5月26日(日)に開催された世界3大レースのひとつ、第108回インディアナポリス500マイルレース(インディ500)に出走したカイル・ラーソンは、インディ500と同日開催のNASCARカップシリーズ『シャーロット600マイルレース』に連続で出場するという通称『ザ・ダブル』に挑戦したが、その目論見は雨によって阻まれてしまった。
2021年のカップシリーズ王者であるカイル・ラーソンは、2024年のインディ500へアロウ・マクラーレンとヘンドリック・モータースポーツの共同プロジェクトとしてエントリーすることを発表。カップ・シリーズ王者のインディ500挑戦への注目度はもちろん高く、日系4世というルーツも持つラーソンは、過去に観戦したインディ500で奮闘していた佐藤琢磨の姿も印象深かったと明かすなど、今回の出走には日本のファンからも注目が集まっていた。
14日(火)から開始されたプラクティスセッションでは、今大会で特徴的だったシボレー・エンジンの好調も相まって、上位スピードを連発。2013年インディ500を制したトニー・カナーンのコーチングも助けとなり、最初の注目どころとなった予選では見事5番手グリッドを獲得して見せた。
そして迎えた決勝日。ラーソンにとっては長丁場の前半戦ともいえるインディ500の舞台は、不運にも雨雲に包まれてしまった。当地では決勝レースの開催自体も危ぶまれたが、インディカーは4時間のディレイと16時45分のレーススタートを発表。この時点で、『シャーロット600マイルレース』とはスケジュール上のバッティングが発生し、彼の『ザ・ダブル』は完遂のシナリオが絶たれてしまう。
そして出場レースの選択を迫られたラーソンは、インディ500への出場を決めることに。路面にはドライアップの処理が施され、ラーソンは5番手から500マイルの決勝レースを戦い始めた。
しかし、レースは開幕直後から後方で起きたクラッシュの影響でイエローコーションが導入。9周目に迎えたリスタートでラーソンは、加速時のシフトアップで生じたホイールスピンが原因で加速が鈍り、5番手から16番手にポジションを落とすことになる。
それでも勢いの良い彼のマシンは、中団勢の激しい争いのなかでオーバーテイクも見せ、NASCARカップ・シリーズ王者の実力を示す。残り20周のころには、ピットシークエンスの違いはあれど、4ラップの間ほどラップリーダーとなる活躍も見せ、最終的には18位でチェッカー。ルーキー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれる走りを披露した。
レースを終えたラーソンは、「来年もぜひ戻ってきたい」と公式インタビューに答える。
「最初のリスタートはうまくやったと思っていたのだけれど、何が起きたのかわからなかったよ。これに関しては少しフラストレーションがたまっているが、レースを走り終えたことを誇りに思っているよ」
「もっと良いレースをできたようにも思うから、そこは悔しいところだけれど、レースは何が起きるか分からないね」
■ナスカーの現場に向かうも、雨で出走ならず
ラーソンがインディ500を戦っているころ、シャーロット600マイルレースにエントリーしていた彼の5号車には、これまでNASCARエクスフィニティ・シリーズで戦ってきたジャスティン・オールゲイアーが代役となり、オーバルでのレースを戦っていた。
『ザ・ダブル』の前半戦を終えたラーソンはヘリコプターに乗ってシャーロット・モータースピードウェイに向かうも、彼の降り立った現場はすでに雨雲に包まれていた。
悪天候を理由に中断されたレースは、すでに400周のうち249周を完了しており、オールゲイアーが駆る5号車は13番手。レーシングスーツ姿で到着したラーソンは、すぐにハンズ等のギヤを身に着けてマシンにも乗り込んだものの、コースがふたたび開かれることはなく、この時点の順位でレースは成立した。
彼の『ザ・ダブル』は志なかばで不完全燃焼に終わり、理想的なものにはならなかったが、インディカーやナスカー双方のファンにとって大いに刺激的な挑戦になったことだろう。ラーソンが述べた来年の再挑戦への想いには、期待の心が止まない。
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