HAWK 11(ホークイレブン)は2022年9月に発売、スペックも公開
いわゆるカフェレーサースタイルを纏い、2022年3月中旬に開催された大阪モーターサイクルショーで世界初披露となったホンダ HAWK 11(ホークイレブン)。市販予定車という扱いでの発表だったが、2022年9月に正式発売決定、139万7000円という価格やスペックも公開された。
これまでのホンダモーターサイクルになかった個性的なスタイルから、どのようなモデルに仕上がっているのか非常に気になるところだが、発表されたスペックと開発エンジニアのコメントから、その内容を分析してみよう。
【画像14点】ホンダ ホーク11の全車体色、足着き性、細部パーツを写真で解説!
話をうかがったのは、HAWK 11開発責任者代行の本田技研工業・吉田 昌弘さん、HAWK 11デザインPLの本田技術研究所・田治 健太郎さんの2名である。
註:車両各部の写真は、大阪、東京、名古屋のモーターサイクルショーに展示された「市販予定車」のもの。
HAWK 11(ホークイレブン)最大の特徴は「軽さ」かもしれない
エンジンと基本骨格、いわゆるプラットフォームは現行型CRF1100Lアフリカツインを源流とするもので、直接的にはNT1100をベースとしている。
(NT1100はDCTだが、HAWK 11のミッションはマニュアル6速)
270度クランクを採用した並列2気筒1082ccエンジンのスペックは、最高出力102ps/7500rpm、最大トルク10.6kgm/6250rpmで、アフリカツインやNT1100と変わらない。スチール製のセミダブルクレードルフレームの基本構造も同様だ。スイングアーム、前後17インチホイールはNT1100との共用だ。
これだけを見ると「なんだ、NT1100のロードスポーツバージョンか」と思えるかもしれないし、それはその通りなのだが、そのスタイリングだけではなく走らせてみても、NT1100とはかなり違ったフィーリングや個性を実現していると予想できる。その理由の第一は軽さにある。HAWK 11の車両重量は214kgで、NT1100の248kgから34kgも軽く、もっとも軽いグレードのアフリカツインと比べても15kg軽いのである。
これに関しては「NT1100に比べて装備品や構成部品の少ない、シンプルな車体構成である事が大きい」(吉田)との事だが、後にデザイン面で説明する特徴的なロケットカウルを軽量なFRP製とした事なども効いているだろう。
加えて、キャスター・トレールが25°00’/98mmに設定されている点が目を引くのである。NT1100では26°30’/108mm、アフリカツインでは27°30’/113mmだから、かなり変わっていると言っても良い。
この数値を見た限りでは、HAWK 11は安定指向から機敏性を重視した設定になっているわけだが、これはNT1100同様、フレームのレイアウトにわずかに前傾角を与える事によって実現している。元々がヘッドパイプ位置の高いオフロード系フレームの転用なので、寸法変更なくしてロードモデルへのアジャストを図るには至極合理的な方法だろう。
とは言うものの、それをカフェレーサースタイルのロードスポーツとして成立させる事はそう単純ではなかったようだ。
「大元はアフリカツインであり、そのフレームが持っている素性の良さをHAWK 11で生かすことが重要だった。その根底にあるのはオフロードからオンロードまで幅広く走破する万能性であり、HAWK 11ではそれを引き継いでいる。そもそもホイールベースが長い車体で、ロードスポーツの軽快なハンドリングを成立させる事には苦心したし、ヘッドパイプ位置が高いフレームで前傾ポジションを実現する事も課題だった」(吉田)
ホイールベースにしても、HAWK 11では1510mmで、NT1100の1535mmから25mm、アフリカツインの1560mmからは50mmも短縮されている。このように、オンロードツアラーのNT1100からもかなり変わった車重とディメンションによって、スポーツ指向のハンドリングが予想されるのだ。
NT1100のハンドリングが安定志向でやや重め、ハイペースになるとアンダーステア傾向を見せたのに対して、HAWK 11ではもう少し軽快でニュートラルなハンドリングになっているのではないだろうか。
何しろ「HAWK 11は今までのホンダにはなかったスタイリングであると同時に、乗った感じも今までにないフィーリングになっている。その部分はしっかり作り込んでいるので、日帰りツーリングや山道も楽しいと思うが、個人的にはテストコースを走る事も楽しく思えた」(吉田)と、開発エンジニアが語るほどだから、そのスポーツ性には相応の自負もあるのだろう。
