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レクサス化が惜しまれた!? トヨタ アリストの「粋」と超個性

掲載 更新 66
レクサス化が惜しまれた!? トヨタ アリストの「粋」と超個性

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

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 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ アリスト(1991-2004)をご紹介します。

文/伊達軍曹 写真/TOYOTA

【画像ギャラリー】その先の「正常進化」が見たかった!? トヨタ アリストをギャラリーで見る

■「打倒シーマ」のもと生まれ落ちたクラウンの派生プレミアムスポーツセダン

 初代はクラウン マジェスタと基本コンポーネンツを共用していたものの、当時のトヨタらしからぬエッジの利いたイメージと280psの3L直6ツインターボエンジンで大人気に。

 続いて登場した2代目ではクラウンと共用ではない独自のプラットフォームを採用し、これまたまずまずの人気を博した。

 だが2005年に日本でも「レクサス」ブランドがスタートするにあたり、惜しまれつつも「レクサス GS」にカタログモデルの座を譲り、勇退せざるを得なかったスポーツセダン。

 それが、トヨタ アリストです。

 1991年10月に発売された初代アリストは、同時期に発売された「クラウン マジェスタ」とシャシーなどを共用する派生モデルでした。

初代アリスト(1991年)。「シーマ現象」を生み出した日産シーマを打倒すべく、9代目クラウンの派生モデルとして誕生した

 とはいえアリストのほうのボディデザインはジョルジェット・ジウジアーロ率いる「イタルデザイン」が担当した粋なもので、最上級グレード「3.0V」は最高出力280psの3L直6ツインターボ「2JZ-GTE」を搭載するということで、クラウン マジェスタとはずいぶん毛色が違うスポーティなセダンでした。

 ちなみにキャッチコピーは登場時が「創世・アリスト」で、途中から「走りを忘れた大人たちへ。」に変更されています。

プレミアムスポーツセダンの名に恥じない、流麗なリアビュー(写真は初代)

 搭載エンジンは、前述した280psの3L直6ツインターボのほかに最高出力230psの3L直6自然吸気が用意され、1992年10月にはセルシオに搭載されていた1UZ-FE型4L V8自然吸気も追加。

 1994年8月にはマイナーチェンジが行われ、その後何回かの一部変更を受けつつ、初代アリストは好調な販売をキープ。そして1997年8月に2代目へとフルモデルチェンジされました。

 2代目のアリストは、クラウン マジェスタとの姉妹関係を断って新規のプラットフォームを採用。

 初代アリストは「シャシーに対してエンジンが勝ちすぎ」とも言われていましたが、2代目ではそのあたりの問題が解消されています。

2代目アリスト。最高出力は280psのままだが、最大トルクは46.0kgmに引き上げられ、走りの実力は初代を上回る

 またボディデザインもイタルデザインではなくトヨタの内製となりましたが、そういったケースでしばしば見られる「改悪」といった印象はなく、アリストならではの粋な感じは維持されたように思えます。

 2代目アリストが搭載したエンジンは初代と同じく最高出力280psの3L直6ツインターボ(2JZ-GTE)と同230psの3L直6自然吸気(2JZ-GE)でしたが、初代の途中から採用された4L V8自然吸気エンジン(1UZ-FE)はラインナップされませんでした。

 その後も2代目アスリトは何度かの一部改良とマイナーチェンジを行い、初代ほどではなかったかもしれませんが、まずまず好調といえるセールスを常に記録しました。

 しかし2005年8月から日本でも「レクサス」のビジネスが始まることを受け、次期型のアリストは「トヨタ アリスト」ではなく「レクサス GS」として販売されることに。

 そのため2代目アリストは2004年いっぱいで生産終了となり、翌2005年8月に「レクサス」の展開が始まるタイミングで販売も終了。約14年にわたるその歴史に終止符を打ちました。

■後継としてレクサスGSが登場するも…

 最近でこそトヨタの車もエッジが利いてるものが多いというか、むしろ「トヨタ車こそ尖ってる!」という印象もあります。

 しかし1990年代から2000年代途中頃までのトヨタ車においては、アリストは「良い意味でトヨタらしくない個性とパンチ」を備えた一台であったように思えます。

 そんなアリストが、ある意味あっけなく廃番となってしまった理由。

 それは言うまでもなく「日本でもレクサスビジネスがスタートすることになったから」にほかなりません。

 トヨタが1989年から北米で展開を始めた高級車ブランド「レクサス」では、LS(日本名セルシオ)やRX(日本名ハリアー)などを販売していましたが、1993年からは、1991年に日本でデビューしたトヨタ アリストを「レクサス GS」として販売するようになりました。

 当時のLS(FRのフラッグシップセダン)とES(FFの大型セダン)の間を埋めるモデルとして、日本市場で「アリスト」として売られているFRのスポーツセダンが適任だったようです。

 そして1997年に日本でアリストが2代目に進化すると、約1年遅れて北米でも、2代目アリストをベースとする「2代目のレクサスGS」がデビューします。

2代目レクサスGS(1997年)

 ……という物事の流れであれば、2005年に日本でも「レクサス」ブランドのビジネスがスタートするにあたり、3代目のトヨタ アリストは「(日本における)初代レクサス GS」として販売されるのは当然である――ということになります。

 レクサス拠点でGSを売り、トヨタオート店とトヨタビスタ店で3代目のトヨタ アリストを売る……というのも100%不可能ではなかったでしょう。

 しかし「日本でもレクサスブランドをまずは浸透させる」という大きなミッションを遂行するためには、そんなことをしてもカニバるだけ(共食いするだけ)ですので、無意味です。無意味というか、逆効果です。

「ならばレクサスのセダンはLSとISだけを用意する! そして3代目のアリストは、アリストとしてトヨタブランドで売る!」というのも、まずはレクサスブランドを成功させるという切実なミッションの前では、あまりにも非現実的な作戦です。

 こうして、なかなか稀有なスポーツセダンだったトヨタ アリストは「必然的に」消えていったわけであり、そこに是非はありません。

 しかしながらレクサス GSは、パンチの利いたエンジンを搭載するスポーツセダンだったトヨタ アリストとはちょっと違う、あえておとなしめのエンジンを搭載させた「ラグジュアリーなセダン」です。

 もちろんそこにも是非はないのですが、「できることなら、スポーツセダンとして正常進化し続けたトヨタ アリストを見てみたかった」という思いも正直、胸のうちのどこかにはあります。

■トヨタ アリスト(初代)主要諸元
・全長×全幅×全高:4865mm×1795mm×1420mm
・ホイールベース:2780mm
・車重:1680kg
・エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ、2997cc
・最高出力:280ps/5600rpm
・最大トルク:44.0kgm/3600rpm
・燃費:7.1km/L(10・15モード)
・価格:474万円(1991年式 3.0V)

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