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最初に登場した電動化モデルは「小さなお洒落EV」──今のDS、これからのDS(前編)

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最初に登場した電動化モデルは「小さなお洒落EV」──今のDS、これからのDS(前編)

DSブランドの電動化モデル、E-TENSE。まず日本に上陸したのがEVのDS 3クロスバック E-TENSEだ。「小さなお洒落EV」という分かりやすい立ち位置のコンパクトSUVの実力を検証する。

フランス車の得意としてきた、小さな高級車

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まだまだ価格の高いEVを選ぶ理由って、意識高い系のイメージとか走行あたりのコストメリットとか、静かで加速がスゴい以外に、何があるだろうか? 脱炭素化待ったなし、とはいえライフサイクルアセスメントとか再生可能エネルギーの供給まで質せば、クルマ単体でエコは無理でも、始められるところからしか始まらない状態。でもEVに乗りたい気にさせるものが、優遇税制か、危なっかしい何ちゃって自動運転機能の醸し出す仮そめの未来感ぐらいでは、お寒い限りだ。

その点、DS 3クロスバック E-TENSEの「小さなお洒落EV」という立ち位置は分かりやすい。

外観上は、これまでのガソリン版とエンブレムぐらいしか違いはないが、当面は専用となる白一色の「リヴォリ」内装が圧倒的に洒脱。ダッシュボードからステアリング、ドアパネルにかけて白いナッパレザーが張り巡らされ、その上にこれまた白のダイアモンドステッチが走り、サイドサポート以外のシート座面や背面がファブリックという、異素材グラデのワントーンコーデなのだ。柔らかだがクラフト感のある仕上がりは、むしろ女性の方がメゾン系の鞄や革小物で馴染みある質感で、プレミアムとはいえBセグの車格から想像される雰囲気をはるかに超えてくる。フランス車の得意としてきた、小さな高級車の面目躍如だ。

パワートレインだけ見れば、これまでもあった1.2リッターターボの直3ガソリンエンジンが、近いスペックだが少しだけ増した136ps/260Nmの電気モーターに代わっている。もちろんガソリン版は継続販売されるし、年初に155psのパフォーマンスラインも加わったので、いずれを選ぶかはそれこそ乗り手次第だ。

メリハリを効かせて走らせるのが心地いい

ひと悶着ありそうなのは、パナールロッドという、ハイドロニューマチックのシトロエンDSが誕生した頃から存在したような、プリミティブな形式のリアサスを採用した点だ。「DSってフランスの前衛じゃなかったの?」と記号論者は涙目になり、「いやいやパナールはDSの歴史の一部」と歴史ツウは強弁するかもしれない。が、純粋に物理的・技術的な判断として、50kWh容量の重量物たるリチウムイオンバッテリーを後車軸寄りで受け止めるためで、その分、WLTPモードで約320kmの航続距離を確保している。小さめ容量でリア駆動でストラット式を採ったホンダeとは対照的なアプローチともいえる。

そもそもDS 3クロスバックのガソリン版は、静粛性の高さと秀逸なステアリングフィールの際立つ1台だが、E-テンスで走り出すと輪をかけて静かな走行感に驚く。バッテリー重量で+300kgとなった分、260Nmと+30Nm太ったはずのトルク感はほぼ相殺され、目を剥くような発進加速ではない。それでもステアリングフィールごと軽快さは失われておらず、キビキビというより、スムーズにメリハリを効かせて走らせるのが心地いい。

難点は、キツめの制動をかけるとブレーキの摩擦とモーター回生の抵抗が協調しきらない局面があって、制動力がすっぽ抜けることはないが、振動音が出る。制御として修正を期したいところだ。

ちなみに「E-TENSE」とは、DSのラインナップ内で広く電動化モデルを指す呼称で、BEVだけでなくPHEVなどハイブリッドをも指す。ブランドとして認知度はまだ発展途上のDSゆえ、DS 3クロスバック E-TENSEはフェミニン仕様に見えやすい。ところがDSはフォーミュラEで、ドイツ車御三家やポルシェ、ジャガーらを抑えて、直近の2シーズンのコンストラクターズ・タイトルを連覇したほど、武闘派EVとしても頭角を現している。

次回はDS 3クロスバック E-TENSEという第1弾に続いて、日本に今年導入が予定される電動化モデルを見ていこう。(後編に続く)

文・南陽一浩 写真・茂呂幸正、グループPSAジャパン 編集・iconic

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