人、車両のどちらにも当てはまるのは、共通の言語があり、両者(車)の関係性が構築されてこそ、良好なコミュニケーションが成り立つということ。将来的にインターネットを経由した自動運転を実現するには、車両間で、また車両と周辺環境がスムーズに通信できるようになる必要がある。現在、車両とモノの通信「V2X(Vehicle-to-everything)」のデータ交換については、世界的に標準化された技術的基礎は存在しない。将来的には、世界中の国々や自動車メーカーが策定する多種多様な規格を用いて通信することになるだろう。
ロバート・ボッシュGmbHの取締役会メンバー、ディルク・ホーアイゼル氏は「V2Xに関して、ボッシュはマルチスタンダードなアプローチを採用しています。私たちは、インターネット接続に対応したコネクテッドカーで利用される、あらゆる伝送規格を用いて通信できる汎用通信ユニットを開発しました」と述べている。通信ユニットとテレマティクスユニットは、それぞれ単独だと一つの伝送テクノロジーしか対応できませんが、ボッシュは両者を統合させたV2Xデータ通信を一括して制御するセントラル コントロール ユニットを開発した。これにより車両は、Wi-Fiネットワークが利用可能な都市部ではこれを使用し、それ以外の地域では携帯電話ネットワークなどを使って通信できるようになる。こうした多様な通信方法を管理する複雑な作業は、シリコンバレーに拠点を置くスタートアップ企業Veniam(ヴェニアム)のソフトウェアソリューションを用いて処理される。このソフトウェアは、通信ユニットに最も適切な通信方式を常に探し出すようプログラムするもので、これにより通信ユニットはその時々で利用可能な通信方式に自動で切り替えることができる。こうして、コネクテッドカーのシームレスで途切れることのない接続性が維持され、たとえば車両同士が高い信頼性を持って事故について警告を発したり、乗員が途切れることのない音楽ストリーミングを楽しめるようになる。
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ボッシュはあらゆる規格に対応する通信ユニットを開発
コネクテッドカーの数は、欧州、米国、中国だけで2025年までに4億7,000万台を超えると予想されている(出典:PwC)。その多くの車両はまず、クラウドに直接接続される予定だが、V2Xの広がりにより、さらに多くの車両が将来的に直接互いに通信し、信号機、道路工事現場、横断歩道、建物などとも通信できるようになる見込みだ。また、渋滞の最後尾への接近、事故、凍結といった潜在的な危険についても車両同士が相互に警告を発せられるようになるほか、これから通過する一連の信号が青になるタイミングがわかるようになるため、グリーンウエーブを活用できるようになり、信号の状況に応じて車速を調整できるようになる。こうして、特に都市部での交通がいっそうスムーズになります。
ただ、現在のところ、世界的に標準化されたV2Xの通信規格はまだ存在しない。中国では主にモバイル通信に基づくC-V2X(Cellular-V2X)テクノロジーが使用されているが、欧州と米国ではC-V2Xと並び、Wi-Fi(DSRCおよびITS-G5)に基づく伝送規格を追加導入することが計画されている。こうして、国際的に混在した規格が出現しつつあり、これが車両通信にとって障害となる可能性がある。
しかし、ボッシュの汎用通信ユニットを車両に装備する場合、通信規格の混在が将来的に問題につながることはない。ボッシュの通信ユニットを装備すれば、車両メーカーや走行する国に左右されることなく、車車間通信や車両と周辺環境との通信が可能になるためだ。こうして、V2X通信はいっそう安全に、また信頼性の高いものになる。ホーアイゼル氏は、「ボッシュは、コネクテッドカーについてオールインワンの原理を持っており、これはV2X通信をより安全で快適に、そしてさらに便利にします。そしてそのメリットを世界中の多くのドライバーが享受できるようになります」と述べている。
ソフトウェアが安定した接続を実現
Veniamのソフトウェアは、ボッシュの通信ユニットの接続を向上させる役割を担っている。今のところ、あらゆる状況に対応できる通信規格がないため、このソフトウェアはどのV2X通信規格が利用可能なのかを把握しながら、代替の接続方法にかかるコストやデータ伝送遅延時間のモニターも行う。
たとえば、今にも他の車両が脇道から合流しようとしていることをドライバーに警告するような場合は、一刻を争う。こうした危機的な状況に関する情報は、通信コストが割高になったとしても、常に使用準備の整っている信頼性の高い企画を使用して、リアルタイムで通信を行う必要がある。また、こうした危機的な状況では、クラウドからのソフトウェアのアップデートや、ナビゲーションシステムの地図のアップデートなどは、低コストの固定式Wi-Fiネットワークが利用できるようになるまで保留状態にすることができる。
Wi-Fi経由だと短時間のうちに大量のデータを伝送できるものの、必ずしも公共または家庭用Wi-Fiホットスポットが利用できるとは限らないのが欠点だが、Veniamのソフトウェアは、各通信規格の長所と短所を熟知しており、常に最適な接続を確立することができる。
ヴェニアム社の創業者兼CEOのJoão Barros氏は、「Veniamのスマートな通信ソフトウェアとボッシュの通信ユニットという他にはないソフトウェアとデバイスの組み合わせにより、車両のデータ処理能力が著しく向上し、画期的なクラウドサービスとはるかに安全な未来のモビリティにつながる道が開かれます」と述べている。ラスベガスで開催される世界最大の家電見本市、CES 2019に先立ち、ボッシュとVeniamは、両社が共同開発したソリューションにより、「車両インテリジェンスおよび自動運転テクノロジー」部門でCES 2019イノベーションアワードを受賞した。
ボッシュがV2Xの試験を欧州、米国と中国で実施
現在欧州で最大の実地試験場であるsimTD(ドイツ安全インテリジェント モビリティ試験場)で行われた通常の条件下および実験室シミュレーションにより、V2X通信が日常的な利用に適していることが証明された。この共同プロジェクトにおいて、ボッシュは大きな役割を果たした。
2017年2月以降、ボッシュ、ボーダフォン、ファーウェイの3社は、欧州で初めて初期の5G試験モジュールを用いたV2X通信の試験を実施してきた。バイエルン州ミュンヘンの北部を走る高速道路A9は、高速道路での車線変更時や前走車が突然ブレーキをかけた場合のリアルタイム警告システムに焦点を当てた実地試験の場所となっている。またV2Xによって、アダプティブクルーズコントロール(ACC)などのドライバーアシスタンス機能はいっそう便利なものになるだろう。
2018年夏、ボッシュはデトロイトにおいて、車両と道路沿いのインフラ、カメラ、センサー間のダイレクトな通信が安全に行われるか試験を実施した。この試験の対象となったのは、Wi-FiベースのDSRC技術で、これを装備すると、前方の信号機の状態や、道路を横断する歩行者についての通知が車両に送られる。こうした機能は、市街地走行の安全性を高めることを目的としている。このV2Xの実地試験の背後にあるサイバーセキュリティ技術を提供したのは、ボッシュ・グループの子会社であるESCRYPT。
中国では、ボッシュはWi-Fiおよび携帯電話通信技術を用いたアドホック通信について試験を進めている。この試験で特に重点が置かれているのは、追い越し時や複雑な交差点を通過するときにドライバーをアシストする警告機能だ。
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