かつてハイパワーの象徴だった懐かしのターボエンジン搭載車を振り返る!
日産セドリックから国産ターボの歴史は始まった
今のクルマのエンジンの特徴とはいかに? ほとんどのエンジンにターボチャージャーが装着されていることかもしれない。ターボ車でないクルマは、大排気量のスポーツカーなどごく一部だ。
1980年代にも、もうひとつのターボの時代があった。1979年12月に発売された5代目の日産「セドリック(430型)」(当時の日産プリンス店向けには「グロリア」)のターボブロアム4ドアハードトップが先鞭をつけた。
そのあと、ほかのメーカーもこぞってターボ車のマーケットに参入した。1970年代のオイルショックのあと、「社会全体に“省エネ”が叫ばれる中、(中略)小さい排気量でハイパワーと燃費性能を両立させる技術としてターボに注目が集まった」と、日産自動車ではホームページで解説している。
このヨンサンマル・セドリックターボはたしかに速かった。エンジン回転があがって、ターボチャージャーの負圧が高まるとタービンの高音とともに、エンジンに高密度の空気を送り込み、結果、どんっとばかりに強烈な加速が始まる。
いまのターボは、基本的にはマイルド。別の言い方をすると、ターボが効いているのかいないか、よくわからない。排気量を小さくしたぶん、レスポンスのいい小型ターボチャージャーでトルクを補うのだ。
いっぽう、それでは物足りないときは、可変ターボといって排圧によってタービンの容積を拡大する機構を与えるか、もうひとつ、大型のターボを追加した2ステージ式にする。メルセデス・ベンツの「SLクラス」などは、ステッピングモーターが何段階もターボチャージャーの容量を変えていく。それでも当時のようなドッカンターボはない。
1.トヨタ「マークII」(5代目)トヨタ自動車が、自社の製品をターボ化したのは、日産セドリックがセンセーションを巻き起こした翌年、1980年10月の「クラウン」(6代目)だった。
このときは「ステータス・ターボ」なる文言をひねりだし、ターボ化はあくまでトルク増強でスムーズな走りをもたらすための手段と、ある種の見識を示していた。日産とトヨタ、どちらも上級セダンを使いながら、方向性はかなり異なっていたのがおもしろい。
そして1980年代前半のトヨタの看板車種といえば「マークII」。1984年登場の5代目では、1985年10月にツインターボモデルが追加された。2.0リッター直列6気筒DOHCガソリンユニットに、2基のターボチャージャーを装着した日本車で初のDOHCターボエンジンだった。
ベースになったのは、トヨタとヤマハがDOHC化で共同開発した1G-GEUなる直列6気筒エンジン。それにターボチャージャーを2基装着したのが、1G-GTEU型だ。
このツインターボエンジンは、(やや)小さな高級セダンのイメージで売っていたマークIIの、あたらしいありかたを提案するものだった。最高出力は185ps(ネット表記)。
最高出力は6200rpmでというかなり高回転型のエンジン・ターボチャージャーの恩恵にあずかるためには、当時、“ハイソカー”なんて言われて上質感をセリングポイントにしていたマークIIらしからぬドライビングスタイルが必要だった。
このエンジンは、1988年にマークIIがフルモデルチェンジを受けたとき210psにパワーアップ。2代目ソアラやスープラにも搭載された。
先述のとおり、現在のターボは燃費のために重要な技術だけれど、当時はパワーアップのため。車体に貼られた“TURBO”の文字は、大きなスポイラーや軽合金ホイールなどと相性のいい組合せだった。
2.日産「スカイライン」(6代目)スカイラインでターボというと、すぐ思いつくのが、1981年発売の6代目(R30型)。ターボチャージャーの搭載はその前の5代目(C210型)だけれど、R30型ではパワフルな「2000ターボRS」が登場した。
さらに、1983年にはマイナーチェンジがあってフロントマスクのデザインを変更。ターボRS-Xの名とともに、ほとんどグリルレスになり、当時はまだ多くの日本人が記憶していた黒岩涙香らの小説「鉄仮面」をニックネームにいただいた次第だ。
R30型には、ターボモデルのラインナップが多く、なかでも1984年には、6気筒エンジンに、ターボの冷却効率を高めてパワーアップをはかった「2000RSターボ・インタークーラー」が追加された。
このときのスカイラインは、スポーティさを期待していた我われファンにとって、ややがっかりがあった。ホイールベースが2615mmと、先代のC210型の4ドア版と同寸のものに統一され、ショートホイールベース版がなくなったからだ。
カッコはともかく、性能は高く、このころの日産はある種の矜持をもってスカイライン(の高性能版)を開発していたと感じられた。ただ、スカイラインはカバーする範囲が広すぎるのが難と感じられた。
なにしろR30型をみても、4ドア、2ドアクーペ、4ドア(5ドア)ハッチバック、エステートという具合。スポーツ車路線でいくのか、ファミリー路線でいくのか、はたまた商用車? と、はっきりしない。そこが惜しいなあと当時から思ったものでした。
3.ホンダ「シティターボ」(初代)これはおもしろいクルマだった。3.3mの全高に対して1.47mの全高という、当時の概念でいうとトールボーイスタイルが衝撃的だった、1981年登場の初代「シティ」。
1982年に追加されたのがシティターボだ。イメージはブラック。赤いアクセントストライプが効果的で、かつ短く傾斜のきついボンネッドだが、パワーバルジが設けられて、ひと目でパワフル版とわかった。
シディのベースモデルは67psの1231ccエンジン搭載であるのに対して、ターボ版は100psにまで出力が引き上げられていた。当時英国で大人気のスカバンド、マッドネスがナッティトレインをしながら「Honda、Honda……」と連呼するCMも痛快だった。
シティターボはそれなりに軽快感があった。ただし、乗り心地は硬く、キャスターアクションが強い操舵感は独特、さすがに、ホイールベースが2220mmとかなり短いのがハンデになっていた。
1983年には110psのシティターボII(ブルドッグ)が登場。ボンネットのバルジは巨大になり、フェンダーは広がり、デザインでも楽しませてくれた。
サスペンショントラベルが短く、ショートホイールベースのモデルをベースにしているだけに、ターボ化しても所詮……というのも事実。コンセプトを楽しむモデルだったのだ。
輸入車も好きなひとたちは、このシティターボIIに、ルノーが開発して世界ラリー選手権で活躍していた「サンクターボ」(1980年)を連想。もちろん、ホンダはそのマネをしたわけではないけれど(開発期間を考えるとマネは無理)、クルマは元気がいちばん。そんなクルマ好きの心情をうまく反映してくれたターボモデルである。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
やっぱりいい加減な記事ですね。