モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、1983年から世界耐久選手権やル・マン24時間レースなどを戦ったグループCカーの『ランチアLC2』です。
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グループCカーが世界耐久選手権(WEC)の主役となった1982年。この年、ランチアは同年1年だけ参戦が認められていたグループ6カー、LC1を開発し選手権へと送り込んだ。
イタリアのレーシングコンストラクターであるダラーラがシャシーとサスペンションを製作したLC1は、エンジンをグループ5カーであるランチア・ベータモンテカルロから流用するなど、予算が限られるなかでの開発が余儀なくされたものの、1982年よりデビューしたポルシェのグループCカーである956と互角の戦いを見せ、最後までタイトルを争う活躍を見せていた(争ったのはドライバーズチャンピオンシップのみだった)。
すると、このLC1の快走が助けとなって、1982年のシーズン中に一時はランチアをサーキットレースから退けさせようとしていた親会社のフィアットから、翌1983年に向けて新たにグループCカーを開発することが許可された。そうして誕生したのがLC2だった。
LC2はLC1同様、ダラーラがアルミモノコックだったシャシーとサスペンションの製作を担当。空力についてはフィアットの風洞を使って開発が行われ、その結果、フロントのトレッドを規定いっぱいの2000mmまで広げず1800mmとした。
これはコーナリング時のスタビリティをある程度犠牲にしても、燃費向上などのメリットが得られるという考えから定められたものだった。
搭載されたエンジンはフェラーリが設計したもので、フェラーリ308という市販車のV型8気筒エンジンを参考にしつつも、完全新設計で2.6リッターのV8ターボエンジンが仕上げられ、ランチアへと引き渡された。
前述の通り、1982年のシーズン途中に開発のGOサインが出されたため、製作期間はわずか8カ月という短期間だったが、1983年シーズンの開幕数週間前にLC2が完成。いよいよデビュー戦を迎える。
しかし装着していたピレリタイヤに問題が発生したことなどを受け、初年度はポルシェワークス不在のイモラ戦で1勝を挙げるに留まった。
そこでシーズン途中からタイヤをダンロップに変更。さらに1984年シーズンに向けては前後オーバーハングを伸ばして全長を延長、リヤのボディワークを拡大し、ル・マン24時間レースからはエンジンの排気量を3.0リッターへとアップ。大幅な改良を加えて、ポテンシャルアップを図った。
しかし専用設計でなかったダンロップタイヤや信頼性不足なども起因して、改良型エンジンを投入したル・マンでフロントロウを独占するという速さこそ見せたが、決勝ではポルシェワークス不参戦の第10戦キャラミで1勝をマークするに留まっている。
その後、1985年には世界ラリー選手権(WRC)でもパートナーシップを結んでいたミシュランタイヤを手に入れたことに加え、ダラーラがそのミシュランに合わせた新たなサスペンションを開発して、ボディの全幅もついに2000mmへと拡大した。
この効果もあってか、参戦した7戦のうち5戦(全10戦)でポールポジションを獲得する速さは見せたが、勝利は第7戦スパの1度のみとなってしまった。
そして翌1986年の開幕2戦を終えた時点で、成績が上向かなかったことやテストドライバーの死亡事故が起こったことも起因して、ランチアはグループCカーの活動を終了。その後、LC2はプライベーターたちに託されたのだった。
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