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渡辺一樹が最終周に大逆転! 劇的な初優勝を飾る。初出場の宇川徹はクラス優勝/テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE

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渡辺一樹が最終周に大逆転! 劇的な初優勝を飾る。初出場の宇川徹はクラス優勝/テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE

 日本一の草レースとも言える『2024 テイスト・オブ・ツクバ SATSUKI STAGE』が5月11~12日に茨城県・筑波サーキットで開催され、最高峰クラスであるHURCULES(ハーキュリーズ)クラスで渡辺一樹(POWER-BUILDER&PRESTO CORSA)が激戦を制し初優勝を飾った。また、HURCULESクラスに混走で行われたS-MONSTER Evo.クラスには、宇川徹(TEAM UKAWA)がホンダCB1100Rで初出場。クラス優勝はもちろん、総合でも6位でチェッカーを受け、さすがの走りを見せた。

 5月と11月に、年に2回、オートバイの大人の大運動会とも言えるテイスト・オブ・ツクバ。2024年のSATSUKI STAGEも多くのエントラント、お客さんを集めて開催された。出展ブースの数も増え、今回も“日本一の草レース”にふさわしく大いに盛り上がっていた。

加賀山「振り返ったら綺麗だった」/世界GPのレプリカだらけでタイムスリップ?【テイスト・オブ・ツクバTopics】

 最高峰クラスのHURCULESには、鐵隼をライディングする加賀山就臣(Team KAGAYAMA)が連覇を達成するか注目された。今回は、昨年末からDUCATI Team KAGAYAMAの立ち上げ、その運営に奔走してきたこともありマシンのアップデートはなかったが、優勝候補の最右翼に挙げられていた。その加賀山を破るべくエントリーしてきたのが渡辺だったが、3月の全日本ロード第1戦鈴鹿2&4レースで負傷したため、事前にテストは行うことができず身体的にもギリギリ間に合ったというところだった。新庄雅浩(First☆Star AUTOBOY ACTIVE)にいたっては、やはり全日本ロードで負った怪我のため今回は無念の欠場。それでもサーキットに顔を出しトークショーや実況解説でレースを盛り上げていた。

 カワサキH2Rをライディングする光元康次郎(Garage414&WoodStock)、梶山知輝(YELLOW CORN/OVER Racing)と初参戦の松本隆征(YELLOW CORN/OVER Racing)のイエローコーンコンビも調子を上げてきておりトップ争いに加わってくることが予想された。

 レースウイークは朝晩は肌寒いくらいだったが、日中は気温も上がり路面コンディションもありグリップは決してよくはなかった。そんな中で行われた公式予選では、加賀山がただひとり57秒台に入れポールポジションを獲得。タイムは57秒886。2番手に渡辺が58秒299、3番手に光元が58秒315、4番手に松本が58秒415、5番手に梶山が58秒415、6番手に松田光市(遊心&Webike・51RTT)が58秒990で続き、宇川は59秒327で7番手、S-MONSTER Evo.クラストップにつけた。

 予選が終えた時点で渡辺は“このままでは勝てない”と思ったと言う。「水曜日から走り始めたのですが、針替代表がいろいろよかれと思ってバージョンアップしてきてくれたことが、なかなか噛み合わず、土曜日の特スポでもセッティングもまとまらないままエンジンブローしてしまい、急きょ違うエンジンに載せ換えて、ぶっつけで予選でした。そこでも同じような問題が出てしまっていたので“厳しいなぁ”と思っていました」

 しかしPOWER-BUILDERの針替伸明代表は諦めなかった。予選終了後に筑波から約20分の場所にあるショップに戻り、再びベンチを回して「自分なりに、ここまでやってもダメだったらダメだ」(針替代表)という状態にして決勝に挑んだ。

 かくしてウェイティングエリアから前のクラスの表彰式が終わる前にグリッドへ移動する筑波方式を分かっていない渡辺は、ピットにマシンが来てサイティングラップがあると思い談笑していたが、コンパクトな筑波なのでスタートに間に合わないということはなかった。グリッドに着き、ウォームアップ走行を終えると「ようやくハマった。これならイケる!」と手応えを感じていた。

 ホールショットはスタートを得意としている加賀山が奪い、光元、そして渡辺と続いていくが、渡辺はアウトから光元をまくるラインを取り2番手に浮上。2周目の1コーナーでは光元がインを突き2番手に上がると、続くバックストレートでスーパーチャージャーパワーを炸裂させて加賀山をかわしトップに浮上する。序盤は光元がレースをリードし加賀山、渡辺、松本、梶山が続き、やや感覚を空けて宇川、行方知基(レーシングチーム刀鍛冶)、松田と続いていた。5周目の第2ヘアピンでは、加賀山が光元のインを刺しトップに浮上。やや加速の鈍った光元を渡辺もかわしていく。

 重量級の加賀山・鐵隼、光元・H2Rがインを締めるラインを取るのに対し、自由度のある渡辺は高いコーナリングスピードでアウト寄りのラインを取ってレースをかき回す。そしてレース終盤に入ると再び光元がトップに浮上。第2ヘアピンで加賀山が再び仕掛けるが、光元が抑えると、加速の鈍った加賀山を渡辺がかわし、光元、渡辺、加賀山の順でファイナルラップに突入する。

