ブラジル・サンパウロの内陸部モジ・グァスーに位置するアウトドローモ・ヴェロチッタで6月28~30日に争われたSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”第5戦は、豪雨中断となった第2戦ファイナルの代替を含む変則3ヒート開催の週末に。
その仕切り直し第2戦メインレースを“3連覇”経験者ダニエル・セラ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)が制すると、本来の第5戦スプリントをガエターノ・ディ・マウロ(カバレイロ・スポーツ/シボレー・クルーズ)が獲り、今季9戦目にしてようやく初の2勝目を飾るドライバーに。そして日曜ファイナルでは、現在42歳のベテラン、フリオ・カンポス(ポール・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)がポール・トゥ・ウインを達成する結果となった。
スター選手の饗宴。TC2000王者とSCBタイトル候補が快勝。バリチェロもテスト参加/TCR南米第3戦
一方、その背後では22歳の新鋭エンツォ・エリアス(クラウン・レーシング/トヨタ・カローラ)と、その僚友で新たな選手権リーダーに浮上したフェリペ・バプティスタ(クラウン・レーシング/トヨタ・カローラ)らが、元F1経験者らを含むベテラン勢を抑え切っての表彰台を獲得するなど、シリーズに押し寄せる世代交代の波を感じさせるレースウイークとなっている。
先の3月24日に同地で開催された第2戦は、地域を襲った暴風雨のために安全上の理由からレースを中断。その時点からドライバー獲得ポイントも確定させないまま、代替ラウンドの実施が検討されてきた。
ようやく迎えた補完レースでは、ラウンド中に各ドライバーが保有していた残りの追い越しボタン(ファン・プッシュ)回数や、ドライトラック用のタイヤセット配分も維持される条件となり、もちろんグリッド位置も当時の最前列を獲得していたセラとバプティスタがフロントロウに。背後の2列目3番手には、この週末を前に今季限りで強豪ユーロファーマRCを離れるとアナウンスした“3冠”ドライバーのリカルド・マウリシオと、同“2冠”のルーベンス・バリチェロ(モービル・エール・フルタイム/トヨタ・カローラ)の強力な顔ぶれが並んだ。
■土曜スプリントはマッサが前半支配も脱落
前戦5月開催のカスカバルでは、勝利を決定づけたかに見えたレース終盤、まさかのトランスミッション故障という悲劇に見舞われ勝機を逸していたセラは、約52分と31周勝負の間に2回のセーフティカー・ピリオドと、少なくとも2本のタイヤ交換が義務付けられたピット作業も無難にこなし、この過密なタイムスケジュールとなった金曜代替戦を制覇し、キャリア通算25勝目を手にした。
「とてもうれしい。前戦カスカバルの最終局面では残り3周で勝利を逃したが、ここではすべてがうまくいった」と、ル・マン24時間やその翌週のワトキンスグレン出場を経て、ようやくのSCB今季初勝利を掴んだセラ。
「僕らは非常に速いクルマを持っていたが、とても強いペースでドライブしなければならなかった。この金曜だけで多くのポイント(80点)を獲得したが、チャンピオンシップに向けては安心できないね」と、背後のバプティスタを念頭に気を引き締めるレースウイナー。
明けた土曜、素早く2回目のフリープラクティスを経て実施された予選ではベテランのカンポスが奮起し、2020年の同地以来となるポールポジションを獲得する。さらにQ2で12番手のタイムを記録した昨季の僚友フェリペ・マッサ(TMGレーシング/シボレー・クルーズ)も、チアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)と並んで土曜スプリントのリバースグリッド最前列を確保する。
「この成果にはとても満足している。ストックカーではポールポジションを巡っていつも激しい争いが繰り広げられており、ここで先頭からスタートすることはもっとも難しいことのひとつだからね」と、日曜メインレースに向けエリアスを0.315秒という大差で上回り、通算6回目のポールを得たカンポス。
迎えた土曜夕刻のスプリントはポール発進のマッサが前半戦を支配したものの、義務ピットでタイヤ交換に使用したホイールガンに問題が発生し、敢えなく優勝戦線から脱落。代わって4月開催のインテルラゴスのメインレースを制覇しているディ・マウロが、ルーベンスの愛息“ドゥドゥ”ことエドゥアルド・バリチェロ(モービル・エール・フルタイム/トヨタ・カローラ)やカミーロらを従え、キャリア通算3勝目を記録した。
■勝者カンポスが若手たちの台頭を称賛
「インテルラゴスでの勝利の前にもエンジントラブルに見舞われたが、なんとか素晴らしい仕事をすることができた。同時に明日もレースがあるので、あまりプッシュを費やさないことにし、最終的には少し節約することもできた。チームの仕事と全員の献身にとても満足している」と、今季2勝目を記録した最初のドライバーとなったディ・マウロ。
そしてようやく迎えた日曜のメインレースでは、ポールポジションの優位を活用したカンポスが、ほぼ4年前の2020年10月と同じくキャリア5勝目に向け必勝体制を構築。終盤にはマッサを先頭にルーベンスとドゥドゥのバリチェロ親子やリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)、セラやカミーロも交えた1パックの争いが繰り広げられる。
一方、フロントロウ発進だったエリアスの背後では、こちらも元王者ガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)らを仕留めたバプティスタが浮上し、勝者カンポスも今日の勝利の重要性を語りつつ、初タイトルを狙う若手たちの台頭を称賛する言葉を残した。
「まずはポールポジションからの優勝を達成できてとてもうれしい。しかし42歳の私にとって、その半分の年齢になる新世代の意欲を感じたことも喜ばしかった。この世代が全力でやって来るのを見るのは素晴らしいことだが、私は彼らのエネルギーを最後まで搾り取るつもりだ(笑)」と、22歳のエリアスと21歳のバプティスタにエールを送るカンポス。
「神様のご意志で、トラック上では多くの競争が繰り広げられることになるだろうが、我々も引き続きこのチャンピオンシップに勝つために努力するよ」
これで獲得ポイントを451に伸ばしたバプティスタが、新たなチャンピオンシップリーダーに躍り出た2024年のSCBシリーズ。続く第6戦は7月27~28日の週末にアウトドローモ・インテルナシオナル・アイルトン・セナことゴイアニアで争われる。
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