360モデナの取り扱い説明書(283P)は、フェラーリのブランド・カラーである真っ赤な表紙が目を引く。
表には「USO E MANUTENZIONE」と、イタリア語が記されている。日本語に訳すと「使用方法とメンテナンス」と、読むそうだ。その下には「JAPANESE VERSION」とも記されている。
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【前編のおさらい】Vol.34 謎多き付属マニュアル(前編)
あざやかなレッドの表紙が目を引く、取り扱い説明書。取り扱い説明書や整備記録簿はスケドーニ社製のレザーケースに入っている。表紙をめくると、「オーナーズ マニュアル」と書かれた日本語が。取り扱い説明書はイタリア語と英語にくわえ、日本語でも表記されている。日本語が一切ないセキュリティ・システムにかんする冊子とは異なり、読みやすくてよろしい。
さらにめくると、なぜか360モデナのイラストが2ページにわたって描かれているページが出てくる。「フェラーリ デザイン プロジェクト」と書かれたタイトルの下には、「新型Ferrari 360MODENAは、最先端技術を用いて開発された、8シリンダーFerrariの最新モデルです。」と、記されているのみ。
取り扱い説明書には、セキュリティにかんする冊子などとは異なり、日本語表記もある。冒頭、360モデナの概要についてイラスト付きで紹介。360モデナの概要について、きわめて短い本文にもかかわらず、ぜいたくに2ページも使うなんて驚きだ。
読み進めると、8Pには「お車を使用する前に」と、書かれたページになった。そこには衝撃の一文が!
「常にベスト コンディションに保つために500km毎の点検をお薦めします。」
500km毎に点検を推奨するとは驚きだ。スーパーカーというのはやはり、繊細な乗り物なのだろう。ちなみにもし、ボクの360モデナが500km毎に点検を受けたとしたら、この約半年で4回も受ける必要があった。4回も点検にだしたら、それだけで数十万円に達したはずだ……。
P.10には、なんとセキュリティ・システムに関する説明があった。セキュリティ・システムに関する説明のみをまとめた冊子は、イタリア語・英語・フランス語・ドイツ語表記のみだったが、こちらは日本語で記されている。内容もほぼおなじだ。となると、別冊はなんのためにあるのか? 謎が深まる。
【前編のおさらい】Vol.34 謎多き付属マニュアル(前編)
イモビライザーの解除方法は複雑である。故障も発見!P.24~P.27には、ダッシュボード・パネルのイラストとともに、各所が紹介されている。ほとんどは知っていたものの、メーターパネル右下に室内温度センサーがあることは、はじめて知った。
P.37には、油温計および水温計について記されている。どちらにも備わる赤色のウォーニングライトは、水温が125℃以上、油温が155℃以上になると点灯するという。
以前、「水温計が100℃によく達するから、オーバーヒートが不安」と、記事でも書いたが、100℃ぐらいではなんら問題ないのである。
360モデナのメーターパネルはアナログ・タイプ。P.41からはウォーニング・ライトの一覧が掲載されている。読み進めると、ある事実に気がつく。
というのも、P.47に「燃料タンク フラップ オープン」のイラストがあったからだ。これは、燃料タンクのフラップが開いている、もしくは完全にしまっていない場合に表示されるという。が、ボクの360モデナでは表示されたことがない。センサーかなにかが故障しているのかもしれない。だが、とくに困っていないので修理は考えていない。
P.62にはステアリング・ホイールの調整法が記されている。が、ここでも驚きの事実が! ボクはずっと、チルト機構しかないと思っていたが、なんとテレスコピック機構も備わっていたのだ。
のちほど確認したところ、たしかにステアリング・ホイールは前後に動いた。が、相当な力を要した。長年動かさなかったため、動きが渋くなってしまったようだ。
【前編のおさらい】Vol.34 謎多き付属マニュアル(前編)
パドルシフト付きのステアリング・ホイール。P.138からP.157までは、各種ランプ類の交換方法やヒューズ・ボックスについて、記されている。
