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1960年式ダッジ・ポラーラ 最先端だったテールフィンのフルサイズ 後編

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1960年式ダッジ・ポラーラ 最先端だったテールフィンのフルサイズ 後編

映画に登場する宇宙船のような雰囲気

執筆:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)

<span>【画像】アメリカン・デザインの黄金期 ダッジ・ポラーラ 同時期のリンカーンも 全84枚</span>

撮影:James Mann(ジェームズ・マン)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


1960年式のダッジ・ポラーラ。スピードメーターは横長のストリップ・タイプだ。クロームメッキのフレームに収まるパネルは文字が抜かれ、半透明のガラスを通じて、裏側から柔らかく光が灯る。当時の映画に登場する、宇宙船のような雰囲気がある。

フロントバンパーの造形を反復させたXのスポークで支える大胆なステアリングホイールは、姉妹モデルのマタドールではオプションだったが、ポラーラなら標準装備。リムには、フレークが混ざった半透明の部分が上下にある。

スペースエイジ感を高めているのが、スピードメーター手前に突き出た円柱形の時計。ガラスの中に、時と分で回転するシリンダーが付いている。

「購入時点で時計は装備されていませんでした。でも、欲しいと思って大金を費やして探したんです」。とオーナーのクリス・メンラッド氏が笑う。この時代のクルマに特別な思い入れを持つ、彼らしい。

「1000ドル払っています。希少な部品ですが、ジョージア州のクライスラー部品を扱うモーパー・ショップに、箱入りの状態であったんです」

「時計のガラスケースの上部に小さな傷があり、返品されたものかも。寒くなると止まるので、リビルドの必要がありそうです。古い部品は問題なく何年も動く時もあれば、気難しい時もあります」

話を伺っている途中も、時計は時々動くのを止めた。「高価でしたが、その価値があると思っています。時計が付いているポラーラは、他に見たことがありません。このクルマ専用で、2年しか作られていませんでしたからね」

6277ccのV8エンジンに3速AT

1950年代末、ショールームでスポットライトを浴びていたのは、真新しいダッジ・ダートとマタドール、そしてこのポラーラだった。前オーナーのレヴィ夫人もディーラーを訪れた時、ダッジに変化が訪れたと感じたのではないだろうか。

デザイナーのヴァージル・エクスナー氏によって1957年から展開された、「フォワード・ルック」と呼ばれるスタイリング。ポラーラの場合、見た目だけでなく中身もまったくの新設計だった。

エンジンは共有するモデルもあったが、それ以前のダッジ・コロネットやロイヤルとの共通点は殆どない。ダッジはボディ別体のシャシー構造ではなく、モノコックの原型となる、ユニボディ構造を採用。新しいモデル・ラインナップを構築した。

「ボディとフレームは、要塞のように強固に一体となっています」。と当時の広告では誇らしげに主張している。

トーションビーム式のサスペンションをフロント側に取り入れ、先進的なイメージを牽引。クリスが所有するポラーラのように、パワーウインドウやエアコンまで、現代的な快適装備もくまなく装備が可能だった。1950年代末に。

さらにポラーラの中心的存在といえたのが、383cu.in、6277ccという大排気量のV型8気筒エンジン。トルクフライトと呼ばれた、クライスラー社製の3速ATが組み合わされている。

ドライブをレバーで選択し、アクセルペダルを踏めば、アメリカンなV8エンジンらしいたくましさで、巨大なボディを推し進める。

1962年にまったく新しいポラーラへ交代

このV8は1958年のBシリーズ・ユニットで、くさび型をした燃焼室を備える。ポラーラではパワフルなラム・インダクション仕様も選択できたが、このエントリーグレードの仕様でも、329psという不足ない馬力を生み出す。

動力性能は現在でも充分以上。心地良いエグゾーストノートとともに、滑らかに速度を乗せていく。Bシリーズ・エンジンは、後にピックアップ・トラックへの搭載が主流となった。豪華なモーターボート用のエンジンとしても利用されている。

パワーアシストで軽いステアリングホイールを回すと、ノーズのゆったりした動きは、クルマというよりも船のよう。アクセルペダルへ力を込めると、慣性でフロントノーズが持ち上がる様子も。

1960年にダッジが生産した35万台のうち、ポラーラは1万6000台ほど。ひと回り小さいダートの方が、10倍近く多く売れた。

その後、1961年モデルが発表され、ポラーラの売れ行きは回復。テールフィンは穏やかになり、物議を醸したテールライトを備えていたが、50%ほど台数を伸ばした。

ところが1962年、まったく新しいポラーラが登場する。エクスナー・スタイリングの時代は、音を立てるように終わった。

1961年仕様のスタイリングを手掛けている途中、エクスナーは心臓発作を発症。彼が進めていたデザイン案は却下され、クライスラーのデザイン・チーフは、エルウッド・エンゲル氏へ交代してしまう。

アメリカにおけるカーデザイン黄金時代

アメリカ車として、象徴的なスタイリングを生み出したエクスナー。しかし流行りモノとみなされ、ポラーラにはしばらくの間、冷たい視線が向けられるようになっていた。

だが、アメリカにおけるカーデザイン黄金時代を飾ったモデルとして、近年は再び評価を高めつつある。確かにスペースエイジを色濃く映し出す一方で、タイムレスな魅力も備わっていると思う。

交通量が殆どない砂漠の広がるエリアを、数時間クルージングさせてもらった。装飾的な要素が強いが、不思議な惹きつける力を持っている。

新車時は、時代を象徴するクルマだったことは間違いない。一方で、カリフォルニア州のサン・ジャッキント山脈に向かって走っていると、欲望に満ちた時代の虚しさも感じられてくる。荒野の中で、夕日に照らされていたからかもしれないが。

沢山のヤシの木やサボテンとともに、ミッドセンチュリー時代のバンガローが立ち並ぶパームスプリングスの道を進む。大きな交通標識が、タイムスリップしそうな気持ちを現在に留めてくれる。

巨大なテールフィンの付いたクルマだからこそ、この不思議な気分を味わえる。大胆なダッシュボードと半透明のステアリングホイールを眺めながら運転できるポラーラは、古い宇宙船というか、タイムマシンのようだ。

時々クラシックだが、時々モダン。1960年代の香りは、なぜか未来的な印象も与えてくれた。

ダッジ・ポラーラ(1960年/北米仕様)のスペック

英国価格:3141ドル(新車時)/5万ドル(555万円)以下(現在)
生産台数:約1万6000台
全長:5436mm
全幅:1981mm
全高:1379mm
最高速度:209km/h
0-97km/h加速:8.8秒
燃費:4.2km/L
CO2排出量:−
車両重量:1758kg
パワートレイン:V型8気筒6277cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:329ps/4600rpm
最大トルク:57.9kg-m/2400rpm
ギアボックス:3速オートマティック

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