アフリカツインのフレーム自体は、剛性バランスに優れたしなやかな性格だから、そのポテンシャルを引き出しているのなら、ハンドリングには期待できるはずだ。
さて、その性能を包括する車体のスタイリングや仕様だが、前述したようにヘッドパイプ位置が高めのフレームなので、セパレートハンドルがアッパーブラケット下にマウントされているものの、「前傾は穏やかで、見た目よりも乗りやすくなっている」(吉田)と言う。ターゲットとするユーザーの中核は、「目の肥えた、経験豊富なベテランライダー」(吉田)であり、スペックに捉われず、ゆっくり走っても楽しい。オールラウンドなバイクに仕上がっているという。
その意味では、ホンダでは初めてになるであろうハンドルバーより低く、車体中心に近づいたバックミラーの配置も特徴的だ。これも車体全体を低く見せようという試みの現れだ。「見た目は低そうだが、またがるとカウル付きにしてはそれほど低い位置ではなく、しかも通常より視線が動かないので、むしろ視認性は良いと思う」(吉田)。バックミラーがハンドルの幅の中に収まっているのも新鮮である。
伝統的なスタイルだが、若いライダーには新鮮に映るロケットカウル
スタイリング上の大きな特徴であるロケットカウルは、通常の射出成型による樹脂製ではなく、ほぼハンドメイドに近いFRP製を装着している。その成型には手間と時間がかかるが、躯体の微妙な厚みや造形を優先した結果だそうだ。「射出成型のカウリングだと4~6分割の部品構成になるが、今回はロケットカウルの流れるような美しい面とラインを表現したかったので、一体成型ができるFRP製とした」(田治)
ロケットカウル採用の動機は「ロケットカウルは伝統的なフォルムで、成熟したライダーに訴えかけるものがあるし、若いライダーにも受け入れられるファッショナブルなニュアンスを持っている。自分自身も昔からカフェレーサーと呼ばれているフォルムが好きだった」(田治)というもの。もちろん、HAWK 11では単純に「古き良きもの」だけではなく、現代のモダンなエッセンス(演出や処理)を投入し、クラシックとモダンの融合を目指している。
スタイリングでロケットカウルに続く特徴的な部分は、車体の中心付近で前後を分けるような構成によって大きくトーンを変えている点だろう。これには、勢いとボリュームのある前半分の質量感を受け止めて、軽快感を演出する意図がある。「新しいモデルの新しい表現として、ディテールの処理にも従来とは違う感じを導入したかった。前後でズバッと切った感じもそのひとつであり、今後のデザインの先駆けになって欲しいと思っている」(田治)
また、他にもアフリカツインやNT1100の骨格を、よりコンパクトに見せる事には腐心したそうだ。HAWK 11のスタイリングの基本は水平基調だが、少し傾斜したラインを加えたりと細かく調整されている。その際たるものは、キャラクターラインを持ちあげたリヤ周りのショートデッキ化だろう。
後ろ半分を面の切り替えによって大きく絞り込んだ燃料タンクもポイントだ。「森の中を走った時など、景色が美しく映り込む深い色合いとした。特にブルーは大胆な面の組み合わせによって、陰影が美しく生じると思う。これに、スピード感や疾走感を表現するため、カウリングの縁とサイドカバーにシルバーラインをあしらっているが、カウリングのシルバーはステッカーではなく塗り分けとしている」(田治)
このように、HAWK 11では造形にも力を入れている事がわかったが、FRPのカウリングの採用なども含めて、実のところ販売は国内のみの日本専用モデルだからここまで可能になったのかもしれない。
そして、気になるそのハード面の仕上がりがどんなものか……早く乗ってみたいと思うのは筆者だけではないだろう。
ホンダ HAWK 11(ホークイレブン)主要諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクル並列2気筒OHC4バルブ ボア・ストローク:92.0mm×81.4mm 総排気量:1082cc 最高出力:75kW(102ps)/7500rpm 最大トルク:104Nm<10.6kgm>/6250rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2190 全幅:710 全高:1160 ホイールベース:1510 シート高:820(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量:214kg 燃料タンク容量:14L
[車体色]
パールホークスアイブルー、グラファイトブラック
[価格]
139万7000円
レポート●関谷守正 写真●佐藤正巳/ホンダ/編集部 編集●上野茂岐
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