現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 新色開発になぜ7年も!? 新型スイフト「フロンティアブルー」誕生の裏側に迫る

ここから本文です

新色開発になぜ7年も!? 新型スイフト「フロンティアブルー」誕生の裏側に迫る

掲載 3
新色開発になぜ7年も!? 新型スイフト「フロンティアブルー」誕生の裏側に迫る

2023年12月7日に発表された新型スイフトには、3層コートの新しいボディカラー「フロンティアブルーパールメタリック(以下フロンティアブルー)」が設定された。鮮やかさと深みを追求した次世代のスズキを象徴するブルーである。通常、ボディカラーの開発期間は約3~4年程度といわれているが、何とこのブルーはその倍近くの7年もかけたという。そのいきさつについて、スズキの四輪デザイン部 エクステリアグループの髙橋秀典氏に話を聞いた。

 
■そもそもフロンティアブルーはどんな特徴を持った色でしょうか?

スズキ、スイフトを7年ぶりに一新。よりスタイリッシュに燃費も向上

「フロンティアブルーは先代スイフトで採用していたスピーディーブルーメタリックの後継にあたるスポーティなカラーです。3層コートの塗膜構成によって、深みのある質感と高い彩度の発色を実現しました。3層コートとは、ホワイトボディ(板金)にサビ止め塗装(電着塗装)、ボディカラーを際立たせる下地色(中塗り)の上に施すもので、1層目として「微細アルミ顔料」、2層目「透明性青顔料+微細パール顔料」、3層目「クリア」の3層の塗膜で構成されています。スズキの場合は通常は2層コート塗装で、2回同じ色(カラーベース)で塗り、その上にクリアを塗っています」

■開発ではどんな点に苦労しましたか?

「工場でボディカラーを塗る際には、1回で全部の塗膜を付けられないので、2回に分けて塗っています。その工程をそれぞれ1ステージ、2ステージと呼んでいます。3層コートの場合は、1ステージで1層目、2ステージで2層目を塗り、2層コートの場合は同じ塗料で2回塗ります。2回塗って1つの色を作っている2層コートに対して、より薄い塗膜で発色するのが3層コート。薄い塗膜で中塗りを隠蔽(下地を隠す)し、発色する必要があります。2層目は1層目を透かして深みを出していますが、膜厚管理がデリケートで、膜厚で色味が変化してしまいます。このように、3層コートは2層コートに比べて非常に難しく、生産現場の苦労がものすごかったです。
 
しかも、スイフトを生産する相良工場では、水性塗料を採用しています。水性塗料は粘度が低く、縦面に塗ると垂れてしまうので、薄く塗らないといけません。薄く塗りながら、ムラなく隠蔽していくことが求められ、非常に高いハードルが立ちはだかりました」
 
■開発の経緯は?

「2016年くらいに2020年のスズキ創立100周年に向けて、大々的に打ち出そうということで、デザイン部からの提案で何かをやろうという話になったのです。新型スイフトにラインアップされている既存色のバーニングレッドパールメタリック(3層コート)と対になるようなスズキらしいブルーを作ろうということで始まりました。難しい色だということもわかっていましたので、工場でトライする前に、いろいろな試験などを行って“あたり”を付けたこともあり、そこそこ時間がかかってしまいました。

水性塗料に3層コート塗装など難しい条件がそろっていて、途中で頓挫しそうになるわけですよ。デザイナーとしては何とか開発を継続したいという思いから、役員や社長にまで掛け合って、100周年でやろうじゃないかというところでコンセンサスを得て、何とか市販にまでこぎ着けたという感じです。通常だったら、もしかすると途中で終わっていたかもしれないですね」
 
■頓挫しそうになるほど難しかったのはどんなところですか?

「外板は何とか塗れるのですが、ドアを開けたときの内側やリヤゲート、給油口の内側などの“内板”にも色が塗られています。3層コートの場合はその内板を塗るのが難しかったのです。塗装ラインで1ステージ、2ステージを通過する際には、ボディはドアが半開きの状態で流れていきます。その状態で自動の塗装機で塗っていきますが、内板に塗料が付きづらいのです。2層コートの場合は、1ステージ、2ステージで同じ色を2回塗れるため塗膜が厚くなるので内板に塗料が付きますが、3層コートの場合では1ステージで「微細アルミ顔料」、2ステージで「透明性青顔料+微細パール顔料」と違う塗料を薄く塗るので、内板に色が付きにくく、外側のボディカラーと違った色に見える可能性があります。
 
それでは品質の問題につながりかねないので、内板用の塗料を別に開発して1ステージの前に塗っています。内板は影になるので外板と色みがピッタリと合っていなくてもいいんです。ただ、その差は縮めないといけません。このような地道な作業がずっと続いていくなかで、開発が頓挫しそうになりました」
 
■それにしても7年は長かったですね?

「私の経験からもここまで開発期間が長いボディカラーはなかったと思います。バーニングレッドもそこそこかかりましたけれども、やはり100周年というのが大きかったと思います。あと、社長をはじめ、みんなが一丸となれたというところですね。社長の一声で生産技術も工場も動いたみたいなところもありますし、会社が一丸となって、というところが大きかったのではないでしょうか。社長がよくそのころから“チームスズキ”という言葉を使っていましたけれど、みんな本気で難しいことにチャレンジできたので、まさにチームスズキの色ではないかと思います」
 
フロンティアブルーパールメタリックは当初、2020年のスズキ100周年を目指して開発する予定だったが、3年ほど遅れて新型スイフトから導入されることになった。7年間をかけてじっくりと開発したカラーには、開発陣の思いが詰まっているのである。ちなみに、フロンティアブルーパールメタリックは新型スイフトの全グレードに4万4000円のオプション(ブラック2トーンルーフ車は9万9000円)で設定されている。 

