2018年10月18日、新型メルセデスベンツAクラスが日本デビューを果たして話題となっているが、いったい新型Aクラスはどんなクルマなのか。2018年5月にクロアチアで開催された国際試乗会から、そのインプレッションをお伝えしよう。(Motor Mahgazine 2018年7月号より)
「MBUX(メルセデス ベンツ ユーザー エクスペリエンス)」を採用
1億7000万円オーバーの「GT-R 50 by Italdesign」のここが凄い!
クロアチア南部の港町スプリトで開催されたプレス向け国際試乗会で対面した新型メルセデスベンツAクラスは、そのデザインの洗練ぶりに目を惹かれた。
新型CLSから使われている新しいブランドフェイスは、Aクラスの軽快感にとてもよくマッチしている。煩雑だったキャラクターラインが消し去られたクリーンなサイドビューも悪くない。
装飾を廃しシンプルにできたのは、面の作りやパネルの合わせなどのクオリティ向上があってこそ。それもあって全体の佇まいも少し成長したなというのが、新型Aクラスの改めての印象である。
一方、インテリアは思い切って斬新に振られている。薄型10.25インチスクリーンが2枚並べられたダッシュボード、凝ったデザインの円形エアダクトなどにより、雰囲気はとてもフレッシュだ。
新しいインフォテインメントシステム「MBUX(メルセデス ベンツ ユーザー エクスペリエンス)」の採用で、眼前のスクリーンは表示内容を自在にカスタマイズできるし、中央側のタッチスクリーンはスマートフォン感覚で様々な機能を呼び出せる。使い方は自在だ。
もっとも簡単なのは「Hey,Mercedes」と呼びかけると起動する音声入力機能を活用することだ。その特徴は、AIの活用によって自然な発話を理解することだ。たとえば室内が寒い時には「エアコンの温度を1度上げて」と言わなくても「寒いよ」と言えば、こちらの望みを推察して室内温度を上げてくれる。
もちろん、日本語にも対応する予定だ。これを使いたくてAクラスを選ぶ人も出てきそうなほどのキラーコンテンツである。
クラスベストの静粛性とCクラスを凌駕する完成度
クルマとしての基本性能も格段の進化を果たしている。ボディやシャシの剛性感はきわめて高く、やや硬めのノーマルサスペンション+18インチタイヤという組み合わせでも乗り心地は十分に質高く仕上がっている。
圧巻はオプションの可変ダンピング機構付きサスペンションで、そのしなやかなタッチは絶品。率直に言って現行モデルとは格が違う。静粛性もクラスベスト。実に快適だ。
しかもフットワークも好印象。しっとりとしたメルセデスらしい手応えを得たハンドルを切り込むと、望んだラインを正確にトレースできる。
ただし、新型Aクラスのリアサスペンションはトーションビーム式が標準で、タイヤサイズが18インチ以上、もしくは2Lエンジンを積むA250ではそれがマルチリンク式に格上げされるのだが、今回はトーションビーム仕様の用意はなかった。
ゆえに、あくまで今回乗った仕様に限定しての話になるが、その走りと快適性はもはやFFもFRも関係なく、Cクラスを凌駕するかもしれないという域にまで達していたと言っていい。
パワートレーンはA250の2Lターボ、A200の1.3Lターボを試した。無論、余裕があるのは前者だが、後者も実用性能は十分。現行の1.6Lターボよりもトルクの余裕を感じるほどで、7速DCTとの組み合わせにより、爽快な走りを楽しませてくれた。
先進安全装備・運転支援装備の充実ぶりも、さすがメルセデスベンツだ。操舵支援、完全停止・再発進まで対応したアクティブディスタンスアシスト ディストロニックや、ウインカーレバーの操作だけで車線変更を自動で行うアクティブレーンチェンジアシストまで用意されている。つまりその内容は、Sクラスと比べてもほぼ遜色ないのだ。
見た目のアピール度が高く、インテリアには触れてみたいと思わせる魅力がある。走らせればその質は高く、旧来のメルセデスファンを納得させること請け合いだ。全身どこを見ても、新型Aクラスの完成度は本当に隙がない。
激しい勢力争いが繰り広げられているこのクラスで、遂にメルセデスベンツが本気で覇権を狙ってきた。(文:島下泰久)
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