とくにランプ類の交換方法は、かなり細かく書いてあるから、ボクでも読みながら交換出来そう。機会があれば1度、トライしようと思う。
P.164からP.173までは、整備項目にかんする情報が続く。
読み進めると、別冊『OWNER’S WARRANTY AND SERVICE BOOK』に記されている内容と重複する箇所が多い。
セキュリティ・システムもそうだったが、日本語表記のない別冊は、内容を和訳し、取り扱い説明書に載せているのだ。ゆえに、日本語表記のない別冊は、それほど必要ないかもしれない。もっとも、オリジナルのほうがすこしだけ詳しく記されているから、あったらあったで心強いが。
【前編のおさらい】Vol.34 謎多き付属マニュアル(前編)
フェラーリ専用のクリーニング・キットのお値段は?P.197~P.198は、「皮革部品のクリーニングとお手入れ」に、ついだ。レザーの手入れについて、これまで深く考えなかったので、とりあえず読む。
するとそこには「年に3~4回適切なお手入れをすることで、質や自然な光沢、柔軟性を維持できます」と、記されている。さらに「お手入れには、フェラーリ社で独自に開発およびテストをした特別な皮革保護製品をご利用になることをお薦めします」と、記されている。
フェラーリ純正の皮革保護製品(クリーナーおよびクリーム)は、フェラーリ社指定のサービス センターで購入可能というから、早速、フェラーリ横浜サービス・センターに訊いた。
専用バッグに入ったカーケア・キットの価格はというと……なんと「現在は販売されておりません」とのこと。なんでも、商品に含まれる成分が、日本の薬事法(現在)に引っかかってしまうため、販売出来ないという。ちなみに、以前販売されていたときの価格は約5万円だったとのこと。
かつて販売されていた純正のカーケア・キット。P.202からP.209まではテクニカル・データがずらりとならぶ。
静止状態から100km/hまでの加速に要する時間は4.5秒、最高速度は296km/hといった情報から、燃料消費率(市街地では、100km走行あたり28.0リッター)、寸法および重量などが記されている。
【前編のおさらい】Vol.34 謎多き付属マニュアル(前編)
たかが取説、されど取説P.210からはテクニカル・インフォメーションと題し、エンジン機構などについて詳しく記している。
驚いたのが、これに62ページも割いている点だ。サスペンション・システムやブレーキ・システムをはじめ、いくつかのメカニズムは、わかりやすいイラストつきで紹介されている。フェラーリ・オウナーの多くが、気になる部分だからこそ、多くのページが使われているのかもしれない。
説明も細かい。たとえば、ショック アブソーバーについては「BOGE製。ショック アブソーバーは複動ガス混入式で、電子制御により可変セッティングがされ、同軸のコイル スプリングにより構成されています。ロッド内に取り付けられているゴム製バッファーにより圧縮ストロークを制限されています。伸び側のストロークはショック アブソーバー内部に弾性パッドが装着されています」と、いった具合だ。
P.273以降は目次になり、最後、当時の輸入元だったコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドの店舗情報が記され、おわる。
283ページの取り扱い説明書を、ボクは朝から晩まで1日中読み続けてしまった(購入してから、“しっかり”読んだことはなかった)。
読んでおもしろかったのもさることながら、ステアリング・ホイールのテレスコピック機能をはじめ、知らなかった事実を次から次へ知ることになり、「これはしっかり読まないとマズい!」と、思ったからだ。
これまで、取り扱い説明書をよく読まず使っていたが、それで困ることはなかった。が、今回取り扱い説明書をじっくり読んだ結果、より360モデナに対して愛着が湧き、長く乗れるような気がした。また、知らなかった機能を新たに使うようになった結果、使い勝手が増した。
とはいえ、取り扱い説明書もフェラーリらしさ満載だった。やはり、フェラーリは特異なクルマであるのだ。
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
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