〈文=ドライバーWeb編集部〉

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
くるまのニュース
本拠地の欧州で「メルセデス・ベンツのタクシー仕様」シェア急降下! なぜ? 「“ベンツのタクシー”に乗れたらラッキー」な時代が到来するのか
本拠地の欧州で「メルセデス・ベンツのタクシー仕様」シェア急降下! なぜ? 「“ベンツのタクシー”に乗れたらラッキー」な時代が到来するのか
VAGUE
「銀の皿」に「レジ横のガム&タバコ販売」に1000円以下のメニューと「ザ昭和」がたまらない! トラック野郎を癒し続ける「采女食堂」はぜひ立ち寄るべし【懐かしのドライブイン探訪その5】
「銀の皿」に「レジ横のガム&タバコ販売」に1000円以下のメニューと「ザ昭和」がたまらない! トラック野郎を癒し続ける「采女食堂」はぜひ立ち寄るべし【懐かしのドライブイン探訪その5】
WEB CARTOP
ラッセルが今季3度目のPP獲得。ガスリーと角田裕毅がQ3で健闘見せる【予選レポート/F1第22戦】
ラッセルが今季3度目のPP獲得。ガスリーと角田裕毅がQ3で健闘見せる【予選レポート/F1第22戦】
AUTOSPORT web
F1ラスベガスGPで追い上げ2位のハミルトン「予選がしっかりできれいれば、楽勝だったろうに」
F1ラスベガスGPで追い上げ2位のハミルトン「予選がしっかりできれいれば、楽勝だったろうに」
motorsport.com 日本版
中央道「長大トンネル」の手前にスマートIC開設へ 中山道の観光名所もすぐ近く!
中央道「長大トンネル」の手前にスマートIC開設へ 中山道の観光名所もすぐ近く!
乗りものニュース
ペレス、チームメイトのフェルスタッペンとは対照的に10位が精一杯「レッドブルは最高のチーム。来年は良いマシンが作れるはず」|ラスベガスGP
ペレス、チームメイトのフェルスタッペンとは対照的に10位が精一杯「レッドブルは最高のチーム。来年は良いマシンが作れるはず」|ラスベガスGP
motorsport.com 日本版
「ん、ここ工事してなくない?」 高速道路の車線規制“ムダに長い”場合がある理由とは?
「ん、ここ工事してなくない?」 高速道路の車線規制“ムダに長い”場合がある理由とは?
乗りものニュース
日本専用の新型「“MR”スポーツカー」初公開! 旧車デザイン×「ネットゥーノ」エンジン採用! 600馬力超えの「チェロSE」登場
日本専用の新型「“MR”スポーツカー」初公開! 旧車デザイン×「ネットゥーノ」エンジン採用! 600馬力超えの「チェロSE」登場
くるまのニュース
ピエール・ガスリー、予選3番手から無念マシントラブル脱落に「顔面平手打ちされたみたい」残り2戦にポテンシャルは確信|F1ラスベガスGP
ピエール・ガスリー、予選3番手から無念マシントラブル脱落に「顔面平手打ちされたみたい」残り2戦にポテンシャルは確信|F1ラスベガスGP
motorsport.com 日本版
モーターマガジンMovie 週間視聴回数BEST5 プラス1(2024年11月17日~11月23日)
モーターマガジンMovie 週間視聴回数BEST5 プラス1(2024年11月17日~11月23日)
Webモーターマガジン
F1マシンを脇に歌舞伎……来春鈴鹿のグリッドでも! 日本GPアンバサダーに就任した市川團十郎「息子と歌舞伎の扮装で踊る計画を」
F1マシンを脇に歌舞伎……来春鈴鹿のグリッドでも! 日本GPアンバサダーに就任した市川團十郎「息子と歌舞伎の扮装で踊る計画を」
motorsport.com 日本版
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
くるまのニュース
遂に“冷却機能”も装備! ハイグレード・ワイヤレス充電スマホホルダーの注目作が登場【特選カーアクセサリー名鑑】
遂に“冷却機能”も装備! ハイグレード・ワイヤレス充電スマホホルダーの注目作が登場【特選カーアクセサリー名鑑】
レスポンス
“やっちまった”タナク、僚友ヌービルにWRCタイトル明け渡す痛恨クラッシュは「マジで大惨事」
“やっちまった”タナク、僚友ヌービルにWRCタイトル明け渡す痛恨クラッシュは「マジで大惨事」
motorsport.com 日本版
「えっ、4つのリングのマークじゃない!?」 アウディが新ブランドを立ち上げ なぜ“4リングス”を使わない? 世界最大市場での戦略とは
「えっ、4つのリングのマークじゃない!?」 アウディが新ブランドを立ち上げ なぜ“4リングス”を使わない? 世界最大市場での戦略とは
VAGUE
スバル新型「すごいフォレスター」登場に反響あり! 水平対向エンジン×本格ハイブリッド搭載に「楽しみ!」の声も! 日本発売は一体いつ?
スバル新型「すごいフォレスター」登場に反響あり! 水平対向エンジン×本格ハイブリッド搭載に「楽しみ!」の声も! 日本発売は一体いつ?
くるまのニュース
「山賊もやし炒め定食」はパンチの効いた味濃いめ! 東関道「湾岸幕張PA」
「山賊もやし炒め定食」はパンチの効いた味濃いめ! 東関道「湾岸幕張PA」
バイクのニュース

みんなのコメント

3件
  • mak********
    横から見たデザインもいいよなぁ。
  • まさと
    これだけ苦労して開発しても、結局売れず、ネット上ではキモオタブルーなどと揶揄されるんだから切ないですね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

172.7233.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

4.5368.0万円

中古車を検索
スイフトの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

172.7233.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

4.5368.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村