 渡辺は高いコーナリングスピードのままスライドしながら1コーナーに進入し、コーナーを立ち上がると、その勢いのままS字コーナーで光元をかわしトップに浮上。あとはバックストレートで光元の加速をどう防ぐかという場面だった。第2ヘアピンでも驚異的なコーナリングスピードを見せる渡辺。そこに加賀山が光元のインをブレーキングで入ってくる。クロスラインを取った光元だったが、立ち上がりで加賀山が逆にクロスラインを取って前に出て勝負あり。渡辺がトップでチェッカーを受けT.O.T初優勝を飾った。

 初優勝の渡辺は「レース序盤は、抜くことはできなかったのですが、ついていくのは余裕があって2人(加賀山、光元)とも、しっかりインを抑えていたので、どこでパスするか考えながら走っていました。中盤くらいから、みんなタイヤが厳しくなってきたので、これならチャンスがあるかと思っていたら、自分もしっかり厳しくなっていました(笑)。終盤に入って光元選手が前に出てガチャガチャやってくれていたので、最後の乱打戦の隙間で前に出ることができました。勝つことができたのは、針替さんが最後までもがき続けてくれたおかげです」と語った。

「前回は、キャブを付けただけ仕様で57秒3まで出ていたので、さらにスムーズに効率化を狙っていったのですが、逆にシビアになりすぎてしまっていました。挙げ句の果てには土曜日にはコンロッド折れからのエンジンブロー……。どこまで試練を与えるんだという感じでしたが、逆に楽しんでいましたね(笑)。エンジンを載せ換えることになったのですが、6割できていて組んでいる途中のものと、スペアで用意していた中古のものにはハイカムが入っていました。予選はバージョンが全く違うエンジンで何とか出したタイムなので、あれ以上は無理でした。そこから最後のあがきをしてレースは一樹が帳尻を合わせてくれました。まぁ勝ったら何とでも言えるので“筋書き通り”のレースでしたね(笑)。本当はコースレコードを公式に更新したかったのですが、今回は路面温度も高かったですし、秋までにキッチリ仕上げて挑みます」と針替代表。

 ちょうど1年前は、ライダーの岩﨑朗をレース直前に失い、POWER-BUILDERとしては最悪の状態だった。それが昨年の神楽月ステージで渡辺が乗ることになり予選ではコースレコードを更新。しかし渡辺は、前年度、全日本ロードJSB1000クラスランキング2位だったこともあり賞典外となったため公式記録に残ることはなかった。今回は気温的なこともあったが、マシンセットが決まらずタイムは出せなかったが、決勝で何とかセットがハマり岩﨑朗が走らせたマシンを表彰台の頂点に導いたのだった。

 惜しくも連覇を逃した加賀山は「言い訳から入ってしまうのですが、今年はドゥカティを全日本で走らせるためにドタバタだったので、なかなか鐵隼の準備ができずサスペンションの見直しくらいで挑みました。11月に比べると路温も高くタイムが出にくい状態だったのですが、予選ではポールポジションを獲ることができました。決勝はタイムを上げることができず多数でのバトルになってしまいました。一対一であれば分があったと思うと悔しいですが、一樹と光元選手といいバトルができてよかったですね。今回も隼応援団がたくさん集まってくれましたし、レース後にはパレードも鐵隼と一緒にパレードができたのも、うれしかったです。今後もメーカーを問わず、みんなが集まれるイベントができればいいなと思っています」とコメント。

 序盤、そして終盤にもトップを走り3位となった光元は「前回とパッケージは変わっていないのですが、足回りを仕様変更の中ですが大きく入れかえてきたので、今回のコンディションに合わせるのに手こずりました。土曜はよかったのですが、予選で外してしまい、決勝で車高を上げて挑みました。レース中の状態は悪くなかったのですが、タイヤがキツくなってきたときにライダーの技術的な部分でやられてしまいました。今回は自分自身の力は出し切れたのでスッキリしていますが、体力的な課題もあったので、11月はそこを改善したいですね」と悔しさはないと語った。

 OVER Racing Y.C.09でトップグループを走った梶山と松本のイエローコーンコンビも大健闘。その後には、空冷マシンの宇川がチェッカーを受けている。

「予選で58秒台に入れたかったけれど、なかなか厳しかったですね。ちょっと引っかかったので、なければ58秒台に入れられたかな!? 決勝は、リヤサスをアジャストして臨んだのですが、いい方向にいきました。レースは、ストレートで離され、コーナーで詰めての繰り返しでしたがクラスが違うので仕方がないですよね。実は金曜日にクランクが割れてしまい、補強して走っていたので薄氷を踏むレースだったので、完走できてよかったですし、僕のT.O.T開幕戦としては、よかったと思います」とS-MONSTER Evo.クラス優勝の宇川。

 次回、テイスト・オブ・ツクバ、神楽月ステージは、11月2~3日に開催される。今回トップ争いを繰り広げた5台に新庄が加わり、さらに熱いバトルとなることが予想される。さらに新たなチャレンジャーも登場する可能性もあるかも!? 今から待ち遠しいところだ。

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