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昭和原付ストーリー(3)仁義なきファミリーバイク闘争【昭和エモ伝Vol.9】

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昭和原付ストーリー(3)仁義なきファミリーバイク闘争【昭和エモ伝Vol.9】

八千草薫さん、水沢アキさん、そして何とマイケル・ジャクソンも?!

二輪メディア歴50年のベテランライターが、日本におけるバイク黄金時代のアレコレを実体験と共に振り返る昭和郷愁伝。今回はバイクブームの火付け役ともなったファミリーバイクについて回想します。

→【画像7枚】ファミリーバイク黄金狂時代

●文:ヤングマシン編集部(牧田哲朗)●写真:YM Archives

“主婦向けスクーター”がゴールドラッシュに

バイクが売れに売れた1980年代の日本。近年の2輪車販売台数が年間約40万台前後で推移しているのに対し、当時はその数300万台以上。俗に言う日本の「バブル期」がブームを加速させた面も当然あるけど、個人的には「ファミリーバイク」と呼ばれたジャンルでバイクの新しい金鉱脈を掘り当てられたのが大きかったと考えている。

それ以前は大きく分けてロードスポーツとオフロードスポーツの2大ジャンルがあり、別枠的にビジネスバイクが存在している程度だった。そこへ、1976年にホンダからお手軽バイクのロードパルが登場すると、その様相が一変。モペット的なファッショナブルなスタイルにゼンマイ仕掛けのようなイージーな始動方式を備えていて、原付バイクへの入口を一気に広くしてくれたと言っていい。テレビCMには当時の世界的女優だったソフィア・ローレンを起用し、女性暦や主婦層を中心に、今までとは別のお手軽バイク需要を掘り起こしたんだ。市場にとってみれば、ゴールドラッシュの「金が出たぞー!」みたいなものだったと思う。

―― 主婦を意識したオシャレな販売戦略が展開された1976年発売のホンダ・ロードパル。宣伝には世界的映画女優だったソフィア・ローレンが起用され話題に。エンジン始動方法を男勝りなキックではなくタップスターターとしたのが売りで、ペダルを2~3回踏み込んでゼンマイを蓄力し、ブレーキレバーによる解放で手軽に始動できた。

最終的にはスーパーでも売られていた

翌年にはヤマハが両足を揃えて乗れるステップスルータイプのパッソルを投入し、こちらも大ヒット。ホンダのロードパルと共にファミリーバイクという今までにはなかったジャンルが確立することになる。さぁ、ここから過激な販売競争の始まりだ。見つけた金を誰がどれだけ掘り起こせるか。今までバイクを売っていなかった自転車屋の店頭だけじゃなく、ホームセンターやスーパーの店頭にもファミリーバイクが並び、販売店の引き抜きや大幅値引き合戦が繰り広げられた。

―― ホンダのロードパルの大ヒットを受け、ヤマハが1977年に発売したパッソル。スカートでも乗り降りしやすいステップスルーにより、両足を揃えて乗れる魅力をアピールして大ヒット。メカ部分を覆ったソフトなイメージで現代流のスタイルを築いたと言える。宣伝には女優の八千草薫さん(姉妹車のパッソーラは水沢アキさん)を起用していた。

―― パッソルと八千草薫さん。

値引きといっても、20~30%オフなんてレベルじゃない。定価の半分ぐらいまで安く売るのも割と一般的だったし、場合によってはいったん登録して新古車扱いにしてまでもっと安く売る。自転車に毛の生えた値段で新車の原付が買えるのだから、市場はどんどん広がっていった。しかもニューモデルが1~2週間に1機種ぐらいのハイペースで登場するもんだから編集部もてんやわんや。新車発表会だ~試乗だ~と、機種名を覚える暇すらなかった感じだったね(※シリーズ間で名前も非常に似通っていた)。

―― こちらは筆者も取材メンバーとして同行した本誌1978年8月号の比較試乗の模様。まだ“モペット”と呼んでいたが、すぐに“ファミリーバイク”というカテゴリーができた。しかし、よくこれで箱根まで行ったもんだw。ちなみに、原付はまだノーヘルでよかった時代でした。

値引きの果てに3万円切りも

このファミリーバイクのシェア争いの中心はホンダとヤマハで、仁義なき値引き販売競争は後にHY戦争と呼ばれる現象のひとつとなった。しかも後半戦になると、安売りを前提にして作ったと思われるようなバイクまで出てきた。例えばホンダのスカイ。これを一番安く売ってたのは、確か3万円を楽に切ってはたず。でもね、全開で走るとフラフラして危ない。ホンダがこんなバイクを作ってしまうほど、HY戦争というのは狂った時代だったんだと思う。

最終的にメーカーが倒産危機を迎えたり、市場が荒れ果ててしまうなどして、利益を度外視した販売戟争は終焉を迎えるのだけど、良かったこともいくつかあった。女性の市場を開拓できたし、とにかくバイクに興味がなかった人も手を出してくれた。どのレベルかというと、買いにきてみたが免許を持ってなかったとか、給油が必要だということを知らずにエンストする人とか、そんな冗談のようなエピソードも多々あった。

それも、ライダー人口を爆発的に増やす要因になったのは確か。そこを入口にステップアップする人も増え、これが後のバイクブームやレプリカブームにつながるきっかけにもなってくれたことも忘れてはならない。ちなみに冒頭でバイクの年間販売台数が300万台と書いたが、その8割以上が原付の数であったことからも、ファミリーバイクブームの凄まじさがわかっていただけるだろう。

―― 当時の原付業界は市場が大きかったので、宣伝には芸能人がバンバン登場した。1979年発売のヤマハ・マリックに跨がるのは、女優の桃井かおりさんだ。

―― ちなみにスズキのLOVEにはマイケル・ジャクソンが登場! 本当にいい時代の日本でしたね。

※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。

文:WEBヤングマシン ヤングマシン編集部
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みんなのコメント

19件
  • ycj
    今でもパッソーラに乗ってます。現役です。
  • siz********
    まさに29,800円なんて価格でしたね。あの頃は消費税なんてのもなく。。。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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