改善すべきところが思い浮かばない
ドイツの名門、アルピナが仕上げたD4 S グランクーペ。見た目以上に、その仕上がりは格別だ。
【画像】1つの集大成 アルピナ D4 S グランクーペとD3 S ツーリング 競合モデルと写真で比較 全125枚
BMWの傘下に収まることが決まった同社は、近年ではG20型とG21型の3シリーズで実力を証明している。2022年には、G26型の4シリーズ・グランドツアラーがラインナップに加わった。
ボンネットに収まるのは、直列6気筒のガソリンターボかディーゼルターボ。右ハンドルの構成で、英国や日本での販売も始まっている。
D4 S グランクーペは、類稀な速さに良好な燃費、不足ない高級感、満ち足りた運転体験などを高次元で叶えている。高級車としての佇まいや合理性、望ましさなどを犠牲にすることなく。
少なくとも筆者にとっては、欧州のハイエンドブランドが半世紀以上に渡って追求してきた、集大成といえる域にあると感じる。これ以上、改善すべきところが思い浮かばない。
驚くほど速い高級サルーンというだけではない。感銘せずにはいられない、運転を堪能できるグランドツアラーでもある。
2040年の欧州では、目的地が200kmほど離れている場合、高速列車を移動手段とすることが一般化しているかもしれない。そんな時代が来ても、アルピナという有能な選択肢があったことを記憶に留めておきたいと強く思う。
失うであろうモノの大きさを実感する。バッテリーEV(BEV)には、優れた点が確かに多くある。しかし、D4 S グランクーペほど容易で快適に、楽しく長距離を移動できるモデルは登場するだろうか。
3.0L直6ツインターボは355psを達成
B4 グランクーペのスリークなボンネットの下に収まるのは、B3と同じ3.0Lの直列6気筒ツインターボ・ガソリンエンジン。他方、今回試乗したD4 Sが積むのは、D3 Sと同じ3.0L直列6気筒ツインターボ・ディーゼルとなる。
アルピナの手による改良と冷却性能の向上によって、最高出力はBMW M440dより1割ほど勝る355psを達成。最大トルクは74.2kg-mを得ている。
駆動方式は、トルクベクタリング機能付きの四輪駆動、xドライブが標準。トランスミッションは8速オートマティックのみ。サスペンションとステアリングにも独自のセットアップが施され、豪華なインテリアも特別仕立てとなる。
試乗車の場合は、アイボリー・ホワイトのエクステンデッド・メリノレザーが内装に施されていた。肌触りは素晴らしく、見た目も洗練されている。
ステアリングホイールはブラック。アルピナのトレードマークといえる、ブルーとグリーンのステッチが控えめに主張する。
欧州市場では、ディーゼルエンジン・モデルはアルピナの大きな収益源になっていた。しかし、排気ガス規制の強化やBEVへのシフトに伴い、ビジネス環境は大きく変化している。BMWとの関係を見直すきっかけにもなったはずだ。
規模の小さなアルピナにとって、投資すべきエンジン選びは小さな決断ではない。見誤ると、致命的なダメージを被りかねない。だが少なくとも、直列6気筒ユニットは間違いのないユニットといえた。
高く評価したい優れた燃費 豊かな充足感
3.0L直6ディーゼルターボは、感動的に滑らかで静かに回る。右足の僅かな角度変化で、豊かなトルクを引き出せる。サウンドも悪くない。4000rpm以上まで回る軽快さも備えている。
D4 S グランクーペの車重は1945kgある。それでも、現実世界での速さに不足は微塵もない。最高速度は270km/hに届き、0-100km/h加速を4.8秒でこなす。
筆者がこのパワートレインで最も高く評価したいと思うのが、優れた燃費。英国の高速道路、110km/h+程度でのクルージングでは、18.8km/Lという数字が示されていた。59Lのタンクを満タンにすれば、無給油で1000km以上走れる。
ドイツ・アウトバーンの流れの良い区間では、200km/h前後で走ることも珍しくないが、そんな環境でも12.4km/Lは得られる。航続距離は600km以上と考えていい。
一般的に、同程度の動力性能を持つ高性能サルーンの場合、この速度域では7.0km/L前後に燃費が落ち込む。BEVの場合、大容量の駆動用バッテリーを搭載していても、150kmも充電量はもたないだろう。
アルピナ独自の手ほどきによって、乗り心地や操縦性は理想的。快適で安定している。単にしなやかなだけでなく、意欲的な走りでもバランスは失わない。ドライバーへ、豊かな充足感を提供してくれる。
路面の起伏が大きい郊外の区間では、車重の大きさを実感する。それでもステアリングホイールへ伝わるフィードバックや鋭い回頭性、見事に調和した操縦性は、アルピナならでは。専用ホイールやアンチロールバー、タイヤなども相乗している。
最大の魅力はドライバーへの訴求力
触覚的な豊かさや惹き込まれるコーナリングマナーがもたらす、ドライバーへの訴求力こそ、このブランド最大の魅力。D4 S グランクーペでの体験は、どんなBMWのMスポーツを持ってきても敵わないといっていい。
今後数年の内に、欧州市場の高性能モデルはBEVへ置き換わっていくことになる。しかし、内燃エンジンを存続させたいと考える理由として、D4 S グランクーペは最後の象徴になり得る。
2030年に、アルピナがどんなビジネスを展開しているのか、われわれは想像するしかない。しかし、D4 S グランクーペは可能な限り長く生き抜いて欲しいと強く願う。
BMWアルピナ D4 S グランクーペ(欧州仕様)のスペック
英国価格:8万1910ポンド(約1310万円/試乗車)
全長:4792mm
全幅:1850mm
全高:1440mm
最高速度:270km/h
0-100km/h加速:4.8秒
燃費:14.5km/L
CO2排出量:182g/km
車両重量:1945kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccツイン・ターボチャージャー+ISG
使用燃料:軽油
最高出力:355ps/4000-4200rpm
最大トルク:74.2kg-m/1750-2750rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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