──アウディの最新フラグシップSUV、Q8に試乗する

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いま最もデザインコンシャスな1台──アウディの最新フラグシップSUV、Q8に試乗する

「なんでこんなところまできたんだろう」

チリ北部のアタカマ砂漠を走る車中、私は心のなかでそう呟いた。

新型アウディA7 スポーツバック日本上陸!──ハッチゲートを備えた魅力的なパーソナルセダン

成田空港を出発して、すでに30時間。目指すホテルは、到着したカラマ空港からさらに100km先だという。ここまでやってきたのは新しく登場するアウディ Q8に試乗するためだが、その荒涼とした景色のせいでほとんど心は折れそうになっていた。

どんよりとした曇り空の下に続いているのは、ホコリっぽくて平坦な大地。その広大さはたしかに圧倒的だが、見慣れてしまうと退屈で、これといった見どころもない。職業柄、長旅には慣れているつもりだが「こんな風景を見るために、わざわざ30時間もかけてやってきたのか……」と思うと、底知れないむなしさに心が締め付けられそうになった。

ところが、夜明けを迎えると私の気持ちもすっかりと変わった。鮮やかに晴れ渡った青空の下で見ると、昨日はぼんやりとしていた景色がくっきりとした輪郭を手に入れ、感動的な美しさで私の心に迫ってきたのだ。

「Q8はアウディSUVファミリーのフラッグシップであり、特別なモデルです。そんな特別なモデルに相応しいロケーションを求めて世界中をくまなく探した結果、このアタカマ砂漠で試乗会を催すことにしたのです」。

ドイツ本国のアウディ広報担当は私にそう説明したが、この景色を見せられれば彼女の言葉にも頷くしかない。それほどアタカマ砂漠は雄大で、奥深く、そして神々しかった。

Q8の完成度も、その景色に見劣りしないくらいよかった。

アウディのフルサイズSUVであるQ7をベースに、アウディ初のSUVクーペを作り上げる。これがQ8の開発陣に課せられたタスクだった。手っ取り早くこれを実現するなら、Q7のルーフを少し後ろ下がりにしただけで「はい、できあがり」ということもできただろう。けれども、彼らはそうはしなかった。

まず、デザインチームのフランク・ランバーティは、Q7のルーフを38mm低めたうえで、テールゲートを軽く寝かし、クーペ的な軽快感を表現してみせた。「ルーフ後半をなだらかに下げてファストバック風に見せることも検討しましたが、これではリアパッセンジャーのヘッドルームを確保できませんでした。そこで私たちはルーフ全体を少し下げてみることにしたのです」

写真で見るだけではわかりにくいかもしれないが、実車を目の当たりにしたときの印象はQ7とQ8でずいぶん異なる。Q8のプロポーションはとても躍動的で、まるで次の動作に備えて低くうずくまっているネコ科の大型動物のようだ。これに比べるとQ7は背筋をピンと伸ばしたビジネスマンにも似て、動的というよりは静的、スポーティというよりはフォーマルな印象が強い。

Q7とQ8のデザイン上の違いはルーフラインだけに留まらない。アウディのアイデンティティでもあるシングルフレームグリルは、新たに“フレーム”と呼ぶ太い枠で囲むようになり、これをフロントフェンダーから伸びた“腕”で軽く支えるようなデザインを施した。

また、フレームは八角形で、最新のA8、A7、A6に用いた六角形のグリルとはイメージが異なる。前出のランバーティによれば、これがQファミリーの新しい顔であり、今後登場するアウディSUVにはいずれもこれと似たグリルを与えるという。

ボディサイドの表情もこれまでのQファミリーとはいくぶん異なる。前後フェンダーに“クワトロブリスター”という名のオーバーフェンダーを思わせる処理を施しているほか、従来はショルダー付近にあった力強いキャラクターラインはやや低い位置に移動し、クワトロブリスターを強調するような効果を与えている。

これらは、現チーフデザイナーのマーク・リヒテが手がけたデザインスタディ“プロローグ”で提案したもので、最新のA8、A7、A6にも採用しているモチーフ。つまり、ボディサイドのデザインはAファミリーと共通としたのだ。

インテリアデザインも最新のA8、A7、A6に通じるもので、スイッチの数を極力減らし、ダッシュボード上に置かれた2枚の大型タッチディスプレイによってエアコンを始めとするほとんどの操作を行なうインターフェイスを採用。そのシンプル極まりないデザインは実に未来的かつ魅力的である。

Q8のプラットフォームは基本的にQ7と同じMLBエボ。ただし、フロントグリル内にはレベル3以上の自動運転に不可欠とされるレーザースキャナーを装備しているので、運転支援システムの基本構成は最新のA8などに準じると見られる。

エンジンは3.0リッターV6ガソリン・ターボと3.0リッターV6ディーゼル・ターボの2種類が試乗会場には用意されていた。ふたつのエンジンはいずれも48Vのマイルドハイブリッド・システムを組み合わせる。ギアボックスはトルコン式8段ATで、センターデフにトルセンCを用いたフルタイム4WDシステム“クワトロ”を搭載する。

まずはガソリン・モデルのQ8 55TFSI クワトロに乗ってホテルを出発。幹線道路に出るまでは舗装されていないダート路だが、しなやかな足回りは路面からの衝撃を巧みに吸収してくれるので乗り心地は快適。窓を閉めればエンジン音やロードノイズさえほとんど聞こえなくなるくらい静粛性は高い。

やがて広い通りに出たところで、制限速度の100km/hまで加速。低速域から一気にスピードを増していくような状況では十分に力強く、また滑らかな加速感を示す。ちなみにガソリン・エンジンの最高出力は340psだ。

100km/h近辺で巡航していると、アウディらしい軽く弾むような乗り心地を味わえる。といっても、フワンフワンと上下動が続くわけではなく、振幅は一発で収まるのだが、路面からの軽く受け流すような所作が、私には軽く弾むような乗り心地に感じられるのだ。この辺は、ダンパーの減衰率が高くてドスッと重々しい感触を伝えるドイツ・プレミアムブランドのなかでは異色のテイストといえる。

一時期、アウディのハンドリングは俊敏性重視で、切り始めのゲイン(操舵した量と実際にクルマが曲がろうとする量の関係。「ゲインが高い」は切った量に対してより強く曲がろうとする傾向を示す)が強いためにやや扱いづらかったが、最近はそういった味付けが影を潜め、自然で扱いやすい特性とされている。Q8も同様で、マイルドでリニアリティの高い操縦性に仕上げられており、乗り始めた直後からすっと馴染める親しみやすさを感じた。私好みだ。

クワトロだけあって直進性は良好。片側一車線でどこまでも真っ直ぐに進む道を走っていると、対向車にも先行車にもほとんど出くわさないせいもあって、いささか退屈になってくる。それでも、まれに遅い先行車に追いつくことがある。

ただし、いくら遅いとはいえ相手も80km/hは出ている。それを対向車線に出て追い越すわけだから、こちらは当然のことながら全開。ただ、こんなシチュエーションでは、アウディらしいガツンというパンチの効いた加速感は味わえず、パワーの出方がどこかモヤッとしているように感じた。

これはQ8に限った話でなく、ヨーロッパの最新のエミッション規制であるEU6d TEMPをクリアしたガソリン車に共通した傾向なので、規制側に何らかの原因があるのかもしれない。この点は引き続き取材してみるつもりだ。

もっとも、この加速時のモヤッとした印象は、ディーゼルモデルのQ8 50TDI クワトロであればほとんど意識することはなかった。おそらく絶対的なトルクに余裕があるからだろう。しかもノイズレベルやバイブレーションはガソリンとそう大きく変わらない。ディーゼルが日本に入ってくるかどうかは未定というが、最近の市場動向を見ても、Q8のようなフルサイズSUVにディーゼルは必須だろう。

追い越し時の加速にキレがなかったのを別にすれば、チリでの試乗中、Q8には何の不満も覚えなかった。砂漠ゆえに滅多に出くわすことのないワインディングロードでは優れた接地性によりまったく不安を覚えなかったほか、後輪もステアする4WSのおかげでタイトコーナーを苦もなくクリアできた。

さらに、今回は固い地盤のうえに細かい砂が浮いた簡単なオフロードコースも用意されていたが、Q8はどう見てもサマータイヤとしか思えないコンチネンタル・スポーツコンタクト6(サイズは前後とも285/40R22)を履いたままここを楽々と走破してみせた。

Q7と同じ2995mmというロングホイールベースのおかげで後席の居住性は上々で、特に足下のスペースが広々としているのが印象的。また、一般的に前席に比べて劣ることが多い後席の乗り心地も良好で、突き上げ感もごくごく軽い。

ただし、ルーフを低くした影響もあって、Q7と違って3列シートは用意されない。もっとも、3列シートがどうしても欲しければQ7を選べばいいだけの話であって、Q8に敢えて3列シートを用意しなかったのはモデルの位置づけを考えても正解だろう。

アクティブで先進的なデザインをまとったQ8は、「アウディのフルサイズSUVは欲しいけれどQ7ではやや落ち着き過ぎていて物足りない」という層にはうってつけのモデルだ。国内発売は2019年春ごろの見通し。価格はQ7より若干高めになる模様だ。

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